父親の威厳を取り戻せ! (Page 2)
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横目で睨むように答えた。
「なあに、ウチの所有するゴルフ場で今日もうすぐコンペをやるんでな。その最終調整をしに来たのさ。ところで、ラムさんは?」
面堂はクラブを手に取り、得意げに尋ねた。
「あのな、オレはラムの付録じゃないんだぞ。オレが父さんと2人きりでいるのがそんなにおかしいか?」
二言目にはラムの名を出す面堂に、あたるは不快感をあらわにした。
「まあそう噛み付くなよ・・・ただどうしてるかと聞いただけではないか」
「母さんと一緒にデパートのバーゲンセールに行ってるよ。どうだ?これで満足か?」
「バーゲン?そういえばサクラさんやしのぶさんも同じ事言っていたな・・・」
「何?どうしてお前がそんなこと知ってるんだ?」
「今日のコンペに2人を電話で招待したんだよ。そしたら『今日はバーゲンだから・・・』と言って2人とも断られたんだ。
そうか・・・諸星のうちにも掛けたが誰もいなかったから、もしやとは思っていたが・・・」
「ホー。例によって女ばかり招待しやがったな。このスケベが・・・」
「失敬な!今回はクラスの全員に召集を掛けたんだ!先生も含めてな。だからお前だって来たいのなら、今から来ればいい」
「ホー。ところで面堂、コンペと言うからには、商品ぐらい出るんだろうな?」
「もちろんだ。各ホールごとにトップ賞。総合優勝者に賞金。もちろんブービー賞もあるぞ。ハンディキャップもつける」
「面白そうだな・・・よし。参加しようではないか!ところで、オレのハンディーは?」
「お前はな、何度空振りしてもノーカウントにしてやる」
この言葉を聞いて、あたるはずっこけた。何はともあれ、こうしてあたると父は面堂家主催のゴルフコンペに参加することになった。
(面堂のヤロー、オレを初心者だと思ってバカにしてやがるな・・・上等だ。こうなったらとことんやってやる!!しかし・・・)
「お前な。この乗り物、どうにかできんのか?」
心の中でこう呟いた後、あたるは今自分が乗っているタコ車にケチをつけた。黒メガネが運転している。
「風情があってなかなかよいと私は思いますが」
タコ車を運転する黒メガネはそう答えた。スピードは意外と速く、程なくして面堂家所有のゴルフコースに到着した。
「あら、諸星様。お久しぶりですわね。今日のコンペにご参加なさるのですか?」
そこに了子が現れた。面堂同様、上等そうなウェアを着ていた。
「あっ、了子ちゃん!本当に久しぶりだねー。その格好からすると、了子ちゃんも参加するんだね?」
「ええ。私、退屈しのぎのためなら手段は選びませんの。ところで、そちらは?」
了子はそう答えた後、あたるの父のほうを向いた。
「ああ。オレの父さんだよ。父さんも参加するんだよ」
「どうも。息子がいつもお世話になっています・・・」
父は妙に緊張した感じで挨拶した。
「では、早速第一ホールから回りましょう」
あたるたちは第一ホールに到着した。順番はくじで決まり、面堂が1番になった。
「第一ホールは508ヤードでパー5か・・・ここは一丁、グリーンを狙ってみるか!」
ズバッ
面堂の打球はグングン、グングン伸びて、グリーン・・・・・・を余裕で超えて、見えなくなった。
「おおー・・・これは・・・おい、面堂。オレはゴルフのルールというものはほとんど知らんが、これはOBと言うのではないか?
確か1打罰・・・」
「お、お前にいわれんでも、知っとるわい!」
面堂は顔を真っ赤にしながら叫んだ。2番目は了子である。
シュパッ
やはり女の子ということでパワーではハンディがあるが、打球のコース自体はなかなかよかった。スイングもなかなかきれいだ。
「あー、もうちょっと飛ぶと思いましたのに・・・」
「でもコースはいいんじゃない?これならあと3打もあれば・・・まったく、誰かさんとは大違いじゃ!」
「やかましいっ!!」
気落ちする了子をあたるがフォローした。面堂はさらにイラついた。
「よーし。次はオレじゃな!」
あたるはクラブを振り回しながら意気揚々と打席に入ろうとした。そこに黒子が現れた。
「ささ・・・お召しかえを・・・」
あたるにさっとゴルフウェアを着せると、さっとその場を立ち去った。
「これで気分が盛り上がってきた。コース自体は単純なんだから・・・要はまっすぐ飛ばせばいいんだろ!行くぞー・・・!!」
あたるは思い切りクラブを振り上げた。
「どりゃあーーーーーー!!」
ボシュッ
打球は見事な放物線を描き、グリーンの5ヤードほど手前にぽとりと落ちた。
「よおおおっしゃあ!!」
あたるは握り拳を宙に繰り出しガッツポーズをした。
「お見事ですわ、諸星様!」
了子も拍手で褒め称えた。
(お、落ち着け終太郎・・・どうせビギナーズラックさ・・・)
面堂は心の中でそう呟き、自分を落ち着かせようとした。しかし逆にあせる気持ちが強まってしまった。
最後はあたるの父の番だった。招集を掛けたのが遅かったせいか、今回集まったのは彼を含めても4人だった。
「イヤー、あんないいショットの後だけに・・・打ちづらいなあー・・・」

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