父親の威厳を取り戻せ! (Page 4)
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「何よ!ちょっとバストが大きいからって威張ってんじゃないわよ、ホルスタイン女!!」
「誰がホルスタイン女だっちゃ!!この胸滑走路女!!」
「ぬあんでっすってぇーーー!!」
この2人のバトルは、とうとう相手の人格、もとい体格攻撃になってしまった。
「奥方、このバッグは私が先に取ったのですぞ!」
「なーに言ってんの!これは私のものです!第一あなたは普段から私に迷惑を掛けてばかりいるんだから、
これぐらい譲ろうという気持ちはないの?」
「迷惑とは人聞きの悪い。私はあなたに拝まれこそすれ恨まれる覚えなどありませぬ!」
「それではありがた迷惑と言い換えましょうか!?」
こっちはこっちで激しい舌戦が繰り広げられた。
バーゲン会場は文字通り修羅場となっていた。商品をめぐるバトルにより、病院送りになる者も現れた。
「諸星。ボクからひとつ、提案があるのだが」
第3ホールに到着した直後、突然面堂はこう言った。
「何だ?言ってみな」
あたるは了承した。
「打つ順番を変えよう。気分転換に」
この提案によりくじ引きが行われ、あたるの父が1番目、面堂が2番目、了子が3番目、あたるがラストとなった。
「打つ順番が変わったからってゴルフがうまくなるとは思えんがねえ、面堂君」
「だっ・・・黙れっ!」
茶化すあたるを、面堂は一喝した。ともあれ、この打順で、パー4、400ヤードの第3ホールのゲームが開始された。
「あっ、しまった!」
1打目を打った直後、思わず父はこう言った。打球が左にそれていた。しかしこの後、とんでもないことが起こった。
OBかと思われたこの打球は、突然吹いてきた右方向の風にあおられ、なんとグリーンのほうに方向が変わったのだ。
それだけでも十分すごいことではあるが、ミラクルはこれでは終わらなかった。
「おかしいですわね。球がどこにも見当たりませんわ・・・」
「うーむ・・・確かにグリーンのところに落ちたはずなのだが・・・」
あたるたちは父の打球を探した。だがグリーンのところには見当たらなかった。
やはりOBか・・・そうみんなが考えたそのときだった。ある疑惑が浮かんだ。
「ま・・・まさか・・・!!」
4人は心の中でそう思いながらも、恐る恐るホールに向かった。父が穴をのぞいた。
「あ・・・!!アーーーッ!!」
父は素っ頓狂な声を上げると、その場にへたり込んだ。
「何?何?どうしたの父さん!?」
呆然としている父にそう言いながら、あたるも穴をのぞいた。
「あーーーーーーっ!!」
あたるは思わず仰天した。なんと球がカップインしていたのだ。ホールインワンである。
「父さん!やったあ!!ホールインワンだよ!!」
あたるは父の肩をつかんで体を揺すりながらそう叫んだが、父はまだ呆然としていた。
「おめでとうございまーす!!」
するとそこに大人数の黒子が現れ、あたるの父を取り囲むと、胴上げを始めた。
「ささ・・・記念品を作りますので、こちらへどうぞ」
黒子にそう促されると、父は言われるがままについて行った。
「いやー、効果てきめんだねー。面堂君、ぜひオレの親父にあやかってくれよー」
「そうですわお兄様。いい流れを壊さないでくださいね」
あたると了子はまたしても面堂にプレッシャーをかけ始めた。もはやそんな2人を怒鳴る余裕さえない面堂であった。
「で・・・でぇえーーーい!」
奇声をあげながらショットした球は、無情にもバンカーにぽとりと落ちた。
「面堂くーん・・・」
「お兄様ぁ・・・」
面堂に浴びせられた目線は、いずれも氷のように冷たかった。
1時間後、あたるの父が記念品と商品を手に戻ってきた。そこで見た意外な光景に驚いた。
「あれっ?まだ第3ホールなの?どうなっとるんだ?あたる・・・」
「どうしたもこうしたもないよ。父さん・・・あれ見てよ、あれ」
「お兄様ったら、まだあのバンカーを抜けられませんのよ・・・」
あたると了子の言うとおり、そこにはバンカーに苦しみ続ける面堂の姿があった。
「せいっ!くそっ!このっ!このおっ!」
どんなに叩いても叩いても、球が砂の中にえぐり込むばかりであった。
「ねえ、了子ちゃん。悪いんだけど、今日はもう遅いから、これで帰らせてもらってもいいかな?」
たまりかねたあたるはこう言い出した。
「ええ、そうなさってくださいな。兄には私から申しておきますから」
了子もこう言ったので、あたるたちは帰ることにした。手に持ちきれないほどの賞品とともに。
「それにしても父さん。何だか、パチンコの景品みたいだね」
たしかにあたるの言うとおり、カップラーメン、レトルトカレー、缶詰など、いかにもと思わせる賞品が多かった。
「でもオレ、知らなかったなぁー。父さんにこんな特技があったなんて。見直しちゃったよ。母さんにも見せたかったなぁー」
「ハッハッハ・・・今日はちょっと運がよかっただけさ。それより、こんなにもって帰ったら、きっと母さん、驚くだろうなあ」
帰り道、こんな会話が延々と続いた。家に着くと、明かりが点いていた。
「母さん、ラム、ただいまー。今帰ったよー」

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