それでもペアルックしたいあなたのために (Page 3)
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「ダーリン!どうして逃げ・・・!!」
逃げ去るあたるのほうを向いて叫んだラムは、自分の体が妙に軽くなったような気がした。
「あっ!」
ラムは気づいた。自分の着ていたはんてんが脱がされており、手に持っていたはんてんも奪われていることを。
「ラムちゃん・・・追わなくていいの・・・?」
呆然としていたラムに、ランは忠告した。するとはっと気づいたラムは大慌てであたるの後を追いかけた。
「こらぁーっ!まてェ!!」
放電しながらラムは叫んだ。
(フッ・・・勝った)
立ち去るラムの背中を見つめながら、ランは小さくガッツポーズをした。
「ニャハハ・・・いい物を手に入れたわい!これさえあれば・・・!!グフフ・・・!!」
いやらしい笑いを浮かべ、あたるは学校に猛ダッシュした。彼の目にしのぶとサクラの姿が映った。
「おはようございまーす、サクラ先生」
「おお、しのぶか。おはよう」
挨拶を交わした後、2人は邪気を背中のほうに感じた。
「おっはよー、しのぶー、サクラさーん!」
あたるは手に持っていたはんてんをしのぶかサクラのいずれかに着せようとした。
しかし、そのどちらにもかわされた。あたるは芸人のように思い切り倒れた。が、すぐに起き上がった。
「何じゃ、諸星・・・その面妖な格好は・・・?」
悪趣味な柄のはんてんを着たあたるを見て、サクラはこう聞かずにはいられなかった。
「まあお二方。お茶でも飲みながらオレの話を聞いてくれ」
あたるはそう言って、お茶とお茶菓子を2人に差し出した。そこにはいつの間にかござが敷かれていた。
「こんなもの、今までどこにしまっていたの・・・?」
あたるはしのぶのこの問いかけは無視して、はんてんの話を始めた。
「・・・ほう、縁結びペアはんてんとな」
話を聞き終わったあと、あきれたような声でサクラはそう言った。
「フッ・・・まったくラムの奴・・・発想に進歩がないったらありゃしな・・・」
「人のことが言えるっちゃ!?」
このように激怒して、ラムはあたるに電撃を繰り出したが、あたるは間一髪かわした。
「へへーんだ!そういつもいつもお前の電撃を食らうオレじゃないわい!!」
「待つっちゃ!ダーリン!!」
校舎に逃げ込むあたるを、ラムは電撃を出しながら追いかけた。
「よくもまあ、毎日毎日飽きもせず・・・やってくれるわよね・・・」
「似たもの同士じゃ」
しのぶとサクラは、遠ざかる二人の背中を見ながら、あきれ返った。
あたるはラムの追跡を逃れ、階段の下のスペースに隠れた。
「ふー、ようやく撒いたか。まったくラムの奴、しつこいったらないぜ」
呼吸を整えようとするあたるに、きゃーきゃー話をする女生徒の声が聞こえてきた。どうやら3人いるらしい。
「・・・てゆーか寒くない?もう4月だよ」
「ホント。うちなんかあわててコタツをまた出したんだよ」
「そんなの普通だよ。うちなんかストーブまで・・・」
確かにこの日は4月だというのに、やけに寒かった。お天気お姉さんも風邪でリタイアし、代わりの人が出ていた。
「これを・・・はおりたまえ」
あたるは3人の横にすっと現れ、おもむろにはんてんを差し出した。
「な・・・なにこれぇー・・・!!チョーグロいんだけどー!!」
「あっ、これあたし見たことあるー!これ花札の牡丹だよー絶対!このどすピンク色やばいってマジで!!」
「背中もマジでひどくない?一富士二鷹三なすびて親が言ってたけどさー・・・これはないでしょー!」
「うっわ、これラメ入ってんじゃーん!!それにこの七色・・・もしかしてこれ虹かも!?こんなの今どき漫才師だって着ないってー!!」
予想通り評判は最悪だった。しかしあたるは諦めなかった。
「季節の変わり目は風邪ひきやすいんだよー!そうならないためにボクとペアで着ようよー!!」
あたるははんてんを持ったまま3人を追いかけた。
「やぁーだー!!こんなの絶対やだぁー!!」
3人は必死に逃げた。
(くっそー!予想通りじゃ!やっぱりこの柄は今どきのコギャルの感性には合わん!!)
追いかける途中であたるがそう考えていると、頭上から巨大なハンマーが降ってきた。
「悪あがきはよすっちゃ!」
そのハンマーを使ったのはラムだった。
「し・・・シティーハンターの槇村香か、お前は・・・」
ハンマーの下敷きになったあたるは思わずそう呟いた。
「そういうダーリンはさしずめ冴羽リョウなんじゃないの?さあ、はんてんは返してもらうっちゃよ!」
そう言うとラムはあたるの手からはんてんをぶん取り、それを再び着た。しかしあたるは着ていたはんてんを脱いでしまった。
「・・・どういう意味だっちゃ・・・!?」
「フンッ」
あたるはラムを残し、教室に向かった。
(ダーリンめ・・・だったら・・・いやでも着たくなるようにしてやるっちゃ)
そう言うと、ラムは作戦に必要なものを取りに、いったんUFOに戻った。
ラムが戻ってきて数分後、2年4組内には猛吹雪が発生していた。
「寒いっちゃ〜、寒いっちゃ〜!!」
ラムは巨大人口吹雪発生装置で、あたるにブリザードをお見舞いしていた。

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