うる星やつら しのぶのストレンジストーリー(後編) (Page 2)
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 隣町に着いた私は、歩道を車椅子で進んでいると不思議な感覚に襲われた。それはデジャブに似た感覚だった。隣町には良く来るので、町並みも良く知ってるからデジャブではないと思う。不思議な感覚を気にしながら進んでいて私は
 (あ、そう言えば……私が事故に遭ったのって、隣町だったわよね)と思った。
 実は、私は事故から1年以上経った今でも事故の時の記憶が無い。これだけ思い出せないと言う事は、思い出したくない理由でも有るのだろうか?
 そんな事を考えながら進むと、ある交差点に着いた。交差点の信号は赤になったので、私は止まり何気なく通りの向こう側に目をやった。すると仔犬を散歩している女の人が目に入った。その時、私は雷に撃たれた様な衝撃を受けた気がして次の瞬間、事故に遭った時の記憶が甦った。私は
 「あぁ……思い出した……私、私、キツネさんを助けようとして事故に遭ったんだ」と呟くと、急に子狐の事が気になり
 (キツネさん、大丈夫だったのかしら……事故の後、誰もキツネさんの話をしていなかったから、大丈夫だったと思うけど)と思いながらもショッピングを済ませ、帰宅する事にした。
 私が家の前まで来た時に、家の近くでウロウロする小さな影を見つけた。それは、あたる君の姿をした子狐だった。本人は化けているつもりなのだろうが、尻尾は生えてるしバレバレである。
 私は、気づかないふりをして家に向かうと、あたる君の姿に化けた子狐が寄ってきた。私は
 「あら、キツネさん。久しぶりね」と言って笑うと。子狐は
 「何言ってるんだ。俺はあたるだ」と言ったので、私は合わせて
 「はい、はい、それで、あたる君は私に何か用事が有ってきたの?」と言うと、子狐あたるは、何かを差し出しながら
 「これは御守りだ。おまえにやるから、もってるっちゃ」と言った。それを聞いて私は
 (ふふふ、キツネさんまたラムとあたる君が一緒になっちゃってる)と思って、思わずクスッと笑ってしまった。すると子狐は私の手に、御守りを握らせるとトコトコと走って行ってしまった。私は、そんな子狐を見送ると子狐に渡された御守りを見てみた。それは、見た事のない木の実で造られた御守りだった。ちょうどポケットに入れても邪魔にならない程度の大きさだ。これならいつでも持ち歩けそうだ。私は
 「せっかくキツネさんがくれたんだから、いつも持ち歩こうかな。でもキツネさん、元気そうで良かった」と言った。知らぬ知らぬうちに、顔には笑みが浮かんでいた。そんな私をちょうど出掛けようと玄関を開けた母が見ていて
 「しのぶ、そんな所でニヤニヤしてどうしたの?」と怪訝な顔をしたので、私は
 「ん?ちょっとね」と言って、家の中に入った。母は
 「変な娘。事故の後遺症かしら」と呟きながら買い物に出掛けた。
 私は、子狐から貰った御守りが何の木の実なのか知りたくて、植物図鑑を拡げて調べると、それがワイルーロの木の実だと分かった。更に図鑑を見ると、その木の実は南米ペルーに生息しているワイルーロと言う木の実で、幸せを運ぶと言われている木の実だと言う事も分かった。子狐が渡した木の実は、御守りとして持ち歩ける様に加工してあった。私はそれを見て
 「キツネさん、私の為にこの御守り造ってくれたんだ」と言って、御守りを両手で握りしめた。そして
 (有りがとう。キツネさん)と思うと、子狐の優しさに触れて心が暖かくなった。
 夏になり仕事にもようやく慣れた頃に私は隣町まで夏の洋服を見に行った時だった。突然歩道で呼び止められたのだ。
 「しのぶさん?」
 私は、思わず振り替えるとそこには見覚えのある顔が。そこに居たのは、私が入院していた病院の鈴木先生だった。私は、思いがけない人と出会った事で思わずテンションが上がり
 「鈴木先生!」と大きな声を上げてしまった。私の声に一瞬周りの人達が一斉に私を見た。私は、それに気付くと恥ずかしさで顔が真っ赤になるのが分かった。
 私達は、近くの喫茶店に入る事にした。すると席に着くなり鈴木先生は
 「しのぶさんは、進学したの?」と聞いて来た。私が
 「いえ、今の私を受け入れてくれる大学が近くに無いので就職しました」と言うと、先生は
 「そうかぁ。やぁ、しのぶさんもすっかり大人の女性になったね」と言ったので、私は
 「いえ、そんな事……」と言った。だが、決して悪い気はしなかった。なぜなら、私は学生時代から幼く見られる事が良く有ったからだ。
 そんな他愛もない会話をしている時、私はあらためて鈴木先生がかなりいい男だと言う事に気付いた。入院中は、精神的にも不安定だったせいか全然気付かなかったのだ。先生は、今日は休みだったそうで私の買い物に付き合ってくれたうえ、食事までご馳走してくれた。
 買い物も終わり、私が
 「今日は、ありがとうございました。食事までご馳走になってしまって」と言うと、先生は
 「なぁに、僕も暇だったしね」と言って笑った。私が

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