友引町を奪還せよ-act3- (Page 2)
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しかも諸星夫婦同様、竜之介は渚に『好きだ』と言っていない。それどころか夫婦としての自覚がないように感じられる。
竜之介にとって『恋』というものにあたる以上に奥手なのだ。
そのとき放送が入った。
「明日の出動に備えるため第三小隊・第四小隊共に準待機とします。そのため臨時に第五小隊を発足します。志願者は第四ホールに集まってください、以上」
「第五小隊だぁ?」
「来なかったら、どうやって、かき集めるのかな?」
「おおかた、黒メガネ武隊でも使うんだろ。それより明日の準備しなきゃならんからな、俺は行くぞ」
「明日の準備って?」
「作戦会議だ」
「あ・・・」
そう言って第三小隊は会議室に集められた。

コースケ宅
あたるとコースケは職を失ったため何もすることがなかった。
二人は二階のベランダから外を眺めていた。
「なあ、あたる・・・」
「なんだ?」
あたるは昨日より少し元気な声で答えた。
「・・・仕事・・・探すか?このままじゃ俺、あいつと暮らしていけないから・・・」
コースケは妻のいる台所の方を見た。
「そうだな・・・」
「まず適当に町を歩いてみてそれでもなかったら、面堂に頭下げるしかない。それで良いか」
「面堂の下で働くつもりはないぞ、俺は」
あくまであたるは終太郎の下で働くつもりはなかった。
「とにかく外に行ってみることだ」
そう言って二人は部屋を出るとコースケは妻に
「じゃ、仕事探してくるから」
とことわって家を出た。
「何処で働くかな。慣れ親しんだ商店街はみんなあそこに・・・」
あたるは友引町を見てそれ以降言葉が続かなくなった。
「あたる、今は町を見るな。今は仕事を探す事だけを考えろ。ラムちゃんが帰ってきてから仕事が無かったら、困るだろ?」
「ああ・・・」
二人は無言で歩いた。もう昼であり、正月前と言うことで町はにぎわっており二人はその人垣をかき分けて歩いた。
「ホントはラムちゃん助けに行きたいんだろ」
「・・・」
コースケの質問にあたるは黙り込んだ。
「助けに行きたいんだな?」
「分かってるなら聞くな」
「だったら、助けに言った方がいいんじゃねえか?心配で夜も眠れんぞ」
「そんな、軟弱物ではない!」
「昨日ずっと起きてたのは誰だったかな?」
コースケはからかった声で言った。一応あたるを元気づけようとしているのだ。あたるもまた、元気を出そうとした。
そのとき
「番組の途中ですが、ここでニュースをお伝えします」
と言う声が聞こえた。二人は友引町の事について何かあると思い、テレビに食いついた。
「ちょっとあんた達なんなのよ」
テレビを見ていた大きなオバチャンが口をとがらせながら言った。
「やかましい!それどころではない!」
あたるはぐわっと言った。コースケはあたるが少しは元気になったと思い、少し安心した。
「先日、警察と面堂財閥の面堂終太郎司令は特武隊の第一から第四の全小隊を友引町に突入させることを決定したことを発表しました。それに先立ち・・・」
「面堂、遂に動くか・・・」
「お前はどうすんだ?」
コースケは言った。今ならあたるは行くかもしれない、そう思ったからだ。
「言ったはずだ。俺は行かない。絶対に・・・」
あたるの決意は固かった。
(この頑固者を動かせるのは、ラムちゃんだけかもしれないな・・・)
コースケは少しあきらめ顔だった。そのとき
「あーたーるー!!」
という奇声が聞こえた。
「ん、メガネ?」
この声はメガネのだった。両手には木槌が握られていて既に振り上がっている状態だった。
「ば、ばか!あたるを殺す気か!!」
コースケは止めに入った。しかし怒りに狂ったメガネの相手では無かった。コースケはどこかに吹っ飛び、メガネは高くジャンプした。
「くーらーえー!!」
あたるは落ち着いた顔で手を構えた。そして振りおりてくる木槌をがっしりと手で受け止めた。
「真剣白刃取りの第一人者をなめるなよ」
「貴様、昨日の悲しみに満ちた顔は何処行った!?」
「やかましい!一日で人は変わるものだ!」
「ほ〜、だったら助けに行け!」
メガネは手の力を強めた。あたるの足が少し曲がった。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・」
「・・・すこし・・・休まんか?」
あたるの提案だった。メガネは
「良かろう、五分許す・・・」
と提案を受け入れた。自分も休憩したかったらしい。
二人は道のど真ん中に堂々と座り込んだ。コースケが気を利かせてジュースを持ってきた。
「後で二人とも金払えよ」
メガネはジュースを飲み終えると飽きもせず木槌の標的をコースケに変えた。
「勝手に買っておきながら、なんだそれは!びた一文もっておらん!」
コースケもがっしりと受け止める。
「ええい、飲んでから言うな!」
コースケは足でメガネの顔を蹴った。
するとメガネはいきなり木槌から手を離し、あたるの方を見た。コースケはがっしりと受け止めた木槌を受け止めたままただ何をすればいいか分からなかった。
「ところであたる、貴様、昨日、助けにいかんと言っていたがどういう事だ?」

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