時は夢のように・・・。「第八話」 (Page 3)
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 やっぱり信用してくれた?
 考えは一回りして、振り出しに戻される。
 その堂々巡りに悩まされ、ついつい、話しかけてきた面堂に打ち明けてしまったのだ。

                               *
面堂「で、ラムさんとの間に、溝ができたってことか?」
 面堂は、平静な顔で、俺に刀を振り下ろした。
あたる「どわっ!?」
 白刃取りして、俺たちは固まった。
 机の端に腰かけてたパーマも、
パーマ「じゃ、なにか? 唯ちゃんとラムさん二人の、あたる争奪戦勃発・・?」
あたる「表現がキツイぞ、パーマ!」
 パーマと面堂が目を合わせ、「あはははは」って笑った後、木槌で俺に殴りかかってきたのだ。
あたる「どわわっ!! や、やめろっ、やめんか!!」
 ドカッドカッドカッ!
 俺は、あっという間に木槌でボコボコにされて、床に仰向けにぶっ倒れた。
面堂「・・・意外と積極的だな、唯さん。きっと言うチャンスを待ってたんだ。いつも一緒にいるんだから、特別な感情が芽生えても、不
   思議じゃない・・・。これは厄介だな。」
 俺を木槌で殴ってる時とは別人の様な冷静な表情で、面堂が言った。
パーマ「でも、わかんねぇな。あたるのどこがいいんだ?」
面堂「うーん、彼女、家族が異国の地にあって寂しいところに、諸星が以外にも優しく接してくれてたことから・・・案外、そんなパター
   ンかもしれない。」
パーマ「や・・優しいぃ? こんなあたるがかぁ?」
 と呆れかけたパーマだが、俺が睨みつけると、ゴホンと咳払いし、
パーマ「ま、その辺の事情はともかくとしてだ・・・あたる、ラムさんが冷たいってのは何なんだよ? いつもと変わらないんだろ?」
 と、俺の顔を覗き込んできた。
 俺はゆっくりと首を振った。もちろん、横にだ。
 二人は、さもあらん、とでもいう風に頷いた。
あたる「・・・もう最悪な状況だよ。俺の話を聞く以前の問題さ。ラム、俺と二人のときは、まともに口もきいてくれないんだ。唯ちゃん
    が側にいてくれれば、一緒に楽しくやってるんだけど・・。唯ちゃんがいる席で、その話は絶対もち出せないし・・。」
 するとパーマが瞬きし、
パーマ「へぇ、ラムさんってそんな態度もとるのか。」
あたる「・・・でも、一番恐ろしいのはだな・・・。」
面堂「恐ろしいのは?」
あたる「・・・ラム、俺を“諸星クン”って呼ぶんだ。」
パーマ「いつも“ダーリン”だったろう? 格下げされたってコト?」
 眉をひそめるパーマに、俺は頷いてみせた。
あたる「怖いぞ〜。必要以上に“諸星クン”って力を込めるんだ。またその時の目付きがさ、露骨に蔑んでるっていうか、軽蔑されてるっ
    ていうか・・・例えようがないよ、あれは。真綿で首を絞められてる方が、まだマシだ。」
面堂「・・深刻だな。しかもその状況で、唯さんと二人で部屋を共にしてるんだろう?」
 俺は机に突っ伏して頷いた。
あたる「そういうコト・・・台風のおかげでな。あん時は、やったぜって思ってたのになぁ。5分ももたなかったもんなぁ。俺と唯ちゃん
    が『いつも同じ部屋で一緒にいる』から、ラム、余計イライラするらしくて。冷静に考えるコトができないみたいなんだなぁ。」
パーマ「年上の女の子といつも同じ部屋に・・・シチュエーションだけなら文句なしに聞こえるんだけどなぁ。そうかぁ、そういう問題も
    出てくるのかぁ。」
 とパーマが腕を組んで呟いた。くっそー、このノーテンキさは羨ましい限りだ。
面堂「いや、諸星に限っての問題だな。」
 力を込めて面堂が言った。
パーマ「じゃあよ、あたるが留守だった一週間分の補習はどうしたんだよ?」
 パーマに言われ、俺は無言で机に腕を突っ込み、物理のノートを取り出した。
 ノートをめくりながら、面堂は、
面堂「不気味なほどの模範解答・・、これ、唯さんに教えてもらったんだな?」
パーマ「なんだぁ? じゃああたる、おまえ、唯さんとこの数日ずーっと一緒だったのか?」
あたる「だって・・、北海道行ってまで補習なんてやってられないし・・。家の中の後始末であれやこれやあって学校休んで、その合間に
    、唯ちゃんの力を借りたまでだよ。背に腹は替えられないだろ?」
 俺は顔を上げて弁解した。
 二人は、さすがに呆れたような顔をした。
パーマ「だめだな、こりゃ。自分で墓穴掘ってちゃ、どうしようもねーよ。」
面堂「だな。手の施しようがない。」
 パーマと面堂は頷き合うと、揃って立ち上がった。
あたる「おいおい、ちょっと待てよ! 俺はどうすりゃいいんだ?!」
 わらにすがる気持ちで、俺は二人を見上げた。
 面堂はタメ息を吐いて、
面堂「ちょっと考えればわかるだろう? 唯さんは本気だろ? あとは諸星・・・きみ次第だ。」
あたる「お、俺次第?」
面堂「きみに二心がないのなら、ラムさんに全てを聞かせるしかない。もとはといえば、きみがはっきりした態度でいないから、そんなこ

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