同窓会パニック!カニ先生が泣いた日(後編) (Page 1)
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ラムたちは依然としてどうしようか迷っていた。
そんな中、カニ道楽が、
「カニタマーっ!」
と大きな声で叫んで、ラム、弁天、ランの3人にあのボール状の物質をぶつけてきた。お雪はなぜか無事だった。
弁天がヘロヘロの声で、
「い、いきなり何しやがるんでいっ!」
と怒鳴ると、カニ道楽は、
「すまんがに。何度も君らを呼んだのだが、反応がなかったからやったがに」
と答えた。ラムが、
「せ、先生・・・何か用だっちゃ?」
と尋ねると、彼は、
「君らに渡したいものがあるがに。ぜひ受け取って欲しいがに」
と答えた。
「ウチらに・・・?」
「そうがに。卒業式のときに取っておいた写真だがに。本当はすぐに渡したかったが、式の後みんなさっさと帰ってしまったから・・・
まあ、みんな、特に君らは私のことを、鬼教師だと思っていただろうから、
その時は少しでも早く私と別れたいと思ってたんだろうに。
今日はちょうどみんなが集まったから、みんなにも配っているところだがに。
ふふふ、こんな事慣れてないから、照れちゃうがに」
写真を手渡す瞬間、彼は涙ぐんでいた。あたるたち地球人がその姿を見たら、
「ずいぶんよくできたロボットじゃなー」
と感心するに違いない。
ラムも、弁天も、ランも、そしてお雪ももらった写真をまじまじと見つめた。
写真のラムは、卒業証書を抱え、涙ぐんでいた。
ラムがそれを見ていると、裏に何か書いてあることに気づいた。
「ラム、元気でやっとるがに?私は今年で惑星中学に勤めて100年目になるが、特に大きな故障もなく、元気でやっとるがに。
今年はまた、3年生のクラスを受け持っているが、君のように世話の焼ける生徒がいないので楽である反面、
張り合いがなく、物足りないとも感じているがに。
こんな退屈な教師生活を続けていると、思い出すのは君やその友達と校内で追いかけっこをした日々のことばかりだがに。
そういえば君は結婚したそうだに?おめでとうだがに。
でも、地球という辺境の星に嫁いだと聞いたとき、初めはびっくりしたがに。
地球での生活はもう慣れたがに?ご主人やご主人の両親とはうまくいっとるがに?私はそれが心配だがに。
でも君は、私の教え子の中でも、とても明るくてかわいらしい子だから、
きっとどこに行ってもみんなから愛されることだろうに。
たぶん君は、私のことは大嫌いだっただろうけど、私は君のことが生徒としてとても好きだったがに。いや、今でも好きがに。
悩みなどあれば、いつでも学校に相談に来るといいがに。何もなくても、ただ遊びに来ればいいがに。
それでは、これからも元気でいてくれがに」
読み終えると、写真の上に、大粒の涙がこぼれた。
こんなにもウチのことを・・・そう思うとラムは涙が止まらなくなった。
「一生会わなければいいのに」などと考えた自分を恥じずにはいられなかった。
横では弁天も同じ様子だった。さすがに涙はこらえていたものの、写真を持つ手が震えていた。
「いい先生ね・・・なんて優しいんでしょう・・・本当にいいかただわ・・・生徒を信頼して・・・
爆発まで・・・あと、3分ねぇ・・・」
ラムたちを見ながらポツリポツリと述べるお雪のセリフは、ラムたちを良心の呵責で押しつぶそうとする魂胆が見え見えである。
それを聞いて、ラムは、
「べ、弁天・・・ウ・・・ウチ・・・」
と何かを訴えるように呟くと、弁天は、
「わかってらい。やっぱり取り外しにいこうぜ!このまま放って置いたんじゃ寝覚めが悪いもんな!」
と右の親指を上に突き出してにこっと笑ってラムが期待したとおりに答えた。
そう決心した2人をよそに、薄情にもランは逃げようとした。
それを見て弁天が、
「待ちやがれ、卑怯者!てめえ、あいつがこのまま爆発してもいいってのか!
あいつがどれだけアタイらのことを思っていたのか、てめえのハートには伝わらなかったのかよ!?」
と叫ぶや否や、ランをとっ捕まえた。
ランは、
「ワ、ワシは関係ないっ!ワシは無実じゃっ!おのれらが勝手に悪の道に・・・」
とジタバタ暴れながら首を横に振って訴えたが、ラムは冷たい目で見つめながら、
「ランちゃん・・・今さら関係ないじゃ済まされないっちゃよ。こうなったら一蓮托生、死ぬときは一緒だっちゃ!」
と取り合わなかった。
「わァーッ、離せェーッ!ワシはおのれらと心中するつもりはなァーーい!!」
そう叫ぶランを、ラムと弁天の2人で強制連行した。
弁天は自分の鎖で自分とランを縛り、ランが逃げられないようにした。
ラムと弁天とランがカニ道楽の背中ほうへこっそりと向かうと、
「君たちもこっちで飲むがに?おいしいがによ」
と突然振り返った。とっさにラムが、
「い、いいっちゃ!それより先生、背中にごみが付いてるっちゃよ。ウチが取ってあげるっちゃ」
とちょうど2年前と同じセリフでごまかした。
「そういえば君は、2年前にも同じようなことを言っていたような気がするがに」
と彼は言ったが、ラムは、
「き、気のせいだっちゃ!」

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