Welcome To Another World(Chapter 7) (Page 2)
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「我が名はハインリヒ。この湖の管理人だ。何の用で来たかは分かっているぞ。
愛する夫を救うべく、ミラクルセージを求め、はるばるここに来たのだな?」
ハインリヒと名乗った竜はこのように答えた。
「どうしてそのことを・・・?」
ラムはハインリヒに尋ねた。
「ここはな、湖の裏の世界なのだ。湖の中を見てみろ」
ハインリヒに促され、湖面を見てみると、弁天たちがうろうろしているのが見えた。
大方湖畔の周りを探しているのだろう。
「みんな・・・」
「これで分かっただろう。ここは通常はある条件を満たしたものだけが入れる聖域なのだ。
向こうの声は普段はこちらに聞こえることはないし、逆に今お前があやつらを呼んでみたところで、
返事が返ってくることもない。
この世界は、誰かを救いたい、そう強く願う者だけを招き入れる特別な世界なのだよ。ラム」
ハインリヒは今ラムのいる世界について事細かに説明をしたが、そんなことは今の彼女にはどうでもいいことだった。
「ミラクルセージは今ここにあるっちゃ?だったらウチに譲って欲しいっちゃ!
ダーリンは今大変なことになってるっちゃ。一刻も早く治療しないと、ダーリンの命が危ないんだっちゃ!」
ラムはハインリヒに強く求めた。
「まあ待て。まずはお前の仲間をすべてここに呼び寄せる。彼らにも協力してもらわんとな」
そう言うとハインリヒは、4人を呼び寄せた。
「うわっ!あいたたた・・・えっ、ここ、どこなんだ?」
「・・・あっ、ラムさん!ご無事でしたか」
「ここは・・・もしかしてここが、ミラクルセージの群生地・・・?」
4人は現れるなり、突然の周囲の変化に驚いた。
「ハインリヒ、協力ってどういうことだっちゃ?ミラクルセージはどこにあるっちゃ!?」
「あれを見てみろ・・・」
ラムに言われて、ハインリヒは大きな木を指差した。その幹の周りには、しおれかけた草が生えていた。
「見てのとおりだ。あれじゃとても万能薬としての用はなさん」
「そ・・・そんな・・・じゃあダーリンは・・・」
ハインリヒにこう告げられ、ラムは愕然とした。目の前が真っ暗になった。
頭の中に、「死」の文字がよぎった。
「そんな・・・!じゃああたしのパパはどうなるの!?ラムのだんな様はどうなるの!?
そんなのかわいそうじゃない!!ねえ、何とかならないの!?」
アンジェラはハインリヒに必死に訴えた。
「方法がないわけではないが・・・」
踏ん切りの悪い声でハインリヒは話した。
「ウチ、ダーリンを救うためなら、どんなことでもするっちゃ!!だからお願いだっちゃ!どうしたらいいのか教えて!!」
ラムは真摯な態度で頼み込んだ。するとハインリヒが口を開いた。
「息絶えた直後の人間1人分の血を丸ごとあのしおれかけたセージにかけることだ。
そうすれば、セージは再び活力を取り戻す」
その言葉を聞いた一同は仰天した。それは、この中の誰かを殺さなければ、
あたるもアンジェラの父も救えないと告げられたも同然だからだ。
そんな時だった。ラムが持っていた心電図と脈拍計が警告音を鳴らした。
「どうしたんだ!?ラム!!」
弁天が叫ぶと、
「ダーリンが・・・ダーリンが危ないっちゃ!!」
ラムは脈拍計を見ながらそう告げた。脈拍が一定のレベル以下になったとき、
つまりあたるが危篤状態になったときにアラームが鳴るようにセットしてあったのだ。
そんなラムにさらに追い討ちをかけるようなことが発生した。
「おい、あれ!」
竜之介が指差した方向に信じがたい光景が映っていた。ミラクルセージが完全に枯れ始めていたのだ。
一方その頃面堂邸では、あたるの容態が急変したのに気づいたしのぶが、大慌てでお雪とランを起こしに行っていた。
「あたる君が・・・あたる君が・・・!!」
興奮のあまり、しのぶはそれ以上言葉が出てこなかった。
急いで病室に駆け込んだお雪たちの目に、苦しそうに呼吸するあたるの姿が目に映った。
「まずいわ・・・脈も呼吸もどんどん弱くなっている・・・!!中和剤の効き目が完全に切れて、毒が全身に回り始めたんだわ!
とにかく、ラムたちが戻るまで最善を尽くすわ!ラン、しのぶさん!手伝ってくれるわね!?」
お雪の問いかけに、2人は小さくうなずいた。もう1つの戦いが、今始まった。
「さあ、どうする!?もうお前たちにはあまり選んでいる時間がないぞ!
この草が枯れきってしまったら、次にまた生えてくるのは100年後だ!!
この中の誰かを犠牲にするか、それとも愛する者たちを犠牲にするか、早く決断するのだ!さあ!!」
ハインリヒは追い詰められた5人に容赦なく決断を迫った。そんな時だった。
「ラムさん、ボクを殺してください!」
面堂の口から信じがたい言葉が飛び出した。一同は一瞬言葉を失った。
「な・・・何言ってやがるんでい、面堂!!そんなバカなこと・・・」
竜之介は思わず叫んだ。
「竜之介の言うとおりだっちゃ!終・・・」
「いいんです。あなたの手にかかって死ねるなら本望です。それであなたの悲しむ顔を見ないですむのなら・・・」

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