うる星やつら regain one's memory エピソード8 (Page 7)
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不審者あたる 「ニャーゴ」と猫の鳴き真似をしたが、急に声を出した為に声がかすれて、違う生き物の鳴き声の様になってしまった。それを聞いたラムは
ラム 「な〜んだ、タヌキだっちゃね」と言って、再び部屋の中に戻った。不審者あたるは
不審者あたる 《タ、タヌキはないだろ、確かに下手では有ったがタヌキでは無かった》と、悔しそうに呟いた。ラムは、まだ部屋であたるを待っている様だ。時おり袋の中を見て、ニコニコしている。時間は、既に10時を回った
ラム 「ダーリン早く帰って来ないかなぁ♪」ラムはそう言いながら、あたるの帰りを待ちわびている様だ。その時、不審者あたるは玄関の辺りに人の気配を感じて、ふと見てみるとあたるが帰宅した所だった。あたるは、玄関のドアを開けると
あたる 「ただいまー」と言った。その声はラムにも届いたらしく、ラムは立ち上がると袋を自分の後に隠し、あたるを待った。程なく階段を上がる音がして、部屋のドアが開きあたるが顔を出した。ラムは
ラム 「ダーリン、お帰り〜♪お疲れ様だっちゃ」と言った。するとあたるは
あたる 「あぁ、ただいま」と昨日とまるで同じ対応だったが、ラムは気にせず
ラム 「はい!」と言って後ろ手に持っていた袋をあたるに渡した。そして
ラム 「ダーリン、誕生日おめでとうだっちゃ♪」と、満面の笑みを浮かべた。それを見てあたるは
あたる 「あ、今日俺の誕生日か」と言って、ラムのプレゼントを受け取ると
あたる 「ありがとうな、ラム」と言って、袋から中身を出した。それを見ていた不審者あたるは
不審者あたる 「この世界では、今日は4月13日、俺の誕生日だったのか」と言った。一方あたるが袋の中から取り出したのは、オシャレなサマーセーターだった。見た感じだと、どうも手編みみたいだ。ラムが、あたるの為に編んだのだろうか?しかし、不審者あたるの知っているラムの手編みのデザインでは無かった。サマーセーターを広げてマジマジと見つめるあたる。セーターであたるの顔が見えないラムは、覗き込む様にあたるを見て
ラム 「どうだっちゃ?ウチ、ダーリンの好みに合う様に頑張って編んだっちゃ」と言った。それに対してあたるは
あたる 「うん、お前にしてはいい出来だな」と言った。するとラムは
ラム 「本当だっちゃ?やったー!」と言ってピョンピョンとジャンプした。それを見てあたるは、そのセーターをハンガーに掛けて
あたる 「じゃぁ、俺はちょっと出掛けてくるから、お前は寝てていいぞ」と言った。ラムは
ラム 「え?出掛けるって、今からだっちゃ?」と言った。するとあたるは
あたる 「あぁ、ちょっとな」と言って部屋を出た。ラムは部屋を出るあたるに
あたる 「ダーリン、何処行くっちゃ?最近全然ウチと一緒に居てくれないっちゃ。どうしてだっちゃ?」と言ったが、あたるは聞こえなかったのか玄関のドアを開けて出て行ってしまった。不審者あたるは、すぐにあたるの後を追った。不審者あたるは、あたるがラムから貰ったセーターを広げた時に、あたるの目に光るものを見逃さなかった。
不審者あたる 「あれは、絶対涙だ。ラムから貰ったセーターは涙が出るほど嬉しかったのに、それを見せないのは自分の事だから理解出来る。しかし、その後に出掛けるのは何か理由が有るとしか思えん」そう言いながら見失わない様に、慎重に後をつけた。するとあたるは、あるビルに入って行った。テナントがいくつも入っているビルで、あたるが何処のテナントに入ったかは、見当が付かない。不審者あたるは、仕方なくあたるが出てくるのを待つ事にした。あたるは思いのほか早く出て来た、右手には何か段ボール箱を持っている。不審者あたるは
不審者あたる 「なんだ?あの箱は?駅の方に向かってるな」と言いあたるから少し離れて歩く。しばらく歩くと、駅前広場に出た。そこであたるは段ボール箱を置き、おもむろに箱を開けると何かを掴み出した。それは、広告入りの無料配布のティッシュだった。あたるは、毎晩出掛けてはティッシュ配りをしていたのだ。不審者あたるは
不審者あたる 「ティッシュ配り?なんでそんな事を?」と言った。不審者あたるには、全く理解出来なかった。
 自分は、自分で言うのも何だが進んで仕事などする様な人間ではないと言う事を知っているあたるにとって、今の状況はどうしても考えられないのだ。不審者あたるがそんな事を考えながら観察していると、一つ分かった事が有った。あたるは、男には一切ティッシュを配ってないのだ。配っているのは若い女性ばかり、それを見て不審者あたるは謎が解けた。
不審者あたる 「なるほど!バイトをしながらにして、綺麗なお姉さんに声をかける事が出来る!しかも、ティッシュ配りと言う大義名分が有るから、自然と声をかけられる訳か!」と言うとウンウンと頷きながら
不審者あたる 「さすが俺!」と言った。だが、ラムの事を思い出し

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