うる星やつら regain one's memory エピソード8 (Page 5)
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因幡 「あたるさん!頑張って下さい!応援してます」と言った。あたるは、因幡に小さく頷くとゆっくりとドアを開いた。するとそこは、見覚えのある街並みだった。友引町・・・どこも変わった所は見られず、とても未来とは思えなかった。不審者あたるは、とりあえず自分の家に向かった、家に行けば少しは現状が解るかもしれないと思ったのだ。日も少し陰ってきて辺りもだんだん暗くなって来た。不審者あたるは、庭の木に登り太い枝の上で自分の部屋を覗いてみた。部屋は真っ暗で人の気配はない、あたる自身もラムも居ない様だ。しばらくすると誰かがあたるの部屋の窓の所に飛んできた。もちろんラムである。不審者あたるは
不審者あたる 《ラム・・・》と小さい声で言った。不審者あたるはラムの姿を見てそこが未来だと確信した。ラムは、幼さも消え大人っぽく見えた。歳は22~23くらいだろうか、その姿を見た不審者あたるは一瞬ラムの成長した姿に目を奪われた。しかし、ラムの表情を見てすぐに我に返った。その表情はどこか陰りが有り、あたるの知っている天真爛漫なラムの顔ではなかったからだ。
不審者あたる 《ラムのあんな顔、今まで見た事ない》不審者あたるは、ボソッと言い更にラムを観察した。ラムは、部屋に入ると部屋の中央にちょこんと座った。様子からすると、テンはもう一緒に暮らしていないらしく、この部屋にはあたるとラムだけみたいだ。
 外は、すっかり暗くなった頃慌ただしく玄関のドアを開け「ただいまー」と家に入る者がいた。もちろんあたるである。あたるの声を聞いた瞬間、ラムの顔に輝きが戻った。ラムは、ヒョイと立ち上がると部屋のドアの前に行った、するとドアが開きあたるが入ってきた。ラムは
ラム 「ダーリンおかえりー♪今日も、お疲れ様だっちゃ」と満面の笑みであたるを迎えた。あたるは
あたる 「あぁ、ただいま」と、少し素っ気ない態度でスーツを脱ぐと、ラフな格好に着替え始めた。それを見てラムは
ラム 「ダーリンお出かけ?もうすぐ夕飯だっちゃよ?」と、言った。するとあたるは
あたる 「あぁ、俺はこれから会社の人と飲み会だから夕飯はいらないって母さんに言っといて」と言うと、「行ってきまーす」と勢い良く飛び出して行った。
残されたラムは、うつむいたまま暫く動かなかったが、やがてゆっくりと夜の空に飛んで行った。ラムが飛び去る時、不審者あたるはラムの目に光るものをみた。
不審者あたる 「ラム・・・俺は、何をやってるんだ!」不審者あたるはそう言うと出て行ったあたるの後を追いかけようとしたが、さすがあたる本人だけあって見失ってしまった。不審者あたるは
不審者あたる 「さすが俺、未来でも自慢の脚は健在か」と言うと諦めて家に戻った。ラムはUFOに行ったらしく、あたるの部屋には誰も居なかった。不審者あたるは自分が帰って来るのを待ってるうちに眠ってしまったらしく、目を覚ました時には飲み会に行ったあたるも帰宅していて、高いびきで寝ていた。そんな未来の自分に無性に腹が立った不審者あたるは、部屋に入り蹴り飛ばしたい衝動にかられた。不審者あたるが自分の部屋に忍び込もうと木の枝から飛び移ろうとした時、ラムが戻って来たので慌ててもと居た場所に戻ると、ラムは気付かなかったらしく部屋の窓を開け中に入った。ラムは、あたるの布団の横に座りあたるが剥いだ毛布をそっと直した。そしてラムは
ラム 「ダーリン・・ダーリンはもう、ウチの事好きじゃないっちゃ?」と言うと淋しそうな顔をした。あたるは、酔っているせいか相変わらず高いびきだ。ラムはそんなあたるに話かけた
ラム 「ダーリン、実は最近ずっと父ちゃんから星に帰って来いって言われてるっちゃ」と言った。枝の上で様子を見ている不審者あたるは
不審者あたる (なに!)と思った。ラムは寝ているあたるに話し続けた
ラム 「でも、ウチはダーリンが好きだっちゃ・・・」突然ラムの言葉が止まった。ラムの目からは涙が溢れている。枝の上のあたるは
不審者あたる (ラム・・ラムのあの様子だと、うまく行ってないのか?俺達)と思い、更に観察を続けた。再びラムが口を開いた
ラム 「ダーリン、ウチもう分からなくなったっちゃ。どうすればダーリンと幸せになれるのか・・ダーリン?ウチが居たら邪魔だっちゃ?」ラムは、寝ているあたるにそう問いかけた。それを聞いた不審者あたるは
不審者あたる (邪魔なわけなかろーが!)と思った。しかし、あたるは一向に目を覚ます気配はない。ラムは
ラム 「ダーリン、もっとウチの事を見て欲しいっちゃ・・・」と言うと、あたるの頬に軽くキスをして
ラム 「おやすみ・・・」と言い再び夜の空に姿を消した。不審者あたるは、言い知れぬ怒りと悲しみ、そして自分自身に対する情けなさでいっぱいだった。

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