それでもペアルックしたいあなたのために (Page 5)
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「おーい、ガードマン。今から電柱倒すから、人が入って来ないようにしといてくれや!」
「了解!」
現場監督風の男にそう言われると、年配のガードマンは応答した。
「じゃあ倒すぞー!一斉のーせー!!」
作業員たちがそう叫ぶと、電柱はにわかに倒れ始めた。そこにはんてんが飛んできた。
「あーっ!!」
このままでははんてんが下敷きになって破れるかもしれない。そう思ったラムはガードマンの横を大急ぎで通過した。
「おいっ、君!危ないぞ!!」
(ダーリンの・・・ダーリンのはんてん・・・)
ラムの目にははんてんしか映っていなかった。ガードマンの制止を無視し、ラムは電柱の下に飛び込んだ。
(ラ、ラム!あ、あのバカ!!)
今まさに電柱の下敷きになろうとしていたラムを目の当たりにしたあたるは、大慌てでラムの救出に向かった。
「でやあっ!!」
あたるは間一髪のところでラムの救出に成功した。しかし横っ飛びをしたあたるの足元には、どぶ川が広がっていた。
空を飛べないあたるは、まっさかさまに川に落ちた。4月にもかかわらず、川の水はまだ冷たかった。
「ハックション!」
川から何とか自力で這い出したあたるは、くしゃみを連発した。
「あ・・・ありがとうダーリン。ウチ・・・嬉しいっちゃ・・・」
目を潤ませながら、ラムは感謝の気持ちをずぶぬれのあたるに伝えた。
「何か羽織らないと毒だけど・・・」
はんてんを手に大事そうに持ったまま、ラムは横目であたるを見て申し訳なさそうに言った。
「か・・・貸せえ!!オレは寒いんだぁっ!!」
あたるはラムの手からはんてんをぶん取り、それを着た。
「ダーリン・・・ウチ・・・ウチ・・・幸せだっちゃ!」
ようやくはんてんを着てくれたあたるに、ラムは心から喜んだ。
「フンッ。オレは寒いっちゅーの!」
ふてくされた様子で返事したあたるがはんてんを着たのは2つの理由があった。
1つは実際に寒かったから。もう1つは、ラムが自分にはんてんを着せたいがために向こう見ずな行動を取ったのを見て、
このまま自分が意地を張り続けたら、ラムがどんな目に遭うか心配で見てられないと思ったからである。
しかし、彼の動機がどんなものであったとしても、第三者には彼がはんてんを着たことで使用者ラムが幸せになったとしか映らない。
「幸せだっちゃ・・・幸せだっちゃ・・・」
そう連呼するラムの姿は、テレビショッピングのカメラにしっかりと収められ、テレビで放映された。
「へぇー、あれってインチキじゃなかったのね。念のため買っておいてよかった・・・」
テレビを見ながら、ランは胸をなでおろした。実はこのペアはんてん、あまりの人気のため、あっという間に売り切れてしまったのだ。
「フッフッフ・・・これで明日のデートはばっちりじゃ。レイさんのハート、ゲットじゃあ!!」
こう叫んだ後、ランは高笑いをした。
翌日、ランはレイとともに亜空間にある恋人岬にいた。
「レイさん・・・今日はあなたにプレゼントがあるの・・・受け取ってちょうだい」
大きな白波を眺めていた色男バージョンのレイは、ランからはんてんを受け取ると、それを広げた。
しばらくの間食い入るようにそれを眺めた後、レイは虎牛に変身した。そしてあろうことか、それを食べようとした。
「あーん、レイさん!それは食べちゃダメぇー!」
あたりにランの叫びがこだました。
The end
Toshio
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