うる星やつら―アナザーワールド― ラストエピソード (Page 4)
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 光は、もうすぐそこまで迫っていた。ラムは命を削りながら、一歩また一歩と前に進み光まで後2メートル位の所まで来た時、ついに力尽きガックリと膝をついてしまった。その様子を水晶玉で見ていたあたるは思わず
 「ラム!しっかりしろ!もうちょっとだ!」と声を上げた。いくら叫んでも、時の狭間に声が届く事は無いが、あたるは叫ばずには居られず、更に
 「俺は……俺は、お前と一緒に居たいんだーーー!」と叫んだ。その時、ラムはあたるの声を聞いた気がした。そして顔を上げると
 「今……ダーリンの声が……聞こえた……」そう言うと、最後の力を振り絞り立ち上がると
 「……ダーリン…………」と今にも消えてしまいそうな声で呟き、一歩足を出した。そして、震える足をもう一歩出した所でついに力尽き、崩れる様に倒れた。それを見たあたるは
 「ラム!!」と叫んだ。その時、ランが
 「ダーリン!あれ!」と言った。すると機械で発生した球体から手袋をした腕が出ている。それは、最後にデートした時にラムがしていた指4本と親指とに分かれていて小さなボンボンの着いた手袋だった。あたるはすぐに球体の所に行くと、その腕を掴み力一杯引っ張った。しかし、全く引き出す事が出来ず
 「ダ、ダメだ!全然動かない!」と言うと、ランが
 「きっとラムちゃんの意識が無いからだわ!でも、早くしないと本当にラムちゃん死んじゃう!」と言った。それを聞いたあたるは
 「くっそー!俺は絶対に諦めない!」と言うと、デートの最後にラムがあたるに聞いた言葉が頭をよぎった。
 《ダーリンは、ウチと居て幸せだったっちゃ?》
 そして、あたるは
 (バカ野郎!お前との時間を過去形で考えられる訳無いだろう!だから、お前は俺が助け出す!)と思うと
 「うぉぉぉぉぉぉ!ラムーーー!」と叫びながら、渾身の力で引っ張った。すると徐々にラムの腕が出てきて、やがてラムの顔が見えてきた。そのラムの顔は、血の気が引いてまるで死人の様だった。それを見たあたるは
 「ラ、ラム!」と言うと、更に引っ張った。ラムは少しづつ姿を現し、やがて腰の辺りまで出ると一気に全身が抜け出した。あたるは勢い余って尻もちをつき、引き出されたラムは、あたるの上に覆い被さる様になった。
 あたるは急いでラムを抱き起こすと
 「おい!ラム!しっかりしろ!」と言うと、体を揺さぶった。しかしラムは全く反応をみせず、あたるがラムの心臓に耳を当てるとその瞬間、あたるの顔はみるみる青ざめ
 「心臓が……止まってる……」と呟いた。それを聞いてランは
 「え?…………嘘……ラムちゃん」と言うと、涙を浮かべた。しかしあたるは
 「俺は、諦めない!」と言うと、人口呼吸を始めた。あたるは
 「ラム!帰って来い!」と言うと、大きく息を吸いラムの口に息を吹きかける。一度、二度、三度、と続けた時
 「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」と咳き込みながらラムが息を吹き返した。あたるはそんなラムを見て、思わず抱きしめ、すぐに両肩をポンポンと叩くと?
 「良かった!良かったなぁ、ラム」と言った。ランは、そんなあたるとラムを見ていて涙を流していた。ラムは
 「ダ、ダーリン……ここは」と言うと、回りを見渡して
 「ランちゃんの宇宙船?……ウチ、戻って来れたっちゃ?」と言うと、ランが
 「そうよ、ラムちゃん。帰って来れたのよ!」と言った。ラムはあたるの方を向き
 「やっぱりダーリンが助けてくれたんだっちゃね!向こうでダーリンの声が聞こえた気がしたっちゃ」と言うと、再びあたるに抱きついた。あたるは、ラムを引き剥がすと
 「や、やめんかい!人前で!」と言って後ろを向いた。それを見てランが笑いながら
 「フフッ、ダーリンったら。ラムちゃん助けようと必死だったのよ。さっきだって、ラムちゃんに……」と、そこまで言った時に
 「わぁぁぁぁぁ!ランちゃん!」と大声を出し、ランの言葉を遮った。するとランは、クスっと笑いラムは訳が分からずキョトンとしていた。
 ランが時計を見ると、既に深夜1時を回っていた。それを見たランは
 「あぁ!もうこんな時間!夜更かしは、お肌の大敵なのよ、今日は2人とも帰って」と言って、あたるとラムの背中を押してドアの所まで連れていった。あたるは振り返り、そんなランに
 「ランちゃん、今日は本当にありがとう」と笑顔で言った。するとランは
 「ランちゃん、お礼言われる様な事してないわよ。ぜ〜んぶ、ダーリンがしたの」と言って微笑んだ。
 あたるとラムは、ランの宇宙船を出ると家に向かった。歩きながらラムが
 「ねぇダーリン」と言った。するとあたるは
 「なんだ?」と素っ気なく答えると、ラムはあたるの腕にしがみつき
 「ウチ、ダーリンと一緒になって本当に良かったっちゃ」と言った。あたるはそんなラムを見て
 (俺も、ラムが帰ってきて本当に良かったよ)と思ったが、心とは裏腹に

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