「ザット・クレイジー・サマー」第九話・後篇 (Page 2)
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メガネ「……………………ったく、なんちゅう夢だ!てっきり面堂のことだから豪勢なパーティーとかの夢でも見てるのかと思ったんで
    そのブルジョアジー的晩餐を庶民プロレタリアートの正義の鉄槌として堂々とせしめようと思ったのに……ちくしょう、腹が減った」
夢邪鬼「だから言うたやろ、人の夢を見たってあんまおもろないって散々…。事もあろうにわてを脅してこれ以上危害を加えないから他人の夢を見させろなんてまったく…
     それにしても、あの兄ちゃん相当取り乱してるなぁ…あの兄ちゃんの精神の根底にはどうも相当な恐怖があるようやな」
メガネ「………………た、確かに、他人の夢を見るのがこれほどつまらないこともあるのはわかった、しかし……………



    お前はこの俺の状況を見て何もコメントしないのか!!!薄情者!!」

どういうわけか、メガネはサングラス&黒子軍団に踏みつぶされていたのだった。髪はぼさぼさ、制服は泥だらけ、ご自慢のメガネはレンズにひびが入る有様。

夢邪鬼(ケッ、ええ気味や)「薄情やないとこんな仕事務まらんさかいな、もう染みついとる」
メガネ「…………もしやとは思うが、さっき俺の夢の中でコテンパンにのされたことの腹いせでは…ある、まい、な?!」
夢邪鬼(うっ…なかなかこのメガネ男、ええ勘しとるな)「そないなしょーもないことするわけないやろ、アホ」
メガネ「…ほ〜ぅ…まあ、これ以上追及しても得にならんから、まあ、そういうことにしておいてやるが…」
夢邪鬼「よっぽど悪人に仕立て上げたいらしいな、あんさん」
メガネ「ぅあったりまえだ!ラムさんの純粋な夢を悪用して俺たちをその中に閉じ込めた奴のことを信用せいっちゅうほうが無理がある事ぐらいわからんのかキサマッ!
    まああたるの夢でなかっただけまし、だが、な…………。あ、そうだ、この際だ、あたるの夢でも見ておこうか、うん!」
夢邪鬼「…えぇ…あの兄ちゃんかぁ…」
メガネ「そんなこと言ってみろ、またコテンパンの…」
夢邪鬼「いうとくけどなぁ、ここはあんさんの夢やないから、さっきのようには行かへんでぇ〜」
メガネ「…………」(汗)
夢邪鬼「ま、どうせわてもそのニイちゃんのとこ行かないかんやろうし、行けば簡単にわての目的も達成できるかもしれんさかいな、ま、行ったってもええな」
メガネ「連れて行ってくれるというのなら、行ってみようか。ところで、お前の目的って?」
夢邪鬼「あとでいやというほど話したる」
メガネ「…………ふ〜ん」
夢邪鬼「ほな行こか…そや、…あんさん、キレんようにだけはお願いするで、ただでさえ他人の夢に人が介入するということは夢を不安定にすることやから、ましてや怒るなんて…
     ま、わての能力があれば大丈夫やろうけど」
メガネ「…………?どういう意味だ?俺がキレるなんてそんな…これでも成熟した精神を」
夢邪鬼「はいはい、そうこうしているうちについたで」


着いた先はとんでもないあばら家だった。一人泣きながら晩酌をしているのは…あたる…


のおやじ。

あたるの父「あ、あたるのバカヤローーーーーーーー!!!何回も何回も何回も家壊しやがってーー!
       こっちはローンで首が回らんのじゃーーーー!!」




メガネ「かなり悪酔いしとるようだ…夢の中までこうとは、精神荒んどるなあ」
面堂「ほんと、あんなアホを息子にもって誠に気の毒な限り…」


メガネ「へ?面堂、どっから湧いて出た!」
面堂「了子になぶられているとき、ほんの一瞬貴様らが見えたもんでな。了子の目を盗んでこっそりついてきた。」
メガネ「ふーん、まあ、それはそうと、あたるはラムさんのことは考えずにおやじさんのことを考えていたのか………くっ、許せん!」
面堂「なに、ここは諸星の夢なのか!貧乏人はやっぱり貧乏人の夢を見るもんだな」
夢邪鬼「ちゃう、あのニイちゃんのお父ちゃんの夢や」
メガネ「おい、あたるの夢に連れて行く約束だったはずだが!」
夢邪鬼「ちょいと寄り道したんや、めったにこんな機会なかろと思ってな…感謝せいよ!」
面堂「ま、大方間違えたいいわけだろうとは思うが」
メガネ「そういうことにしてやろう、か、な」
夢邪鬼「……今度そないなこといったら置き去りの刑やからな」
メガネ「じゃ、さっさと」

あたるの父「待ってくれ!!」

三人「「「へ?」」」

あたるの父「見てくれこのビールを!度重なるローンで貧乏暮しな我が家はビールを飲むにも
       『水割り』のビールを飲んでいるんだ!君たちあたるのクラスメートだったね、ねえ!!」
面堂「まあ残念ながらそんなもんですが、どうされたんです?」
あたるの父「とにかく、とにかく話を聞いてくれえ!愚痴を言う相手がいないんだ!……」



さて、ここまで三人は、川下りの船のような船で移動した。あたりは薄暗く、かすかに藍色で、かすかに光がもやのように感じられる。

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