同窓会パニック!カニ先生が泣いた日(前編) (Page 2)
Page: 01 02 03 04 05

空を指差し、あくまで冷たく接する彼女に、あたるは両手のひらを前に差し出し、
「まあまあ、ここで逢ったのも何かの縁じゃ。一緒に行こーよ、しのぶ」
と言ってしのぶの肩に右腕を回そうとしたが、
「馴れ馴れしくしないでよっ!」
と、右手の甲を思いきりつねられた。あたるは悲鳴を上げた。
一方こちらはラムの同窓会会場。ラムとランが会場に続いている廊下を歩いていると、弁天の後ろ姿が見えたので、ラムが、
「弁天!」
と声をかけると、弁天が振り返って、
「おーっ、ラム、ラン、久しぶり。・・・といっても1週間前に会ったばっかりだったっけ」
2人にそう言うと、2人のほうに向かってきて、並んで歩き出した。
「今回の同窓会、結構人来るらしいぜ。まったく、よっぽどみんな暇なんだなー。そして、おめえらもな」
弁天が再び話し始めると、ランが、
「あーら、そういう弁天だって、暇だからここに来たんでしょ?」
と言うと、弁天は、
「まーな。それに、ここに来る連中に会うのも卒業式以来2年ぶりだもんな。
結構いいヤツらが多かったし、ちょっと懐かしくなって、顔が見たくなったんだよ」
と返事した。ラムが、
「そういえば今回の同窓会の幹事、お雪ちゃんがやるんだって?」
と弁天に尋ねると、弁天は、
「ああ。ほら、あいつクラス委員で生徒会長だっただろ?
『適任者はお前しかいない』って、アタイと友達何人かであいつに頼み込んだんだ。
本当はアタイがやってもよかったんだけど、やっぱ面倒くせえからなあ。
たぶんもう会場にいるはずだぜ。『一緒に行かないか?』って誘ったら、
『いろいろ準備があるから・・・』って先に行っちまったから。
それにしても、あいつ相当張り切ってやがるな。こんな豪勢な会場手配するなんて」
と、事の次第を2人に細かく伝えた。しばらくして、3人は入り口の前に到着した。
「さあ、入ろうぜ。みんながお待ちかねだ」
弁天がそう言うと、3人はドアから中へ入った。
一方こちらはあたるの同窓会会場。あたるとしのぶが並んで歩いていると、
「よう、お前ら!久しぶりだな。元気にしてたか?」
と、1人の男が声をかけてきた。
「大輔・・・」
「松井君・・・」
意外な人物の登場に、2人はそれ以上言葉が出なかった。この男の名前は松井大輔。
友引高校の生徒だったが、隣の仏滅女学院の生徒を妊娠させたことが原因で退学処分となっていた(コミックス「この子はだあれ?」参照)。
「何でお前がここに・・・」
あたるがようやく口を開くと、松井が眉をしかめながら、
「何だよ、2人とも!人を厄介者扱いしやがって。オレだってこの中学のお前らのクラスメートじゃないか。
それとも、高校を中退したヤツは、同窓会に参加する権利はないって言いたいのか?」
と言うと、
「い、いや、そういう意味ではなくてだなー、お前があの事件以来、
例の女の子とどっか遠くににずらかったって聞いとったから、
てっきり来ないんじゃないかと思っていたのだ」
あたるは慌てて弁明した。松井は、
「あははははは!!何だよ、それ?それは噂だ、ガセネタだ!今でも友引町に住んでいるよ。
今な、オレ、定時制の高校に通ってるんだ。2人の家族のためにも、高校ちゃんと卒業して、もっといい仕事に就きたいもんな」
2人?あたるとしのぶは彼のこの一言にぴくっと反応した。そして、
「エッ・・・2人って・・・あなた・・・まさか・・・彼女にあの時の子供を?」
しのぶが驚いた様子でたずねると、
「ああ。産んでもらったよ。身勝手な話だけど、最初はオレは反対したんだ。
あいつの両親も反対した。金もないのに育てられるわけないんだから、絶対おろせって言ったんだ。
でもあいつは、オレたち「3人」にどんなに責められても、絶対産みたいって言って譲らなかった。
しかもあいつ、どこから持ってきたのか、中絶が行われる様子を撮ったビデオを持ってきてオレとあいつの両親にに見せたんだ。
そのビデオの内容が何ともむごたらしくて・・・見た後はとてもおろせなんて言えなかった。
それと同時に、あいつが本気だってこともよくわかった。
だから最後はオレも覚悟を決めたんだ。彼女の両親も協力してくれたよ」
松井がそう2人に話すと、子供の写真を差し出した。
「まあ、かわいい・・・この子、女の子でしょ?あなたに似てるもの」
写真を見てしのぶがそう言うと、
「そうなんだ。目の辺りなんか特に似てるだろ?やっぱり女の子は父親に似るもんだなー」
と、松井は自慢げに答えた。するとあたるが、
「本当だ。こりゃ将来美人になるぞ。惜しいなー、オレがあと10歳若かったら将来デートしてあげたのに・・・」
と写真を食い入るように見ながら言うので、
「いや、あたる。それだけは、それだけはどうか勘弁してくれ!」
と慌てて土下座のまねをして答えた。冗談だよとあたるが言うと、
「冗談は顔だけにしろよな」
と松井が返したので、3人は一斉に笑った。
「でもお前、奥さんと娘さんほっぱらかして、こんなところに来ていいのか?」

Page 1 Page 3
戻る
Page: 01 02 03 04 05