死闘!メガネVS面堂軍団!!(1) (Page 2)
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「まあ、フィールドテストってやつを兼ねてるんだろう」
喋りながら警備員のベルトに吊るされていた鍵を使って弾薬庫とおぼしき扉を開ける、
果してその中には64式小銃の口径7,26mm、通称ナトー弾と同一の308ウィンチェス
ター・フルメタルジャケット弾が装填された20連マガジン弾倉と手榴弾が入ってい
た。残念ながら64式小銃に取り付けられる擲弾砲までは見当たらない。正門の警備と
言う任務の性格上か手榴弾も攻撃型や破壊型は見当らず、殺傷力が無く音響と閃光で敵
の戦闘能力を一時的に奪うタイプの物であった。
銃の右側に有るセレクターレバーを「ア」に合わせ、引金の前にある弾倉室にマガジン
弾倉を装着する。
ちなみに64式自動小銃のセレクターレバーは安全装置とセミオート射撃、フルオート
射撃の切り替えを兼ねていて、「ア」「タ」「レ」とカタカナで表示されている。それ
ぞれ安全、単発、連発、の頭文字であり、的に「当たれ」とのオマジナイと言う訳では
無い。
64式小銃の操作方法を説明して銃をパーマに返す
先程の騒ぎで銃架から床に落ちた銃を拾い集め、同様に薬室が空である事を確認し安全
装置を掛けてからマガジン弾倉を差し込んでいく。パーマは戦闘服のポケットや腰の弾
帯のパウチに弾倉や手榴弾を差し込み、残りをバックに詰め込んでいる。
私もパーマに倣い腰部アーマーの内側の小物入れに予備弾倉と手榴弾を差し込んだ。
「おい、こっちは終わったぞ」
警備員を縛り上げていたあたるが声を掛けてきた。
「ああ、こっちも準備出来た。そろそろ行こうか。おい、チビ起きろ」
気絶しているチビを揺り起こす。
「ウーン、朝ご飯はいらないから、もう少し、もう少しだけ寝かせて・・・」
寝ぼけた生返事をして起きる気配が無い。
「ダメだ。気持ち良さそうに寝てやがる」
「なら、俺が運ぼう。ところでメガネ、敵の本拠地って何所だ」
カクガリが軽々とチビを肩に担ぎ上げるとまたも現実的な問いを発する。
私は警備員の口を割らす事を忘れ、答に窮した。
「何度か行った事のある洋館だろう。面堂の奴はあそこで寝起きしている筈だ」
あたるの台詞で以前に面堂が僕所有の洋館がドウのコウのと自慢げにラムさんたちに話
していたのを思い出した。
「そ、そう、目標はその洋館だ」
「作戦担当はお前なんだからシッカリ頼むぜ」
いつの間にか私が作戦担当に成っていたらしい。
「お前、本当に分かっていたのか」
疑わしげに聞いてくるカクガリにパーマが、
「まあまあ、犀は洟垂れたんだから」
「それを言うなら、賽は振られた。矢は放たれただろう」
パーマの駄洒落に毒気を抜かれたカクガリはそれ以上の追求を止めて歩き出す
「そうとも言うな、さあ行こうぜ・・・ん」
カクガリに続き外に出たパーマが何かを見つけ詰所の裏手にまわると手招きをする。
そこには、戦車が一両蹲っていた。
「レオパルド1A4か、丁度いい戴いちまおう」
戦車の操縦は初めてだが、何所かに少々ぶつけて壊れる代物でもあるまい。
「メガネ、俺はここで別れる」
あたるは唐突に別行動を取ると言い出した。彼の目線を追うと、戦車の陰で気が付かな
かった一人乗りの小型ヘリを見つめている。どうやらそれを使う気らしい。
「いいだろう。二班に別れれば一方が駄目でも、もう一方に希望を託せる」
そして口には出さないが一方が敵を引き付ける陽動作戦に成るかも知れない。
もっともどちらが囮に成るかは運しだいだが、囮の危険は増す事になる。
「あー、何だって」
ヘリに乗り込む寸前にあたるの放った台詞は、レオパルドの830馬力、10気筒水冷デ
ィゼルエンジンの始動音によってかき消され、
「メガネ・・・。し・・・」
までしか聞き取れなかった。
問い掛ける私に笑顔だけを残してあたるの操縦するヘリは軽々と舞い上がり夜空に消え
ていった。

戦車の乗り心地がこんなに悪いとは知らなっかった。
「もうちょっと静かに・・」
「しょうが無ーだろ。戦車なんだから」
ドライバー席のパーマ以外は皆青白い顔をしてうめいている。
「おい、もう少しマシな道を走ろうか。地図で調べてくれ」
パーマの提案でバックの中から地図を取り出し進路を検討する。
「この先からゴルフコースに入ろう、見つかる危険は増すかも知れんが最短コースだ」
「了解」
パーマは手渡した地図を一瞥するとレオパルドをゴルフコースに乗り入れさせた。
まったく私有地の中にゴルフのフルコースが有るとは許し難い。我が父は接待と称して
ゴルフに行く事は有る様だが、当然会員券は持っていまい。
私は将来ゴルフと言うスポーツだけは終いと誓っている。
起伏が穏やかで、整地された柔らかい土の上に芝まで敷き詰めたフェアウエーは戦車で
走行するには快適な地形であった。
もっとも今通り過ぎたグリーンはもう使用不能だろうが知った事では無い。
コースに沿ってコナーを曲がった所で突然パーマは戦車を止めた。
「どうした」
「外を観てみろよ」

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