Welcome To Another World(Chapter 7) (Page 3)
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ラムが何かを言おうとしたのを遮るように、面堂は呟いた。その顔は真剣そのものだった。
いつものように、かっこつけて冗談で言っているときの彼ではなかった。
「ウチに・・・そんなことできるわけないっちゃ!!」
ラムはあくまでこの申し出に拒否した。
「ラムさん。この際ですから白状します。ボクはあなたのことが・・・
ボクのあなたに対するこの思いは、誰にも負けないと思っていました。
たとえその相手が諸星であろうと誰であろうと・・・でもそれは間違いでした」
「間違い・・・?」
面堂のこの告白の意味が、このときのラムには分からなかった。
「あなたがあの時、フィリップの手によって体を貫かれそうになったとき、
諸星は後のことなど何も考えずに、なりふり構わず飛び出してあなたを守りました。
でも、あの時ボクとラムさんの距離は、諸星よりも近かったんです。本来ならボクが助けに向かうべきだったんです。
でも、できませんでした・・・」
面堂は淡々と話した。
「あん時は、おめえはティモシーから徹底マークされて動けなかったんだ。
諸星はフィリップからのマークが外れたからそうしたんだ。助けに行って当然だろ?
おめえのことは誰も責められねえよ」
弁天は面堂にこう告げた。しかし面堂は聞く耳を持たなかった。
「そんなの・・・理由になりません!!言い訳にさえならないですよ!!」
面堂は突然叫んだ。周りの者は皆驚いた。
「ボクは・・・怖かったんです・・・怖くて一瞬助けに行くのをためらったんです。
ボクが恐怖をはねのけ、ようやく動こうとしたときには、すでに諸星はラムさんの前に飛び出していました」
面堂はこう話したあと、しばらく黙り込み、再び口を開いた。
「・・・人間というやつは、極限状況においてその本性を表すものです。
ボクは、口ではいつも耳障りのいいことを言っていましたが、あの時のボクは、
その言葉どおりのことを実行しませんでした。ラムさんのために命を捨てることができませんでした・・・
あの時のボクには、ひとかけらの勇気さえもなかったんです。
ボクのラムさんに対する思いというものは、所詮その程度のものだったんです」
「終太郎・・・」
ラムはただこれしか言えなかった。
「ボクは今まで、諸星のことを軽蔑していました。何でこんな奴をラムさんが、とも思いました。
でも今は違います。身を挺してラムさんを守った諸星を心から尊敬しています。
そんなすばらしい男を・・・みすみす死なせるわけにはいきません!!
だからラムさん。諸星を救うために、ボクを殺してください!!
たとえあなたによって命を奪われたとしても、ボクはあなたを恨んだりしません。
むしろ感謝したいくらいです。これでボクも英雄になれるのですから・・・」
面堂がこう言い終わった直後、ラムは面堂の頬に思い切り平手打ちをした。
「バカなこと・・・そんなバカなこと言うんじゃないっちゃっ!!」
涙目で、ラムはそう叫んだ。
「ラムさん・・・」
ぶたれた頬を押さえながら、面堂は呟いた。
「終太郎。みんなとの約束忘れたっちゃ!?必ず全員生きて帰るって。これ以上新たな犠牲者は絶対出さないって!
・・・確かにダーリンがもし死んでしまったら、ウチとても悲しいっちゃ。
悲しすぎて、あとを追って死のうなんて思ってしまうかもしれないっちゃ。
でもウチは・・・ダーリン以外の他の誰かがこれ以上死んだとしても、同じくらい悲しいっちゃ!
弁天が死んでも、竜之介が死んでも、もちろんお前が死んでもだっちゃ!終太郎!!
だから・・・死ぬなんて・・・殺してくれなんて・・・二度と言うんじゃないっちゃ!!」
ラムは泣きながら面堂の両肩に触れ、そう言った。
「もっと自分の命を大切にするっちゃ!自分の命の大切さも分からない奴に、どうして他人の命が救えるっちゃ!!」
ラムはそう言うと、その場にしゃがみこんですすり泣きを始めた。
「ラムの言うとおりだぜ。ヒーローなんかじゃねえ!死んだら惨めなだけなんだぜ。おめえだってラムの親父さん、ジャリテン、それにレイの死体見ただろうが?」
「弁天様・・・」
面堂の肩を叩き、弁天は静かにそう言った。
「何か他の方法があるかもしれないだろ?それを探そうぜ、面堂」
「竜之介さん・・・」
竜之介もこのように述べた。
(ダーリン・・・ごめんちゃ・・・ウチ、ダーリンのためならなんでもするつもりだったけど・・・
でもやっぱり、この中の誰かを犠牲にすることはできないっちゃ・・・
本当にごめんちゃ・・・ダーリンが死んだら、必ずウチもすぐあとを追って、ちゃんと謝りに行くから・・・)
頭の中でこう思ったあと、ラムは竜のほうを振り返り、
「ハインリヒ!やっぱりウチにはそんなことできないっちゃ!他の方法で、何とかダーリンを救ってみるっちゃ!!」
と告げた。そして5人がその場を立ち去ろうとした直後だった。
「よし、合格っ!!」
ハインリヒが大きな声でそう言った。
「なな、何なの?合格ってどういうことなの!?」

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