時は夢のように・・・。「第三話(其の弐)」 (Page 2)
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あたる「事実だけ言うと、親父の親友の娘さんを我が家で預かっているのです。彼女の一家がフロリダに転勤になって、他に頼れるところ
    がないからです。」
サクラ「いい答えじゃ、諸星。・・・しかし、一緒に生活しているとなると・・。」
あたる「何もやましいところは無い!」
温泉「こらーーっ、諸星! 言い逃れするな!」
サクラ「担任は私じゃ!!」
 俺の胸ぐらを掴もうとした温泉を、サクラが睨んだ。このときのサクラ先生の表情は、厳しく怜悧に美しくて、背筋がゾクッと寒くなっ
たほどだ。
 睨まれた温泉マークは、急に顔も青ざめて、俺の胸元をパッと離した。
サクラ「諸星の監督責任は、私にある。今は事実だけが重要だとおもうのだが、諸星の説明だけじゃ不足だと思うのなら、両親に確認して
    みてはどうじゃ?」
 もちろん温泉の方が年上なのだが、サクラ先生の静かな迫力にはてんでかなわない。詰め寄られると、たじたじと退いてしまう。
花和「サクラ先生のほうが筋が通ってますね。ともかくご両親に連絡をとりましょう。」
 おとなしく状況を見守っていた花和先生が、やんわりとふたりの間に割って入り、その場を引きとった。
 後のことは、あっけないくらい簡単に終わった。
 母さんに電話をかけて、校長とかわり、事情を説明してもらった。
 思ったとおり、母さんは唯を我が家で預かるのが問題になるなんて、思ってもみなかったようだ。あんな母さんだから、呆れるやら驚く
やら、『うちの息子がああだから分からなくもないですが、そんなに信用できませんか』って怒り出してしまった。
 『うちの息子がああだから』って部分は今一つ納得できないが、なんとなく嬉しかった。母さんが『申し訳ありません』なんて謝らない
でくれてよかった。母さん、信用してくれてたんだなぁ。
 電話を切って部屋の中が静かになると、校長は先生達に目配せすると、静かに立ち上がった。
校長「なるほど、わかりました。諸星くん、呼び立ててすみませんでした。君にはなんの問題もないようです。」
 校長はにこにこしてそう言ってくれた。
 差し出された校長の手を、俺は軽く握り返した。
サクラ「よかったのう、諸星。」
 サクラ先生が優しく微笑みかける。その隣に立っていた温泉マークは、腕組みして、険しい表情で俺を睨みつけた。納得してないけど、
校長やサクラの手前、何も言えないって感じだ。
 花和先生が温泉マークの肩をポンと叩いた。
花和「厳しく取り締まるだけがいいとは言い切れませんよ。しばらく見守ってみましょう。」
温泉「・・・・・。」

                             *
教室。
 教室に戻ったのは、昼休みが半ば終わった頃だった。みんな昼食を終えて外に出てしまっている。
 面堂とメガネ達四人は、俺が戻るのを待ち構えていた。
面堂「諸星、どうだったのだ!?」
あたる「なんともねぇよ。」
 事の顛末を聞いた連中は、
「なーんだ、それだけで済んだのか。」
「つまんねーの。」
 などと口々に言ってくれてやがる。
 俺が自分の席に座ると、メガネがずいっと正面に立ちはだかった。
メガネ「あたる、今朝のことを忘れたワケではあるまい。」
 俺はぎょっとした。まさか、また拉致られちまうのか・・?
あたる「ちゃんと答えを言ったではないか。」
メガネ「ふんっ、あんな茶を濁す様な答えで逃げられると思ったか?」
あたる「・・・・・。」
 この場で全てをぶっちゃけても良かったのだが、そうなるとパーマの事情をチクることになる。俺としては、パーマにかつがれた被害者
だから、パーマがどうなってもかまわない・・・ワケないよなやっぱり。昨日の掃除の借りを返したわけではなかったので、何も言わない
ことにし、借りを返したつもりで覚悟を決めた。
あたる「メガネ、俺は・・。」
 言いかけたが、俺より一瞬早くメガネが話し出していた。
メガネ「しかし、今回は俺の勘違いだった様だな。いやパーマにかつがれたと言うべきか・・。しかし真実をパーマが話してくれたよ。」
あたる「なにっ?」
 またなにか嫌な予感が脳裏によぎった。パーマの言う真実はトコトンずれてやがるからだ。
メガネ「あの娘は、お前がパーマと一緒にガールハントした娘だそうじゃないか。」
 やっぱりな・・。パーマよ、そんなに責任を俺になすりつけたいのか!
あたる「・・・・。(あのヤロまたいい加減な事言いやがってっ!!)」
 瞬間的に怒りが込みあがってきた。わなわなと身体に震えがくるほどキたけど、俯いてメガネに表情を悟られないようにした。
メガネ「なんでもお前は『家にはラム以外の美少女が居るから、この娘はパーマに譲る。』と言ったそうだな。」
あたる「た・・たまにはパーマにもラム以外の女の子の魅力を味わってもらおーと・・。」
 不本意だったけど仕方がないんでパーマの魂胆にまんまとハマルことにした。

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