「ザット・クレイジー・サマー」第三話 (Page 2)
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夜。夕食後の諸星家。もう詩的めいたことは言うまい。
二階の部屋に殴り込む浮遊幼児一名、ぶっきらぼうにドアを開ける。
漫画を読む軽率青年に対し開口一番…


テン「おいアホ!」


あたる「…」

テン「アホ!アホ!聞こえとるかあ!!」
あたる「…」

テン「ワイをおちょくるのもいい加減にせ〜!アホ、返事しろ、アホ、アホ!!」
あたる「ぼくはアホという名前ではありませ〜ん」

テン「…アホのあ〜た〜る〜!」
あたる「人に対してアホとは…親の顔が見てみたいなあ…今度ラムに頼んで」

テン(ぐぬぬぬ…覚えとれよあたる!お前なんか―――して―――して…)
   
   「あたるはん…ちょっとお話が」
あたる「(クックック)何じゃ、ジャリテン!」
テン(…おかあはんはいらっしゃってへんなあ…よし!)
   「何じゃいもないわい!お前ラムちゃんになに吹き込んだんや!」
あたる「なにって、ただお前がラムを丸焦げにするから手伝ってくれといった、といったんじゃ。何か問題でもあるのか?」
テン「大ありじゃあ!!お前そんなことを言ったらワイがなにされるかぐらい容易にそ〜ぞ〜できるやろ!!」
あたる「できん」
テン「この恨みいつか晴らしてやるからな〜…それにしても痛かったなあ、ラムちゃんの超特大電撃…!まったくアホのあたるが」
あたる「うるさい!!あの時はこうでも言わなければいけなかったんじゃ!我々の真の目的を隠すためのカムフラージュだったんだ!」
テン「それにしてももうちょっとましな嘘つけられへんやったか!やっぱりお前はほんまアホやな〜。ワイのほうがよっぽどいい嘘をつくで」
あたる「うるさい!!」


火炎放射、フライパンの乱闘。


あたるの父「母さんなんだろう、また上が騒がしいけど。…母さん聞こえてる?…あ!」

この子にしてこの母あり。母は耳栓をしておりました。

あたるの父「子供無邪気で母強し、されど亭主はぺんぺん草…か」

さて二階。

「「ぜえぜえぜえ…」」
あたる「…こんなことをしとるばやいではない!とにかく今のうちに話せ!」
テン「そやな…」



さて、なぜラムはこの騒ぎに介入してこなかったのかというと…
ラム「…ふぅーっ…。やっぱりお風呂は気持ちいいっちゃね〜」


…だいたいこんなことでもなければあたるとテンが秘密の会談をするわけもないし、できるわけもない。

ラム「さっきはテンちゃんには悪かったけどこうでもしなきゃダーリンの悪だくみはわからないっちゃ。
   ……さ〜て、そろそろだっちゃ!」

なにやら怪しげな機械。盗聴器らしい。


ラム「えーっと…」ガチャガチャ「あれ、音が鳴らないっちゃ…まあ特売品だし、超小型だからなんかの拍子に一個ぐらい壊れても仕方ないっちゃね…」
ラム「次はチャンネル2っと…」ガチャ「…これもならないっちゃ…」ガチャガチャ「チャンネル3もダメ…」



そのころ二階では…

あたる「なに、レイが?」
テン「そや、レイもその大会に参加するゆ〜てんねん。」
あたる「どこが耳寄りな話じゃ!ちぇっ、敵が増えたな…」
テン「そやないねん。レイ、勝ったらお前に『デート券』お前にやるゆ〜てんねん」
あたる「?」
テン「もちろんただやないで!交換として、ラムちゃんとデートさせろと言ってきとる。」
あたる「…」
    (ラムがレイとのデートに応じる…金輪際考えられん!て〜こ〜するにきまっとる。…こちらはあの券さえ手に入れればいいのだ!本能に赴くままに愛を成就させる、そのための手段は正当化されるのだ!)
テン「な、ええ話やろ、もちろんOKしてくれるよな、な、なあ!」
あたる「…君はなぜそんなに僕に勧めるのかね、テン君?」
テン(ゾクゾクゾク…積もり積もった恨みを晴らすため…なんちゅう〜ことは口が裂けても言えんわ)
   「そ、それはなあ…レイさんに頼まれてうんと言ってしまった以上後戻りできへんのや!」(動揺してしもた…ばれるやろか?)
あたる(本当のことを言っとるよ〜には見えんが…まあいい、こっちは券が手に入ればそれでいいのだ)
   「そ〜かぁ…そうだな、そんなに取引がしたいんなら、させてやってもいいぞ、ただし…」
テン「た、だ、し、?」
あたる「今後1か月、俺に火を噴かないこと!俺のいうことを聞くこと!いいな!」
テン「(くう…アホのあたるめ〜)そんなら、取引成立やな」
あたる「へ?なんかいった?」
テン「だからこれで取引成立やなというたんや」
あたる「ほう、それが人にものを頼む態度か。ここはひとつ親御さんに出てきてもらってしっかりとしつけっちゅ〜もんを…」
テン「(〜〜〜〜〜!!アホ、お前がいえた口か!)…よろしゅうお願いします、あたるはん」
あたる「そんなんがお辞儀とは恐れ入ったなあ」
テン(我慢やで、僕はいい子や。それにこの計画がうまくいけば恨みも晴らせる。それまでの辛抱なんや…。あたる、覚えておくんやど!!)

あたる(しっかし、なぜテンがこんな話を?…まあ、いいか!)


一方一階、浴室。


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