友引町を奪還せよ-act4- (Page 2)
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現在警視庁は解放された人の名前を確認し、人質である十五人の確認を急いでいます。あ、先ほど警視庁から発表がしました。人質は以下の通りです」
あたるは神にすがる思いでラムの無事を願った。頬には無数の汗が垂れていた。
「いない!!」
ニュースの内容にはラムの名前はなかった。あたるの口から安堵の息が漏れた。
「良かった・・・」
あたるの表情はうれしさに満ちていた。コースケはそれを見てささやかな笑みを浮かべた。
「なお、解放された人質は○△病院で手当を受けています」
「○△病院だな!?」
あたるは掛けていた上着を取ると猛烈な勢いで外へ出た。
「お、おい」
コースケもそれに続く。がたん!!玄関で何かにぶつかった。メガネである。
「どうしたコースケ?何かあるのか?」
「ええい、邪魔じゃ!!」
ドアにメガネの顔をたたきつけるとコースケは去っていった。

○△病院
自動ドアが開いた。そこから二人の男が入ってきた。あたるは中に入っても勢いを止めず、受付に向かった。コースケは歩きながら受付に向かう。
「あ、あの・・・諸星ラムは何号室でしょうか?」
あたるは息を切らせながら訪ねた。コースケは
(そうか、ラムちゃんはあたると結婚したから苗字は諸星か・・・。なんか違和感たっぷりだな・・・)
とか思った。
「そんな焦らなくても患者さんは逃げませんよ。少しお待ち下さい」
受付員は息を切らせるあたるを見ながら言った。そして少し笑いながらパソコンに体を向けた。
あたるは大きく息をつくと汗を拭いた。
「諸星ラム様は816号室です」
にこやかに言った。あたるはエレベーターの方にまたまた猛烈な勢いで走っていった。
「どうも・・・」
あたるの代わりにコースケが礼を言った。エレベーターは今度の件で見舞いに来る人や安全を確認する人で多いらしく、なかなか下まで降りてこなかった。
あたるは貧乏揺すりをしていた。
「ええい、遅い!!」
そういって横の階段から光のごとく上っていった。
「おい」
コースケも階段を上ろうとした。ふっと上を見るとあたるの姿は跡形もなく無かった。
「は、はやい・・・」
ドカン!!上の方で爆発が起きた。
「あの馬鹿が、勢いつきすぎて止まれなくなったな」
あたるは必死にしがみついた。
「うわ、うわ」
何とかよじ登ると少しよろけながらも816号室を探した。
(816、816、・・・あ、あった)
あたるは少し身嗜みを整えてゆっくりとドアを開けた。そのとき炎があたるを襲った。
「お前なんしとんねん!ここ病院やで!ちっとは静かにせんか!!」
テンだった。いまや小学生で、身長もある程度高くなっていた。
ペン!!言葉も返さず、フライパンで吹っ飛ばした。
「なにすねーん!!」
そんな言葉に聞く耳を持たず、ラムを見た。既に気持ちよさそうに寝ていた。
「あの、諸星様で?」
後ろから医者が呼びかけた。
「は、はい」
「ラムさんの体は地球人に近いとはいうものの、宇宙人ですから詳しいことは分かりませんが、おなかの中の赤ちゃんも本人も何事も異常はありませんでした。
一応、安心しても宜しいと思います」
「あ、どうも、ありがとうございます」
あたるはぎこちない返事をした。医者が病室から出ていくとあたるはイスに腰掛けた。
今度はコースケが入ってきた。
「おう、コースケ」
「どうだ、ラムちゃんの容態は?」
「安心してもいいんだと」
「そうか」
そう言うとコースケは
「俺は邪魔だな。久しぶりに夫婦水入らずの時間を過ごしな」
といって、部屋から出ていった。あたるの顔は少し赤めいていた。
「ん・・・」
「あ、ラム・・・」
ラムの目が覚めた。
「あ、ダーリン」
あたるはラムの顔が近いことに気付くと慌てた。
「ずっと、いてくれたっちゃ?」
「今来たところだよ!」
少しきつめの口調だった。その後少し沈黙が続いた。
「でも来てくれただけでも嬉しいっちゃ」
「そ、そうか?」
あたるは軽く頬をかいた。
「ま、無事だから安心だな。今日はゆっくり寝ておけ」
「・・・」
「どうした、ラム?」
「ダーリン、変わっちゃね。前はこんな心配してくれなかったっちゃ。最近になって優しく見えるっちゃ」
「一応今は夫婦だろうが。妻の心配してもおかしくはなかろう」
「そうだっちゃね」
再び沈黙が続いた。
「なんか、不安か?」
何を悟ったか、あたるはラムに聞いた。
「そうじゃないっちゃ、ウチ嬉しいっちゃ」
ラムはあたるを見つめた。あたるは目をそらし、ベットから一歩離れた。
「お前も一応けが人だからな、少しは優しくしてやろうと思ったんだよ」
誰から来ても言い訳にしか過ぎなかった。
「ダーリン、ちょっとお願いがあるっちゃ」
「なんだ?」
「いつか・・・、死ぬ直前でも良いから、・・・好きだっていってほしいっちゃ」
「だから言ったろ。いまわの際に言ってやるって。俺は約束は破らん男だ」
あたるはそっけなく答えた。
「うん・・・」
「じゃ、俺は帰るからな」
あたるはドアを開けた。
「見舞い、ありがとだっちゃ」
「ラム・・・」

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