うる星やつら しのぶのストレンジストーリー(前編) (Page 2)
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 「しのぶさん、今度は自分で自分の足を見ながら動かそうとして下さい」と言って、ベッドを少し起こした。わたしは言われるままに自分の足を見ながら足を動かそうとしたが、足はピクリとも動かなかった。私は焦り、必死に動かそうとしたが私の足はまるで自分の物では無いかの様に、全く言う事を聞いてくれない。私は思わず 「さっきは、動いたのに!!」と叫んだ。すると鈴木先生は
 「さっきは、しのぶさんが足を動かそうとして脳から足を動かす命令が出ましたが、足は動いていなかったのです。でもそれを目で確認していなかった為に、脳が足は動いたと勘違いしてしまったんですよ」と言った。それを聞いた私は一瞬にして絶望感に襲われた。目からは無意識に涙が溢れ何も考えられなくなった。
 それからは、私の口数は極端に減って相づち程度しかしなくなっていた。
 母は、毎日花瓶の花を替えていた。ある日母が
 「誰かが毎日病室の前に、お花持って来てくれるのよね。面会時間外に来てるみたいで、お母さんも挨拶出来ないで居るんだけど……」と言った。私は母の話など頭に入らずただ外を見つめるだけだった。
 そんなある日、わたしがいつもの様にぼんやりと窓の外を見ていると
 「やぁしのぶぅ、元気か?」と聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはあたる君をはじめ、ラム、面堂さんと例の4人組が病室に入ってきた。私は
 「みんな…………」と言った。すると、あたる君が
 「何だ?しのぶ、元気無いなぁ」と言ったが、私はこの言葉に妙に腹が立って
 「元気無い?当たり前じゃないの!入院してるんだもの」と強い口調で言った。すると、あたる君は
 「お!いつものしのぶじゃ」と言ってニヤニヤ笑った。その笑顔を見た私は、何だか腹を立てたのがバカらしく思えてきて、苦笑いを浮かべた。それを見ていたラムは
 「しのぶ、やっと笑ったっちゃ」と言うと無邪気な笑顔を見せた。すると面堂さんが
 「しのぶさん、僕たちはしのぶさんが学校に来るのを待ってますから、1日も早く退院して下さい」と言って、笑顔を浮かべた。しかし私は、その言葉を聞き自分の置かれた状況を改めて実感し
 「ごめんなさい……私、多分もう学校行けない……」と言うと、あたる君が
 「しのぶ、何言ってるんだ?」と言ったので、私は
 「だって……私……もう歩けないんだよ……車椅子で学校になんて」と言ってうつむくと、あたる君は、それが何だ?と言う顔で
 「車椅子で来ればいいじゃないか」と言って、それを聞いた面堂さんも
 「そうですよ!学校の方は僕が責任を持って車椅子でも移動出来る様にしておきますから」と言って笑顔を作った。するとラムも
 「そんな弱気になるなんて、しのぶらしくないっちゃ」と言った。続いて4人組も 「お前が居ないと掃除の時ロッカー移動するのも大変なんだよな」等と勝手な事を言った。私は
 「何なのよ!こう見えても私はか弱い女の子なんだから」と言って笑った。
 しばらくそんな冗談のやり取りをしているうちに私の心の中の絶望感は徐々に薄れて行った。やがて、みんなが帰って急に淋しくなった私は1日でも早く病院を退院したくなり、今まで全くやらなかったリハビリも自分から頑張った。リハビリと言っても、私の足はもう動く事は無いみたいなのでベッドから車椅子に移る練習と、車椅子を上手に扱える様になる為の練習だった。
 そして、入院から2か月経って私はやっと退院する事が出来たのだ。私は、母と一緒に友引高校に行って、車椅子での在籍を希望した。普通なら設備などの問題で断られるのが大半だが、面堂さんが私の入院中に校内を全てバリアフリー化、そして階段を使えない私の為にエレベーターを設置してくれた事から、事もあっさりと許可が降りた。もともと、その辺にはヨルイ学校では有ったが、こうもあっさりと復学出来るとは思っていなかった私は、少々拍子抜けした。そしてわたしは、また友引高校でみんなと一緒に勉強できる様になったのだ。 車椅子での初登校、それは新入生で初登校する時に似た緊張感が有った。その日は、復学の初日と言う事で学校には母が車で送ってくれた。校門の所には、校長と担任の温泉先生が出迎えで待っていてくれた。その二人に紛れて何故かチェリーも一緒に居た。私はチェリーに
 「何であんたが居るのよ」と言うと、チェリーは
 「まぁ、気にするでない」と言ったので私は
 「気にするわよ!不吉じゃないの」と言った。すると校長が
 「まぁ、三宅さん。細かい事は気にせず、教室に行きましょうか?きっとクラスの皆さんも、待ってますよ〜」と言って、顔を近づけてきた。私は若干のけ反り
 「わ、わかりました」と言った。
 温泉先生は、教室に向かう途中で

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