「ザット・クレイジー・サマー」第三話 (Page 1)
Page: 01 02 03 04 05




〔ザット・クレイジー・サマー〕 第三話

夏の朝。それは
「こうちょう!!」



…「静寂と心地よい涼しさに包まれた一日の中のオアシス、月曜日という地獄の中の一筋の光」というつもりだったんだが…まあいい。
校長室に男が一匹…もとい、一人このようなドラ声というか雄叫びというか、まあとにかく叫びつつ入ってきた。
彼もまた、掲示板を見てきた人間の一人だった。



校長「おや、温泉先生。朝からお元気そうで何よりです。」
温泉「元気も電気もへったくれもありません!話が」
校長「しかしこう大声を出してもらっては、小鳥たちにとってはいささか気の毒ですねえ…」
温泉「校長!あんた話聞く気あんですかあ?!」
校長「…ああ、話があるんでしたね。でもお静かに願いますよ。珍しーい鳥がつがいでいるので。」
温泉「オホン、あー、そのなんです、『校内人間競馬大会』というのを催されるそうで」
校長「いけませんか?」
温泉「あー、いや、否定はするわけではないんですけどね、ただ、あのー…ちょっと問題なところが…」
校長「どこです?」
温泉「…参加しない生徒は誰が勝利するかを予想することができるんですよね?」
校長「ええ。」
温泉「その際、予想するための券を買うことになってると聞きましたが?」
校長「その通りです」
温泉「で、予想が的中したものにジュースやらお菓子やらを分配する…これ、トバ・・・」
校長「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」
温泉「………へ?」
校長「刑法第185条です。この『一時の娯楽に供する物』とはジュースや食品のことを指すと判例にもあります。」
温泉「…まあ確かに合法かもしれません、けど!やっぱり風紀上…」
校長「これでしょっ引かれるんなら全国のパチンコ屋は廃業です!」
温泉「…わかりました。でも、でも!」
校長「まだ何か問題でも?」
温泉「優勝賞品の『デート券』です!風紀上あのようなものを賞品に出すなど言語道断!
   まあ、本来は賞金五万円も好ましくありませんが、これは百歩譲って許容しますからそれだけは削除を…」
校長「本人の了承済みでも?」
温泉「ダメです!」
校長「了承済みならいいでしょう…ねえ」
温泉「ダメなものはダメなんです!!」
校長「温泉先生…」
温泉「ダメです!!もうそろそろ二限目が始まりますのでこれにて失礼…」
校長「…そうかぁ…出場するもダメなんですねえ…いやザンネンムネン!」
温泉「だから何回言ってもダメ…へ、出場?」
校長「ええ」
温泉「‥私が?」
校長「ほかの誰に?」
温泉「校長!御冗談も大概にしてください!」
校長「冗談ではありません…いいですか、もうこの『デート券』のことに関してはもうどうしようもできません。
    しかし先生がが出場して優勝すれば、まるぅーく収まるのです。権利など放棄することができますからね。」
温泉「…」
   (五万円…悪くない話だ)
温泉「わかりました。不肖温泉マーク、出場させていただきます!」
校長「そうおっしゃっていただけるだろうと信じておりました。では手続きを済ませておきますね。」
温泉「失礼します!」


温泉「…グハハハハ!諸星!お前の二学期はこの俺がもらった!積年の恨み、果たしてやるぞ…」


ガラッ

温泉「おい席につけ!授業を…え…」
教師A「なんだ温泉先生だったっぴゃ…、何か御用でもあるっぴゃか?」
温泉「あ、いや、失礼をば致しました、クラスを間違えてしまって…いやあ大変すいませんでしたねえ…」

冷や汗をかきながら中年教師は『2年2組』と掲げられた板の下を通った。
温泉 (どうもいやな予感がせんでもないがもう時すでに遅しか…神よこの温泉マークをお助けください…)





さて、二限目温泉マークとの仁義なき授業を終えた2年4組。


テン「な〜あたる」
あたる「何じゃ、ジャリテン」
テン「お前、あの『デート券』ほしいか?」
あたる「それがど〜したちゅうんじゃい」
テン「耳寄りな話があるんやけどなあ…」
あたる「シッ、黙れ!」
テン「へ?」
あたる「あれ、あれ!」

あたるの指差す先には、明らかにこちらを警戒している黄色のスカーフのセーラー服を身に着けた女子生徒。

あたる「わかるだろ?ここはまずい。家に帰ってから…」
テン「そやな…ラムちゃんに聞かれてもまずいしなあ…」
あたる「そうゆうこった。お前も話が分かるようになってきたな、感心するぞ。ラムには俺が取り繕っておくから心配するな。」
テン「くれぐれも頼むで」



そう言い終えると珍しくラムのほうに近づくあたる。
もう放電の準備ができているらしくパリパリッという音が聞こえる。

ラム「ダーリン?」
あたる「テンちゃんとなに話してたっちゃ?」
ラム「…言いたいことがわかってるんなら早くいうっちゃ。しょ〜じきに言わないと…」
あたる「まあ待て。うん、実はな…――――――――」





Page 2
戻る
Page: 01 02 03 04 05