うる星やつら しのぶのストレンジストーリー(後編) (Page 5)
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 熱さと煙のせいか、私はだんだん意識が朦朧としてきた。その時、子狐は肩から下げた袋から何かを出した。それは、見たことも無い木の実だった。子狐はその木の実を私に差し出した。私は木の実を手に取ると
 「……なぁに?この木の実」と言った。すると子狐は空中でクルリと回転し、ラムの姿になり
 「その木の実を食べるっちゃ」と言った。子狐の瞳には涙が浮かんでいた。私は
 (もしかして、この木の実……私が苦しまない様に?)と思い再び子狐を見ると、もう元の子狐の姿に戻っていた。子狐はポロポロと涙を流している。私はそんな子狐に笑顔で
 「わかったわ」と言うと、木の実を口に運んだ。子狐は一瞬手を伸ばしそうになったが、その手を止めた。私は朦朧とする意識の中で子狐に
 「キツネさん……ゴメンね。助けてあげられなくて……」と言った。
 私はだんだん眠くなり、やがて意識が無くなった。

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 デパートの火災は、3時間後に鎮火した。さいわい発見が早く店員の迅速な誘導も有り、ほとんどの人が無事避難出来た…………1人を除いて。
 しのぶは、エレベーターの中で子狐を抱き眠る様に息を引き取っているのを発見された。
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 私が目を覚ますと、目に映ったのは真っ白な天井。私は首を動かし周りを見ると窓には白いカーテン。どうやらここは病院らしい。私は
 (私……助かったの?)と思った。その時病室のドアが開き、母が病室に入って来た。母は私を見ると
 「目がさめた?良かったわ、大した事なくて。あなたが事故に遭ったって聞いた時は生きた心地がしなかったんだから」と言った。私は
 「え?事故?火事じゃなくて?」と母に聞くと、母は
 「火事?何言ってるの?」と言った。私は
 (どう言う事?)と思った。その時、誰かが病室に入ってきた。それは50歳過ぎくらいの医者だった。その医者は
 「三宅さん、具合はどうですか?」と言って。私のベッドの所に来た。私は
 「多分、大丈夫だと思います」と答えた。すると先生は
 「私は、あなたの担当医師の山口と言います」と言った。私は
 (鈴木先生じゃないんだ)と思った。山口先生は
 「一応、検査の為に1日だけ入院して行って下さい」と言うと、更に
 「では、何か有りましたら呼んで下さいね」と言って病室を出ようとした時、私は
 「先生!ちょっといいですか?」と言って呼び止めた。すると山口先生は
 「ん?何ですか?」と言い、私は
 「鈴木先生を呼んで貰えますか?」と言うと、山口先生は
 「鈴木先生?ん〜、そんな名前の先生は居ないと思いますが」と言った。私は
 (え?居ないって……まさか違う病院?)と思っていたら、母が
 「でも良かったわ、1日位の入院なら学校の勉強が遅れる事も無いでしょうし」と言った。私は耳を疑い
 「学校?どう言う事?」と母に聞き直すと母は
 「どう言う事って、しのぶは高校生じゃない」と言ったのだ。母がふざけてるとは思えないし、第一そんな嘘をつく理由もない。私は
 (まさか本当に私は高校生?と言う事は今までのは全て夢?歩けなくなったのも、高校を卒業したのも、そして鈴木先生の事も……そしてあの火事も)と思い、それを確かめようと思った。その方法は……歩く事。もし夢だったら歩けるはず。私は上半身を起こすと、足を動かしてみた。すると足が動いた!自分の思う様に動く。私はベッドから足を降ろして立ち上がってみた。まだフラフラしてるが確かに自分の足で立てた。私は
 (立てた!歩ける!普通の事なのに、こんなに嬉しいなんて)と思い、知らず知らずに目には涙が浮かんだ。母はそんな私を見て
 「しのぶ?どうしたの?」と言った。私は
 「ううん、何でもない」と言って、ベッドに腰を降ろし、更に
 「実はね、私夢を見てたの……とっても長い夢……そして怖くて悲しい夢……」と言った時、スカートのポケットに何か入っているのに気づき、それを取り出してみた。そして、私はそれを見て驚きのあまり声を失った。なんとそれは子狐に貰ったワイルーロの木の実で造った御守りだった。私はその御守りを見つめ
 (え?これってキツネさんに貰った……て事は、夢じゃなかったの?でもどうして?)と思った時ある事を思い出してハッとした。そして私は
 (あのエレベーターの中でキツネさんが私にくれた木の実……そうよ!あれだわ。キツネさんはきっと私にやり直すチャンスをくれたんだわ)と思って、子狐の優しさに再び涙を流した。その時、病室のドアの方から
 「お、しのぶ元気そうじないか」と言う声がして振り向くと、そこには、あたる君、ラム、面堂さん、ラム親衛隊の4人が居た。私は涙を拭うと
 「お見舞いに来てくれなたの?ありがとう」と言った。皆が来たのを見て母は
 「あ、お母さんちょっと用事済ませて来ちゃうね」と私に言うと、あたる君達に

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