Welcome To Another World(Chapter 14&15&16) (Page 3)
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そして身を挺して自らをかばってくれたあたるへの想いを募らせていた。
「フィリップ!メリッサ!お前たちの野望もこれで終わりだっちゃ!!いっけェーーーッ!!」
こう叫んだ瞬間、ラムの両腕から彼女の渾身の力を込めた電撃が放たれた。
「う・・・うわああああ!!」
フィリップはその凄まじさにおののき、思わず悲鳴を上げた。しかしこの直後、
正気に戻ったこの男は信じられない行動を取った。
「フィ、フィル!!何するのよ!?」
何とこの男は、事もあろうにメリッサを、革命の同志を、まして自分の婚約者を盾にしたのだ。
「フィル!!やめてぇ!!離してえーーーっ!!あああーーーっ!!!」
背中から両腕を押さえられた彼女は必死にもがいたが、所詮男の力にはかなわなかった。
フィリップの盾となったメリッサはラムの電撃をまともに食らってしまった。
「ハア・・・ハア・・・」
ほとんどのエネルギーを使い果たして息遣いの荒くなったラムが空を見てみると、
そこには無残にも黒こげとなったメリッサと、そのメリッサの後ろに隠れて助かったフィリップの姿があった。
フィリップが手を離すと、メリッサはまっさかさまに墜落した。彼女が生きているはずがなかった。
その無様な姿を見てラムは、いくら自分がやったこととはいえ、いくら憎い敵だったとしても、
こんな死に方をされては、罪悪感のようなものを感じずにはいられなかった。
それと同時に、自らが生き延びるためには、婚約者さえも平気で犠牲にするフィリップの厚顔無恥な態度に、
ラムは胸のうちに湧き出す激しい憤りを抑えることができなかった。
不思議なことだが、メリッサのためにも何としてもこの男を倒したいと言う気持ちで満たされていった。
「フィリップッ!!お前一体どこまで性根が腐っているっちゃ!!
自分の妹ばかりか、妻になるはずだった女まで殺すなんて・・・!!」
「関係ないな。オレは何よりも自分の命のほうが大切なんだ。それに、目的達成のためなら犠牲は付き物だろうが」
「お前みたいな・・・お前みたいな外道は・・・このウチが絶対に許さないっちゃ!!
このウチが成敗してやるっちゃ!!」
「フン!強がるのもいい加減にしろ!!お前は今の攻撃でもう力を使い切ってしまったはずだ!!
今のお前にこのオレは倒せん!今度こそこの爪の餌食にしてくれるわ!あの男のように!!」
ラムとフィリップはほぼ同時に電撃を発した。しかしラムの電撃はもはやパワーが弱まっていた。
Chapter 16 破鍋に綴蓋
その頃あたるたちは、ラムとフィリップが放った電撃がぶつかり合う音が聞こえるところまで来ていた。
「きゃあーーーーっ!!」
そのあまりに凄まじい衝撃波で、ランとお雪の乗ったバイクは吹き飛ばされた。
「ぐっ!ぐうう・・・お雪さん!!ランちゃーん!!」
あたるも吹き飛ばされるまいと空中で必死にこらえた。程なくして衝撃波は収まった。
あたるがお雪たちのほうを向こうとしたとき、彼は心に虫の知らせを感じた。
(・・・ラム!)
頭の中でそう呟くと、彼はなりふりかまわずラムとフィリップが戦っているほうに飛び立った。
その途中で、彼の脳裏にラムとの様々な思い出が走馬灯のように甦ってきた。
ラムと初めて出会ったときのこと、一緒に暮らし始めたばかりの頃のこと、
クリスマスイブの夜のこと、突然ラムが自分の前から姿を消したときのこと、
ラムをめぐり面堂と対決したときのこと、2度目の鬼ごっこで再びラムの角と心を掴んだときのこと・・・
そして2日前の学校からの帰り道のときのラムの言葉・・・
「ねえダーリン、もしもウチが死んじゃったら、悲しいっちゃ?」
あたるは今、その言葉の意味を痛いほどに噛み締めていた。
「ラムーーーッ!死ぬなよ!!」
あたるの空を飛ぶスピードはさらに増した。
「ダ、ダーリン!待ってよお!!」
それから少し遅れて、ランの運転するバイクが、彼の飛んでいった後をそのまま通り過ぎていった。
「でやあああーーーーっ!!」
「きゃああーーーーっ!!」
あたるの虫の知らせは気のせいではなかった。その頃ラムは、電撃も満足に放てないほど疲れ切っていた。
白兵戦の苦手なラムの唯一の武器である電撃を使えなくなったラムは、
フィリップの容赦ない攻撃の前になされるがままになっていた。
フィリップは明らかに、ラムを今すぐ一思いに殺そうなどとは考えていなかった。
「最後の」スーペリオル族であるラムを、徹底的にいたぶりつくし、できるだけ惨めな様で死なせよう、
フィリップが電撃を威力を弱めて放っている姿が、そう言っているように思えた。
「へへへ・・・ついに、ついにこの瞬間が来たんだ・・・!スーペリオル族がこの宇宙から消えてなくなる瞬間が・・・!!」
仰向けに倒れたラムを見下ろしながらそう言い放つフィリップの表情は、もはや完全に「イッて」しまっていた。
しかし、ラムはまだ諦めてはいなかった。
(ウチがここで死んでしまったら・・・何のためにダーリンはウチのことを守ったっちゃ・・・
何のために弁天や竜之介、それに終太郎は協力してくれたっちゃ・・・

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