うる星やつら―アナザーワールド― ラストエピソード (Page 3)
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 「じゃぁ、すぐに調べるね」と言うと、サクラの涙とこたつ猫の毛を別の容器に移し、黒魔術を始めた。ランは、何やら呪文の様なものを唱えると火の中にこたつ猫の毛とサクラの涙を入れた。すると、もうもうと煙が上がり、水晶玉の中に何か浮かび上がって来た。それは次第にハッキリとして来て、ラムの姿が写し出された。ラムは、気絶しているのか倒れており、まわりには玉の様な物が無数に有り、その玉には様々な映像らしき物が写し出されていた。それを見たランは
 「な、なんて事……ラムちゃんが居るのは、時の狭間よ……」と言って、愕然とした。あたるは、訳が分からず
 「時の狭間って?」とランに聞くと、ランは
 「時の狭間は、時間の流れの無い空間なの。だから、全ての時間と繋がっているの、もちろんこことも」と言うと、あたるは
 「なんだぁ、じゃぁ連れ戻すの簡単そうだね」と言ったが、ランは
 「とーんでもない、逆よ!」と言うと、更に
 「同じ時間軸に居るなら簡単だけど、ラムちゃんが居る時の狭間は、時間の流れが無いから、そんな中からラムちゃんを探し出すなんてワープしてる宇宙船から止まってる人の手を握る様な物よ」と言った。あたるは益々分からなくなったが、ラムを連れ戻すのが困難だと言う事は分かった。そしてあたるは
 「じ、じゃぁ……」と言うと、ランは悲しそうに首を振った。

 ラムは、目を覚ますと回りを見渡した。回りには無数の球体が有り、その球体には様々な映像が写し出されている。球体の数は、とても数えられる様なレベルでは無く無限に有ると言っても過言ではなかった。
 ラムは、その球体の1つに触れてみたが手はすり抜けてしまい、触る事は出来ないらしい。ラムは他の球体も試したが、やはり同じだった。その時ラムは気付いた、球体に写し出されているのが様々な時代だと言う事に、それを見てラムは
 「ここって、まさか……時の狭間……」と言った。ラムの顔には絶望が浮かび上がった。

 あたるは、ランの言葉にガックリと膝を落とし
 「じ、じゃぁ、ラムは……ラムは……」と言うと、床を叩いた。あたるの目からは涙がこぼれ落ちる。すると、その瞬間ランは素早くあたるの涙を容器で受け止めた。そんなランの行動にあたるは訳が分からず
 「え?なに?」と言ってランを見ると、ランはあたるの涙とラムの髪の毛を両手に持ち
 「ごめんね、ダーリン。実は、ダーリンの涙が必要だったの。だって、ダーリンにラムちゃんの為に涙流してって言っても無理でしょ?」と言うとニコリと笑った、呆気にとられているあたるに
 「ラムちゃんを時の狭間から助ける為には、この空間を時の狭間に固定する必要が有ったの。でも、ただ固定するだけじゃラムちゃんがこの空間を見つけられないから、目印が必要だったのよ。ラムちゃんの髪の毛で空間を固定して、ダーリンの涙で道しるべを作るの。時の狭間から出る為には、ラムちゃんにこの空間を見つけてもらって、ラムちゃん自信がこの空間に接触しないとダメなのよ」と言うと、ラムの髪の毛とあたるの涙を機械にセットして、機械を起動した。すると、ちょうど目の高さ位の場所に球体の様な物が現れた。あたるがその球体を見ると、どうやら、球体の中は時の狭間に通じているらしい。あたるは、振り返りランの方を見て
 「こ、これでラムは……」と言うと、ランは
 「うん……無事に辿り着ければ……」と言った。それを聞いたあたるは
 「え?それってどう言う事?」とランに聞くと、ランは
 「時の狭間は時間の流れが無いから、その中に人が入るとやがて、その人の時間も止まってしまうの。だから、後はラムちゃん次第……」と言った。あたるは再び水晶玉に目をやると
 (ラム!戻って来い!)と思った。

 時の狭間ではラムが出口を探していたが、いっこうに見つかる気配は無かった。ラムが回りを注意深く見てみると、遠くに光を見つけた。ラムは、その光を目指して歩きだしたが体が思うように動かない。ラムは
 「おかしいっちゃ、何だか体が重いっちゃ」と言いながらも光の方に向かって行った。そんな様子を水晶玉で見ていたあたるは
 「ランちゃん!ラムの様子が!」と声を上げた。機械の調整をしていたランも、あたるの声を聞き、水晶玉を見ると
 「まずいわ……早くここに辿り着かないと、ラムちゃんの時間が止まっちゃう……」と言った。あたるは、水晶玉を見つめると
 (ラム!頑張ってくれ!)と思った。
 ラムは、重い体で必死に光に向かって歩いていた。やがて光はだんだん近くなり、近づくにつれて、その光がとても暖かい光に感じた。その光を見てラムは
 「あの光、間違いないっちゃ!あの光の向こうにダーリンが居る!」と言うと、力を振り絞って光に向かった。しかし、ラムの体は既に限界に近く一歩一歩足を出すだけでも心臓が張り裂けそうになる。それでもラムは、あたるに会いたい一心で歩き続けた。

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