THE TIME COME BACK 第5章真相 (Page 1)
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風が少し吹いてあたるの部屋のカーテンを揺らしている。あたるはひざをついて座り込んだ。ラムは顔を上げてあたるを見つめた。目には光る涙があふれており,開いている窓から差し込んでくる日光を乱反射させる。ラムは顔を上げるとき,涙が床に落ちたようで2,3滴,他の色より濃く床に丸い円をかいてた。
ラムは重い口をゆっくり開いた。
「ダーリン・・・。約束忘れたっちゃ?うちたちの最後の約束・・。」
ラムは再びうつむいた。
あたるは,はっと意識を取り戻した。そしてはじめてラムが涙を流していることに気がついた。ラムが自分の右手の人差し指で,涙を拭くのを見た。
あたるはとりあえずラムを落ち着かせて彼女に問うことにした。
これ以上ラムを興奮させたら手が付けられなくなる・・・。
こりゃ,ガールハントよりむっかしいぞ・・・。
内心落ち着いている自分自身にあたるは驚いた。なぜだ・・・。と今はこんなことをしとる場合ではない!
・・・落ち着いた・・・?ようだ。しかしこれ以上ラムに質問を答えないわけにはいかな。そうしたらますますラムは興奮するぞ。今だ,今しかない。
あたるは恐る恐るラムに問いかけた。
「なぁ,ラム。どうしたんだ。最後の約束?何のことだ。」
思うことをそのまま述べているので,あたるの言う1文づつが短くなるのは当然だった。
ラムは何も答えない。落ち着いた証拠だろうか。しかし,今,何を答えるべきか,それに対応する単語を頭の中で探しているのだろうか。
しばらくして,再度あたるは身を乗り出してラムに問う。
「答えろよ,ラム,頼むから。俺は何が起こっているのか分からんのだ。」
ラムは口を開いた。
「うちだって・・・うちだってそうだっちゃ。うちはダーリンの言ってることが分からんちゃ。そもそもうちを覚えていること自体おかしいっちゃ。」
ラムはいったん息を整えてから更に続けた。
「でもこれでもうおわりだっちゃ。
もうすぐ,すべてを終わりにする光が放たれるっちゃ。それが地球全体を包み,そして・・・。
うちたちの関係,うちと地球の関係,
ダーリンがうちから逃げるなら,望みどうりに。でもどうもがこうとも,これからは逃れられないっちゃ。ダーリンのせいだっちゃ,こうなったのも。」
あたるは鳥肌が立った。これが初めてではないだろうか,ラムのことを怖いと思ったのは。
何をわけの分からんことを・・・。
と,言おうとしたが,ラムが当然立ち上がったのに驚き,言えなかった。
立ち上がったラムは,うつむいたまま歩き窓のそばで止まった。
そして最後に冷たく言った。
「さよなら。」
電撃よりきついこの言葉。そう感じた。あたるはなにかに体を貫かれた感じだった。
と,金縛りにあったように,あたるは動けなくなった。
ラムは飛び去っていった。あたるはラムを追おうとしたが,体が動かないのでできやしない。ラムから逃げることで鍛えたこの自慢の足,いまは使い物にならない。
やっと動けるようになったのは動けなくなってから1分もすぎてなかったが,あたるには何時間にも感じられた。
そして急いで窓に駆け寄り,叫んだ。
「ラムーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
と。


しばらくたち,あたるは落ち着きを取り戻し,床に仰向けに横たわり,天井と向かい合った。ぽっかり心に穴が開いたようだ。


今さらになってあの意見が気になり始めた。やはり,メガネや面堂が言った通りなのか。俺がおかしいのか,周りがおかしいのか。できれば,自分が正しいものだと思いたいのだが。
・・・まてよ,自分がおかしいとしても,ラムはいたのだ。面堂は間違っていたのだ。
やはりメガネは正しかったのだ。・・・ではここはどこなのだろう。異次元か?
どうすれば抜け出せるのだ。その方法などないのか?
これから先には何があるのだろう。
・・・考えても無駄だと悟ったあたるは時間に身をゆだねることにした。そうだ,時間が解決してくれる。
あたるはラムが言っていたことの意味が気になりだした。ほんの些細な言葉である。
《望みどうりに》
ラムが言ってた俺の望みとは?ラムと別れて自由に生きること?ラムと一緒にいること?自由とは?
そういえば,俺が前から言ってた。
ガールハント?それが自由?
好きに生きること?
ラムがいると自由はやってこない?そうなのか?
ラムが来る前は俺は自由だったのか?
前から俺が望んできたことはなんだったんだ?自由のもつ意味が分からず,俺は何してきたんだ?
・・・教えてくれ。・・・だれか。
いろんな思いがあたるの頭の中を交錯し,問題をますます難しくする。
本当はあたるは自分が言ってきた自由の意味を知っているはずだが,今はとても思い出せる状態ではなかった。
と,あたるは急に眠くなった。寝起きなのに・・・そう考えている間もどんどん意識は遠のいて行った。


ここは・・・。あたるはゆっくり目をあける。立とうとするができない。
体がいうことをきかないようだ。

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