BD2 夢の未来 (Page 2)
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サクラはあたるに一言いうと夢邪鬼に鋭い視線を向けた。
「おぬし、何ようで我らを夢に迷い込ませた?」
「にゃははは、ちょっとあんさん方に解って貰いたいことがあるさかい、ほんじゃま」
夢邪鬼は背を向けると部屋を出ようとした。すると、夢邪鬼の目の前にきらりと鈍く光る刀が横から突き出てきた。
「まあ、待て、そう急ぐこともなかろう」
汗を垂らし、夢邪鬼はふるえながら面堂を見た。
「はっ・・・ははは・・・、兄さん、げ、元気でしたか?」
「おかげさまでな。今度は前みたいには逃がさんぞ。おとなしくお縄をちょうだいしろ」
「あんさんみたいな若造にはまだまだ負けまへん」
あくまで強きの夢邪鬼に面堂は刀を振り上げた。目の前の刀が消え、夢邪鬼は刀の届かない空中までくると、右手の人差し指を面堂に向けた。
「ほな、さいなら」
しかし面堂に魔法がかけられることはなかった。あたるが後ろに木槌を直撃させたからだ。
夢邪鬼のサングラスには星が点滅している。

夢邪鬼はしめ縄でぐるぐるぐる巻きにされ、身動きがとれなかった。
「なにさらすんじゃ、ボケ!!はよ、縄を解かんかい!!」
じたばた暴れるが無駄な抵抗である。
「縄を解けといわれて解くやつがどこにいる?」
面堂は刀のさやの先で夢邪鬼のアゴくいくいっと突っついた。
「さあ、話して貰おうか・・・」
「誰が話すかい、ボケ」
バキ!みし!ベン!
「話せば長い事ながら・・・」
「短く話せ」
夢邪鬼の頭の上には顔の大きさを越えるたんこぶと木槌が乗っていた。サングラスはすこしばかりひびが入っている。
「わいは人に夢見せるのに飽きて、ラムさんの夢の中でのんびり暮らしとったんや」
「貴様!ラムさんの夢の中に巣くっていやがったのか!!」
次はメガネが夢邪鬼に天誅を与えた。夢邪鬼の顔は木槌なり刀なりで、でこぼこしていて、元の顔が解らなくなった。
「あれ以来、あんさん方は、相変わらず、自分たちの世界を現実だと信じて止まへんかった。
わいは、信じられんかった。あれだけの夢を見せて、それでもなお、今を現実だと信じるあんさん方を・・・」
夢邪鬼は落ち着いた口調でしゃべりはじめた。顔は相変わらず、ぐちゃぐちゃではあるが・・・。
「なぜや、なぜ、現実を信じようとするんや、それが心んの中でその疑問がわいてきたんや」
「何事にも前向きに考える、それが俺たちにポリシーだ」
「そんなんはただのアホなだけや」
「なにー!?」
メガネは木槌を振り上げた。しかしそれを面堂が止めた。
「落ち着けメガネ、事実だ」
メガネはは木槌を振り上げたまま、体の向きを面堂の方向に変えて、そのまま振り下ろした。
「ぐわ!!」
「何が事実だ。さあ、話を続けろ」
夢邪鬼はしゃべりたくなかった。言うこと言うことにあたるとメガネが反応し、自分に襲いかかるからだ。
だが、しゃべらなければ、それで天誅が下される。多少の術もしめ縄で力を封印され、まさにとらわれの身である。
「それで、夢と未来をつないだらどうやちゅう、考えが浮かんだんや。ちょうど未来もあんさん方の
アホのせいで戦争が起きてましたからな。そんでわざわざ未来まで行って、そこで戦ってる死にたくない、ここから
逃げ出したいという兵隊さん方を夢の中に誘いこんだんや」
「それで現実逃避をさせたと言うことか?」
サクラが髪を後ろで束ねながら聞いた。
「そや。まあ、ここでも結局は戦わないかんから、現実逃避にはなってませんけどな。ただ、夢ん中やから
死への恐怖が無いんやさかい、そこら辺が心理状態を安定させてますけど・・・」
するとあたるはメガネにひそひそ話で話し始めた。
「なんか、話題がずれてないか?」
たしかにそうである。あたるたちは最初、なぜ自分たちをここにつれてきたのか、それを最初に聞いたはずである。
だが、今は未来の兵隊たちを夢に誘い込んだ話になっている。どうでも良いことではあるが、なぜかあたるは気になった。
「まあ、たしかにそうだが。そんなこと、どうでも良かろう」
夢邪鬼はサクラに話を終わらせたらしく、サクラは何か考えた様子だ。
するとサクラは口を開いた。
「まあよかろう。では、我らを元の世界に戻して貰おうか?」
「したくても、できへんがな。しめ縄を解いてもらってへんのやから・・・」
するとサクラはため息をついて、夢邪鬼の後ろに回り込むと縄を解き始めた。縄を解けば、夢邪鬼はまた何かするに違いない。
そう思ったあたるはそれを止めようとだめだっとさけぼうとした。が、口を開く頃には縄はもうサクラの手で束ねられていた。
「は、はやい・・・」
メガネは夢邪鬼を逃がしてはならないとあたると同じ危機感を感じていたが、サクラのあまりにも早い縄解きに感心させられてしまった。
「さあ、我らを元の世界に戻して貰おうか」
すると夢邪鬼は怪しい笑い声をあげた。
「やっぱり姉さんも若すぎや。わいが、そう簡単に逃がすとでもお思いですか?」
「しまった!罠か!」
サクラは大声を上げた。

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