友引町を奪還せよ-act2- (Page 2)
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あたるの胸ぐらをつかんだ。
「貴様!諦めてどうする!?確かに面堂のところがやってくれればラムさんは助かるかもしれん!!だが、ラムさんはそれで嬉しいと思うか!?
お前に助けられたいんじゃないのか!?」
「俺は最初からラムを助けに行くつもりはない!」
「!」
その言葉にメガネは脱力した。
あたるはメガネのつかんでいる手を払いのけると後ろを向いて歩き始めた。
「あたる!!」
あたるは立ち止まるとメガネの方を見た。
「・・・助けに行って死んだら、ラムはもっと悲しむだろーが」
「貴様の生命力なら死なん!」
「昔はな・・・」
悲しい笑みを浮かべながら言った。
「どういう意味だ?」
あたるは答えなかった。
そして風で落ち葉の吹き荒れる林道であたるの背中は消えていった。

十二月二十九日午後十一時四十五分 面堂邸 司令室
外は雪が降ってきていた。終太郎は少しばかり休憩を取った。
「コーヒーです」
部下の一人がコーヒーを持ってきた。
「ああ、気が利くな・・・」
終太郎はコーヒーに砂糖を入れた。
「もうすぐ正月だというのに大変なことになってしましまいましたね」
部下は残念そうだった。先ほど妻子が友引町にいると言っていたのは彼だった。名前は奥平武雄。
「お前は良く落ち着いていられるな・・・」
「いえ、まだ心の整理がついてないんです」
奥平の顔は落ち着いていた。しかし心は不安でいっぱいである。
「彼は何故助けに行く気があるかと言う質問に答えなかったのでしょう?」
コーヒーを乗せていた盆を腕に挟みながら言った。
「彼って諸星のことか?」
「そう言う奴なんだ。ラムさんが好きだと思わせるような行動はごまかす」
「でもラムさんと結婚してたんでしょう?」
「成長しない奴なんだよ」
終太郎はメインスクリーンに映る友引町を見た。奥平もそれに合わせる。
「でも・・・、心が子どものままでも良いと思いませんか?」
「どういう事だ?」
奥平は終太郎の方を見た。
「時々思うんです。昔みたいに自由気ままにやってみたいと・・・」
「やればいいじゃないか」
終太郎はあっさり答える。終太郎の場合、大人になっても自由気ままにくらせるからこの気持ちは分からなかった。
「それは無理です。大人げという物がありますから・・・」
「そうか、しかし諸星は大人になった方がいい。このままだとラムさんの心を傷つけ続ける」
「そうですね・・・」
しばらく沈黙が流れた。そのうち終太郎は立ち上がり部屋から出ていこうとした。
「どちらに・・・」
奥平が訪ねた。
「トイレだ・・・」
終太郎は後ろを向きながら手を軽く振った。
しかしこの二人が思っていたあたるの気持ちは、本人の気持ちとは違った。
ラムに対する気持ちが知られるのが恥ずかしいのではなく、ラムの気持ちを悟ってあえて助けに行かないのである。

どこかの町
あたるは帰るところがなかった。実家も自分の家も友引町にあるからである。宛てもなくさまよっていた。
「おー、あたるじゃねえか」
コースケだった。壊れた会社を一通りかたづけてから帰路に就いたところだった。
「ああ、コースケか・・・」
「今日は残念だったな・・・。でも、まあ気を落とすな。いつか助けに行くチャンスが出てくるさ」
コースケは友引町を見ながら言った。友引町周辺には自衛隊、面堂家、水之小路家の戦車で埋め尽くされており
友引町から半径十キロ以内は避難勧告が出ていた。友引町から何が起きても良いようにしているのである。
「・・・」
あたるは黙り込んでいた。
「そうだ、お前帰ると来ないんだろ?俺ん家に来ないか」
「ああ、そうさせてくれ」
コースケとあたるは人がにぎわう町中を歩いた。
人ざかりの中には双眼鏡で友引町を見たり、電話をしている人がいた。
あたるは珍しく無口でいるのを見たコースケは、何を言えばいいか分からなかった。
「なあ、コースケ・・・」
あたるが口を開いた。
「お前、結婚してたんだよな?」
「何言ってやがる。ちゃんと結婚式、お前来たじゃねえか」
コースケの声は少し大きかった。
「もし、奥さんが死んじゃったらお前泣くか?」
「殴るぞ」
コースケは殴る素振りを見せた。しかしあたるは動じない。
「それがもし、お前を守るために死んじゃって、悲しむなって言われてもか・・・」
「悲しむに決まってんだろ。・・・お前ホントおかしいぜ。何かあったのか?」
額にはわずかながら汗が出ていた。
「俺・・・、ラムを助けに行くつもりはねえ」
コースケは立ち止まった。信じられないと言う目をしていた。あたるは静かにコースケの方を見た。
するとコースケは意外にも冷静にいった。何か理由でもあるのだと悟ったからだ。
「と、とにかく家で・・・」
二人はコースケの家に向かった。

コースケ宅
「おかえりなさーい。あら、諸星さん・・・」
コースケの妻が言った。高校時代から付き合っていた彼女とつつがなく結婚していた。

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