パラレルうる星小説PART1「高校野球編:第2話叶う夢・叶わぬ夢(後)」 (Page 3)
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ここで生気を失えば、誰があたるを説得出来るのか、コースケはそう思った。
「コースケ・・・、仕方ないさ・・・。俺はもうこの野球部に籍を置く権利を無くしたんだ・・・」
しかし容赦なくあたるの弓は跳び続ける。親父は無言であたるを見下ろしている。あたるはその視線を気にもしなかった。
「しかし!」
コースケの言葉をラムが遮った。ゆっくりと立ち上がるあたるの前にラムは立った。
「なんで・・・、キャプテンを恐れるっちゃ?」
ラムは小さく訪ねた。周りが少し静かになる。スコアブックが強く握られ、紙がくしゃくしゃになった。
「なんで、キャプテンの言葉を背負い続けるっちゃ!?乗り越えようとしないっちゃ!?」
「無理だ・・・。あの人の存在は俺の心の中で絶対なんだ・・・。その絶対の存在から背負わされた重荷を捨てられないよ・・・」
すると持っていたスコアブックをその場で手放し、床に落ちるのと同時に、あたるの頬はラムの平手打ちにより赤くなった。
ラムの目には涙が浮かんでいる。頬を抑えたまま、あたるはラムを見上げた。涙にゆがんだその瞳を見た。
「・・・。ラム・・・・、礼を言うぜ・・・」(あたる)
少しよろけたあたるはベンチに手を付いて、そのまま座り込んだ。ナインはあたるが改心したと思った。心にわずかな晴れが差し込んできた。
「一発でも殴られないと、野球部を裏切った俺への恨みがはれんだろう?」
ラムの背中、いや、ナインの背中に重くて冷たい何かがのしかかった。それは、言葉では言い表せない悲しみだった。
ラムの瞳でさえ、今のあたるの心を解放することは出来なくなった。あたるのその一撃の言葉が、ナインに生気を失わせた上に、
絶望感すら与えていた。
「なんか、どうでもよくなってきた・・・」
コースケの口からあきらめの言葉が出てきた。しかしナインもそれをとがめない。
「あたるも・・・、おれも・・・、友高も・・・そして甲子園も・・・。全てが嫌になってきた・・・」
コースケはベンチから外に出て、空を見上げた。空はいつもと変わらず、地上を見下ろし、雲は空の前を横切っていく。
木々は、風に揺れて小声でなにかをつぶやき、太陽は常にその光りを敵味方なく、打ち付ける。

PART7[夏から秋へ]
そして、あたる達の二年目の夏は終わった。あたる達の甲子園をかけた試合は、あたるの退部宣言によって、そのまま友高は負けた。
その後、どうなったかというとあたるは宣言通り野球部を辞め、コースケも退部はしていないが、練習に顔を出さなくなった。
あたるがあそこまで打ちのめされた原因はルパだということは、知られることはなかった。
甲子園では豪太刀のエース・飛麿が二試合連続ノーヒットノーランを成し遂げ、面堂は二打席連続ホームランという記録を残して、
雨による中止もなく、あっさりと閉会式を迎えた。その優勝旗は初優勝という栄光と共に豪太刀の手に握られていた。
そして、全国では二学期という言葉が小中高校生の間でささやかれはじめ、また、面堂と飛麿のいる豪太刀学園は、この2大スターにより
スポーツ新聞等のマスコミを筆頭に第一面の的となっていた。しかし、豪太刀の面堂はあたるが野球部が辞めたこと怒りを覚え、
マスコミの質問にも一言二言で答えていた。あたるは野球部のグラウンドにも姿を見せず、コースケも裏門から帰る様になっていた。
甲子園へ行けば、豪太刀二大スターのライバルになれるといわれた友高二大スターは、野球部にとって裏切り者として、メガネ達や竜之介、
そしてラムとも口を利かなくなった。
季節は夏から秋へと移り変わろうとしていた・・・。





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