死闘!メガネVS面堂軍団!!(1) (Page 4)
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「そうと決まったら急ごう。いつ面堂が出て来るか分らん」
私たちは林から出て植え込み伝いに姿勢を低くして走った。
キューベルワーゲンは右側面を向けて止まっている、私はエンジン部を狙撃しやすい様
に噴水から左のバラの植え込みにむけ匍匐前進で忍び寄る。
パーマとカクガリも右側の植え込みにたどり着き今頃は手榴弾を握り締め何時でも投げ
られる様にしているだろう。
今潜んでいる植え込みから標的までは30m程だ、これ以上近付くのはさすがに無理で
あろう。
64式小銃の折りたたみ式の二脚を引き出し伏射のスタンスをとり、セレクターが
「ア」である事を確かめてからコッキングレバーを引き装填時の音が出ないようにスプ
リングの力に逆らってゆっくりと遊低を閉じていく。
前進する遊低に押され弾倉上端の実包が薬室に送り込まれる、静かに遊低を閉めたため
完全に閉じ切らない薬室を掌で叩く様にコッキングレバーを押して完全に閉じる。
試射をしていないので正確な着弾点が分らないのが不安だ。仮にこの銃のサイトインが
200mの中距離射撃用に合っているとした場合、発射された弾丸は放物線をえがいて
飛ぶから銃口から40m付近で一度射線と交差してその後は射線の上を飛び200mで
再び射線と交わる。また50mの至近距離射撃用に合わせてあったとしたら30mの距
離では理論上はやや下に着弾するが実際は正照準で狙っても支障は無い範囲であろう。
第一私の射撃の腕前と銃の精度が理論と計算に追い付かない。
しかし、精密射撃には向いていない軍用銃とはいえ30mはライフルに取って超が付く
至近距離だ。オフロード用の巨大なタイヤを狙って当たらない方がどうかしている、仮
に万一外してもエンジンルームを貫くだろう。多少のずれは初弾の着弾点を見て狙点を
修正すればすむ。
「・・・犬を使って辺りの探索を続けろ。それから速やかにラムさんを安全な場所に御
連れするんだ。そうだヘリを使え」
部下のサングラスに命令を下しながら迷彩服姿の面堂が出てくる。どうやら前線に出て
自ら指揮を執る気らしい。
サングラスの差し出したトランシーバーを受け取りながらキューベルワーゲンの後部座
席に乗り込む。
セレクターを「タ」に切り替えタイヤを狙う・・・が、照門に照星が入ってこない。ア
ーマのせいで銃の肩付けが悪いのか、フェースガードが邪魔で頬付けが上手く出来ない
のか、色々スタンスを代えてみるがやはり照星が入らない。
「終太郎だ。ヘリを一機洋館に向わせろ」
銃身を見るとフロントサイトが倒れていた。
「・・・いや、僕じゃない。あの方を非難させる。・・・そうだ、くれぐれも粗相の無
いように気を付けるんだ」
毒づきながら慌ててフロントサイトを起こし再び狙いを定める。
と、今度はリアサイトが倒れている。
撃つに撃てずに焦っている間にキューベルワーゲンが動きだした。
カンを頼りにフルオート射撃に切りかえて走り去る車を撃とうかとも考えた。
確かにリアマウントエンジンのキューベルワーゲンを止める事は可能だろうが、面堂が
被弾する確立も高い。
私は狙撃を諦め銃をおろした。
面堂の乗った車は建物の裏手から走り出て来た数台のオリジナルカラーのキューベルワ
ーゲンや水陸両用のシュビムワーゲンを従えて走り去って行く。
「おい、なぜ撃たなかった」
「何かあったのか」
面堂を見送ったサングラスが館内に消えてからパーマとカクガリが忍び寄ってくる。
「すまん。銃のトラブルで撃てなかったんだ。俺のせいでチャンスを逃しちまった」
自分で言うのも何だが銃器や戦闘に関する知識はある程度は持っている。いや、つもり
だった。しかし若さゆえの経験不足は如何ともし難い。それがコンナ形で出てくる。
「そんなにショゲルなって」
「まあ、別の手を考えれば良いさ」
ほんとにいい奴らだ。
二人は私を責める事無く逆に励ましてくれる。
「うむ・・・。ところで今の面堂の会話を聞いたか?」
「ああ、ラムちゃんはココに居るらしいな。だがヘリで他所へ移すって言ってたぞ」
「メガネ、こうなったら実力でラムちゃんを救い出そう」
危険ではあるが、下手な索を練るより有効かもしれない。それに面堂の居ない今の洋館
内の警備は手薄に成っているはずだ。
「ああ、それしか無いだろう。その上でヘリを奪って一気に逃げるんだ」

洋館への進入口は意外と簡単に見つける事ができた。
桜の大木が窓の開いた二階のバルコニーに向け太い枝を張り出している。
何かの罠かとも考えたが、我々がココ迄たどり着いているのは未だ気付かれていないは
ずだ、それに面堂の奴は探索に犬を使うと言っていた。グズグズしていては危険だ。
再びカクガリを踏み台にして私とパーマが木に登り、カクガリに手を差し出す。
「もう少し引き上げてくれ」
「重いなぁー、もう少しやせろよ」
「ウルセイ、お前もソンナ甲冑を着けて一人で登れ無かったくせに」
「二人とも静かにしろ、見付かるぞ・・・」

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