友引町を奪還せよact6,5- (Page 2)
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しのぶは愚痴を叩きながら台所で昼ご飯の準備をしていた。昼ご飯を食べた後、しのぶはラムの家に行こうとしていた。
お互い亭主のいない状態ではさびしいということでしのぶが提案したものである。
(でもやっぱりラムは私何かより寂しいでしょうね)
すこし包丁の音が遅くなった。
しのぶの家もまた正月ムード全開である。鏡餅はあちこちに存在し、どこにいても鏡餅は見える状態だ。
しのぶは居間に自分の昼食を盆に乗せて居間に向かった。居間につくとテレビの電源を入れて、適当にチャンネルをを回した。どこのチャンネルも正月番組で
どれでもいいやとNHKにした。しかしなかなか見る気にはなれない。
やはりあたるのことが気になるのだ。
しのぶは気を紛らわせようと電話を取った。
「あ、お父さん?明けましておめでとう」
「しのぶか・・・。どうだ。因幡君は?元気にしてるか?」
「今、社員旅行に行ってるわよ。まったく脳天気な管理局ね」
「そうか・・・。しかし良く兎と結婚したな」
「あら、因幡君は兎じゃないわよ。着ぐるみを着ているだけ・・・」
久しぶりの父親との会話は三十分にも及んだ。
「じゃ、体に気を付けてね」
そう言って受話器を置くと食べ残した昼食に箸を付けた。そのときチャイムが鳴った。
(誰かしら?)
すこし身嗜みを整えてからチェーンをはずし、ドアを開けた。
「あ・・・」
しのぶはその客に中にはいるように勧めたが、その客は顔を見に来ただけといって帰っていった。しのぶはその背中を見て気持ちが軽くなった。

諸星両親宅
二人はあたるの事を半ば諦めていた。自分たちで出来る葬式の準備を既にすませていた。
「まさか・・・、あたるが私たちより早く逝ってしまうなんて・・・」
母がハンカチで涙を拭きながら口を開いた。
「ああ・・・」
父は新聞を読みながら答えた。その新聞にはあたるの写真と名前が大きく載っていた。
「・・・」
部屋には母の泣き声だけが響き渡っていた。
「しかたないよ。泣いたってあたるは戻ってこない・・・。だからせめて笑って送り出してやろうじゃないか。老後もがんばるからさ・・・」
あたるの父はあたるがいなくなって初めて二語以上の言葉を喋った。それでも泣き声は治まらなかった。
テンはそれを窓の外から見ていた。話すに話しかけられずだだそれをじっと見ていた。
(あたる・・・。お前・・・本当に死んでしもうたんか・・・)
テンは空を見上げた。気持ちのいい快晴でとても悲しみに包まれた諸星家には似合わなかった。
テンは耐えるの耐えられずUFOに帰ることにした。UFOに帰る途中、テンから何か光ものが無数に落ちていた。
その涙を唯一見ていた少年、いや青年がいた。
その青年は諸星夫妻の家を訪ね、ラムの家の場所を聞いた。自分が仕事に行っている間、家が別の場所に移動して解らなくなったという。
その数分後、諸星家の葬式の準備は無かったことになっていた。

新・諸星家
ラムは寝ていた。コタツにうつぶせになる状態で泣き疲れて寝ていた。もう既に七時になろうとしていた。長い間寝ていたようである。
ゆっくりと立ち上がり、魂のない顔で台所に向かった。精神的には寝ても疲れ果てていた。やはり包丁は動かなかった。何とか作った鍋も具が入っていなかった。
(ダーリン・・・)
その言葉だけが心から離れない。ラムはガスコンロのスイッチを切り、台所から出ていった。台所には切りっぱなしの野菜がまな板の上で小さくなって
おいてあった。
(やっぱり・・・死んでしまったっちゃ?)
心の中であたるの事ばかりが浮かんでいて時計の音も、付けっぱなしのテレビの音も聞こえてなかった。
「うっ・・・、うっ・・・」
肩がぴくぴくと動いてラムはまた泣き崩れた。涙をこらえようとしたが、それはとても無理だった。
ラムはこれからどこへ行けばいいのか、一人で生きていけるのかと思った。それがさらに涙を誘った。
手は力一杯握られていて、誰にもほどくことはできない。ほどけるのはあたるただ一人である。
そのとき電話が鳴った。泣き崩れるラムには全然聞こえない。
家中に電話が鳴り響いた。
あたるの部屋はど真ん中にラムの角が置いてあった。あたるが最後まで大事にしていたもので、ラムはそれを今日見つけ、ずっと眺めていた。
しかしそれでもあたるの気配はない。そうして下に降りると無性に泣きたくなり、そして七時まで眠り続けた。
ラムはようやく電話に気付いた。
重い体を立ち上げ、受話器を取ると涙を拭いた。
「・・・俺だ、わかるか」
ラムの目からまたしても涙が流れた。口元にはわずかな笑みが浮かんだ。
「わかるか?」
ラムはゆっくりとうなずいた。電話の主はそれを悟ったのか、確かめる質問はもうしなかった。
「だったら、今すぐ公園の電話ボックスまで来てくれ。ちゃんと厚着はしてこいよ。外は寒いからな・・・」
ラムは受話器を置くと有る程度の厚着に着替え、手袋、マフラーを着用し、玄関から出ていった。

公園

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