友引町を奪還せよact6,5- (Page 3)
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ラムは指定されたと思われる電話ボックスの真横に降り立った。
「ダーリン・・・」
小さく囁いた。その声が聞こえたのかトイレの中から青年が出てきた。
体中傷だらけで今にも倒れそうな感じだが、間違いなくあたる本人だった。いつもと違って弱々しかった。それでもあたるに間違いない。ラムは走り出そうかとした瞬間
「トイレから出てきたところに来る奴があるか」
いつものきつい口調で言って、走り出すのを止めさせられた。
「NGだ。もう一度家に戻れ」
そう言って家のある方に指をさした。
「何言ってるっちゃ。もう一度家に帰ったら、ダーリンはもうぶっ倒れてるっちゃ。それこそNGだっちゃ」
「そ、そうか・・・」
そういうと頬を少しかいて、何かを決意したかのような顔をした。そしてぎこちない言い方で
「ただいま・・・」
とつぶやいた。これだけを言うのに何の勇気がいるのかラムには皆目わからなかった。それでも
「おかえり・・・」
と、返した。
あたるはその言葉を聞いて安心した表情になるとふらっと倒れ込んだ。ラムは慌ててあたる支えた。
「大丈夫け?ウチがおんぶしていこうか?」
「女におんぶされたら恥ずかしいだろうが」
「じゃあ、肩貸そうか?」
「それも恥ずかしい」
「じゃあどうするっちゃ?」
「自分で歩く」
ラムは何を悟ったのか、しばらく考え込むと
「わかったっちゃ」
と景気のいい返事をした。あたるは体勢を立て直すと、家に向かって歩き出した。一歩一歩は非常に遅かったがそれでも確実に家に向かっている。
「ラム・・・」
五歩目であたるがラムの名を呼んだ。公園をまだ出てすらいない。
「なんだっちゃ?」
少しあたるは間をおいて訪ねた。
「おせち料理ちゃんと作れたか?」
「出来てるっちゃよ。でも、もう冷え切ってるっちゃ」
「電子レンジで温めれば良いだろうが・・・」
「食べてくれるっちゃ?」
「ああ、普通の味ならな」
「どういう意味だっちゃ」

ー完ー

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