うる星やつら―アナザーワールド― エピソード10 (Page 2)
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 (向こうに戻ったら、もう2度とラムには会えなくなるんだな……)と思うと、戻りたくないと言う気持ちがどんどん強くなっていった。その時
 コン、コン、コン
何かを叩く音がした。あたるが音の方を見ると、窓の外でラムが窓を叩いていた。部屋の窓の鍵がかかっていた為に、ラムが入れないのだ。あたるは、ラムが窓から出入りしているのを知らなかったので、いつもの癖で窓に鍵をかけてしまったのだ。あたるは慌てて窓の鍵を開けると、ラムが入って来て
 「ダーリン、ただいまだっちゃ」と言った。あたるは
 「お前、窓から出入りするなんて知らなかったから鍵かけちまった」と言うと、ラムは
 「あぁ、気にする事無いっちゃよ」と言って、ニコリと笑った。そしてテンを見ると
 「テンちゃん、良く寝てるっちゃね」と言いテンを抱き上げると、押し入れの襖を開け中に寝かせた。それを見たあたるが
 「おい、そんな所で寝なくてもいいって言ったろぅ」と言うと、ラムは
 「うん、でもウチUFOで寝るっちゃ」と言って、押し入れの襖を閉めた。それを聞いたあたるは
 「なんで?わざわざUFOに?」と聞いたが、ラムは
 「しのぶと約束したっちゃ」と言った。それを聞いてあたるは
 「しのぶと?」と言うとラムは
 「うん、ダーリンはしのぶの彼氏だっちゃ。しのぶが心配するのも無理ないっちゃ」と言い、ラムは窓を開けると
 「じゃぁダーリン、また明日の朝来るっちゃね。おやすみー」と言って、夜空に消えた。あたるは飛び去るラムを見送ると、再び仰向けになり、天井を見つめた。あたるはラムの事が気になって仕方なく、今まで感じた事の無い感覚に戸惑った。あたるの頭の中に、さっきのラムの言葉がよぎる。
 『ダーリンはしのぶの彼氏だっちゃ』
あたるは、自分としのぶが付き合っている事を思い出した。忘れていた訳では無く、突然のラムの出現に気持ちが混乱していたのだ。あたるは
 (そうか、俺としのぶは付き合ってるんだよな……)そう思いながらも、ラムの事が気になる。あたるは
 (もし……もし、このまま俺が向こうに戻らなかったら……いや、戻らなければラムと一緒に居られるのか?)と思った。あたるは、モヤモヤした気持ちを抱いたまま眠りについた。
 翌朝、あたるは
 「ダーリン、おはよう」と言う、ラムの声に起こされた。あたるは眠い目を擦りながら
 「あ、ラム。おはよう」と答えた。するとラムは
 「ほら、ダーリン、早くご飯食べないと学校に遅刻するっちゃよ」と言うと、あたるの手を引き立ち上がらせた。あたるは、そんなラムとの朝が凄く新鮮に思え、ついラムを見つめてしまった。すると、あたるの視線に気づいたラムは
 「ん?どうしたっちゃ?ダーリン」と言うと首をかしげた。あたるは思わず、ラムを見つめていた自分に気づき
 「い、いや、何でもない」と言うと、そそくさと制服に着替えた。その時、押し入れの襖が開き
 「あ、ラムちゃん。おはよう」とテンがあくびをしながら顔を出した。するとラムが
 「あ、テンちゃんおはよう。ほら、テンちゃんもご飯だっちゃよ」と言うとテンはのそのそと押し入れから出ると
 「アホにおかず取られん様、はよ行かなぁ」と言うと、チラッとあたるを見た。しかしあたるはテンの言葉が耳に入らないのか、全く反応を見せない。テンはあたるね顔を覗き込むと
 「なんや、今日は随分静かやんか……何か企んどるんちゃうか?」と言ったが、あたるは上の空で反応を示さない。テンはラムの方を向くと
 「なぁ、ラムちゃん、こいつどないしたんや?」と聞いたがラムは
 「さ、さぁ」と言って苦笑いをした。テンは、そんなあたるとラムを不審に思いながらも、茶の間に向かった。
 その朝の諸星家の朝食は、珍しく平和だった。
 あたるとラムは、学校に着くとすぐに、面堂、しのぶ、メガネ、パーマ、カクガリ、チビを校舎裏に呼び出した。そこでラムが話を切り出した。
 「みんな、喜ぶっちゃ!向こうの世界と連絡が取れるっちゃ!」とラムが言うと、メガネが
 「それって、向こうに帰れるって事ですか?」と言い、ラムは
 「そうだっちゃ」と満面の笑みで答えた。しかしそれを聞いた面堂は
 (そうか……向こうに帰れるのか……でも帰ったら、もうラムさんとは会えなくなるんだな)と思い、メガネも
 (向こうに帰ったら……帰ってしまったら、2度とラムさんには会えなくなってしまう!俺は、そんなの嫌だ!俺はもうラムさん無しでは生きられない、俺は意地でも残ってやる!)と思った。しかし、しのぶは違った。しのぶは
 (やっと帰れるのね。向こうに帰ればラムも居ないから、あたる君や面堂さんもラムに惑わされる心配も無くなるのね)と思った。そして肝心のあたるは腕を組んで黙ったままだった。ラムは
 「後は、先生とサクラとチェリーだけど、サクラとチェリーは今日のお昼休みにウチが打合せに行くっちゃ」と言い、それを聞いたしのぶは
 「先生だけど……多分信じないでしょうね」と言った。するとラムは

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