うる星やつら しのぶのストレンジストーリー(後編) (Page 3)
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 「男の人と食事するなんて久し振りだったので、緊張しちゃいました」と言うと、先生は
 「そうなのかい?はははっ」と、笑い更に
 「もし良かったら、また食事誘ってもいいかなぁ?」と言った。私は
 「はい。是非」と答えた。社交辞令なのは分かっていても、嬉しいものである。私は駅で鈴木先生と別れると、自宅に戻った。
 それから2週間経った頃、自宅に鈴木先生から電話が有った。私は、まさか本当に誘われるとは夢にも思っていなかったので嬉しさよりも戸惑いの方が大きかった。でも、元々男運の無い私にとっては千載一遇のチャンスだ。鈴木先生は、優しいし、私の事情も分かってる。それに医者だから生活にも困らないだろう、そして何より顔がいい。誘いを断る理由は無く、私は二つ返事でOKした。約束は翌週の土曜日なので、その時には先日買った服を着て行く事にした。それからの1週間は緊張と不安の毎日だった。
 そして土曜日になり、鈴木先生は車で家まで迎えに来てくれた。母は玄関まで出てきて
 「娘をよろしくお願いします」と言って、深々と頭を下げた。まるで嫁にでも送り出しそうな勢いだ。そんな母に私が
 「もうお母さんったら、ただ食事に行くだけじゃない」と言うと、鈴木先生は
 「お母さん、娘さんちょっとお借りしますね」と言うと、ニッコリと笑った。
 私は鈴木先生の手を借りて車に乗り込むと何気なく前を見た。すると電柱に隠れる様にこちらを見ている子狐が見えた。子狐は私と目が合うと、逃げる様に走り去っていってしまった。その後すぐに鈴木先生が車に乗り込み
 「じゃあ行こうか」と言い、私も
 「はい」と答えた。食事はとても美味しく楽しいものだった。帰り際、鈴木先生は
 「しのぶさん、今日はとても美味しい食事が出来たね」と言った。それを聞いた私は
 「はい。今日はお食事に誘ってもらって、ありがとうございました」と言って軽く頭を下げた。すると鈴木先生は
 「今度映画でもどうかなぁ」と言った。私は、心の中で叫んだ。
 (きたーーーー!)
 でも、顔に出しては待っていた事がバレてしまう。私は出来るだけ気持ちを悟られない様に、うつむき
 「あ……は、はい……」と答えた。私の答えを聞いて鈴木先生は
「じゃあ、今度週末に休みが取れたら連絡するね」と言った。そして、私を自宅まで送ると母に挨拶をして帰って行った。
 それから1週間程経って、鈴木先生から電話が有った。次の休みが取れたらしい。今度の日曜日に映画を観に行こうと誘われたのだが、いい服が無い事に気付いた私は、前日の土曜日に隣町のデパートに買いに行く事に決めた。
 土曜日になり、私は隣町まで出掛けた。デパートの近くまで来た時に、デパート横のオープンカフェに見覚えのある2人を見つけた。私は、その2人に近づき
 「こんにちは、2人共相変わらずね」と声をかけた。すると私の声に2人は振り向き
 「あ、しのぶじゃないか」と答えたのはあたる君。そしてすぐに
 「あ、しのぶだっちゃ」と笑顔で答えたのはラム。そう、またいつもの通りあたる君がデート中に他の女の子にチョッカイを出そうとしていたのだ。私はそんなラムに
 「ラムも大変ね」と言うと、ラムは
 「ほんとだっちゃ、ダーリンにも早く落ち着いてほしいっちゃ」と言って、あたる君の方を見ると、あたる君は
 「何を言っとるか。落ち着いた俺なんぞ、俺じゃ無かろうが。俺は俺の生き方にポリシーを持っとるんじゃ」と言ったが、ラムは
 「何がポリシーだっちゃ!自慢出来る事じゃないっちゃ」と言って、あたる君を横目で見た。私は
 「本当に、あなた達を見てると飽きないわね」と言って笑うと、ラムが
 「しのぶ何だか明るくなったっちゃね」と言うと、満面の笑みをみせた。それを見て私は
 (なるほど、この笑顔なのね皆がラムに惹かれるのは。私には、これが足らないのね)と思った。するとラムが私の顔を覗き込み
 「どうしたっちゃ?しのぶ」と言ったので、私は
 「あ、ううん。何でもないの」と言って笑顔を作った。そして
 「じゃ、2人のデートの邪魔しちゃ悪いし、そろそろ行くね」と言って、デパートに向かった。私が少し進んで振り替えると、2人は私に手を振っていた。わたしも、軽く手を振って答えた。
 私はデパートに入ると婦人服売り場の有る5階に向かった。色々と目移りしながら服を選んでいる時
 ジリリリリリリリリリー!
 突然けたたましくベルが鳴り、店内放送が流れた。
 〈只今、3階子供服売り場より火災が発生しました。お客様は係員の指示に従い、避難して下さい!〉
 その放送が流れた途端、売り場はパニックになり誰もが我先に避難しようとしていた。そんな中、店員の人が
 「皆さん!慌てないで下さい!走らずに非常階段より避難して下さい!」と言った。それを聞いた私は

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