うる星やつら しのぶのストレンジストーリー(後編) (Page 4)
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 (非常階段から避難って……私はどうすればいいの?)と思いながらも、とりあえず非常階段に向かった。その時、後ろから走って来た人が私に激しくぶつかり倒れた。その衝撃で私も車椅子ごと倒れてしまい、私は車椅子から放り出されてしまった。後ろから走って来た人は私が倒れたのを見たが、まるで逃げる様に走って行ってしまった。他の避難している人達も見て見ぬふりだ。私はすぐに車椅子の方に這っていった。こんな所で高校時代にラムに言われて頑張った事が役にたつとは。私は必死に車椅子にたどり着くと、車椅子を起こし、何とかまた車椅子に乗った。そして私は
 (ラム、ありがとう。もしあの時ラムが私に厳しくしてくれなかったら、私ダメだった)と思い、再び非常階段に向かった。しかしその時
 ドーーーーーン!!!
 という大きな爆発音と共にデパートが大きく揺れた。売り場は避難している人達の悲鳴で溢れた。私も怖かったけど、早く非常階段に行かなければと思って車椅子を動かし始めた時、私の横でガタガタと妙な音がしたかと思ったら、洋服の陳列棚が私に向かって倒れて来た。私は避ける間も無く、陳列棚の下敷きになってしまった。避難している人達は、自分の事に精一杯なのか誰も私に気づかない様子だった。私は何とか棚の下から抜け出そうと頑張り、やっとの事で抜け出す事が出来た。さいわい車椅子が棚を受け止める形になり、私は挟まれずに済んだのだが、車椅子はもう使える状態じゃなかった。
 私が抜け出した時には、周りにはもう誰も居らず、店員の人の姿も見えなかった。私は
 「え?誰も居ない……私どうすれば……」と言って周りを見渡すと近くにエレベーターが見えた。非常階段ははるか先、ここからならエレベーターに行った方が早い。私は迷わずエレベーターに向かった。何とかエレベーターまで着いた私は上体を起こし、エレベーターのボタンを押し
 (エレベーター動いて!)と思った。すると1階に居たエレベーターは2階、3階、4階、と上がって来てついに5階に到着し、エレベーターのドアが開いた。私はすかさずエレベーターに這って入ると1階のボタンを押そうとしたが、立てない私には手が届かない。私は何とか押そうと頑張ったが、どうにも無理だ。そこで私はバッグから髪を纏めるコンコルドクリップを出し、それを使って何とか1階のボタンを押した。するとエレベーターのドアが閉まり、エレベーターは下がり始めた。私はホッとして身体中の力が抜けた。しかし、エレベーターは4階を過ぎたあたりで突然ガクン!という衝撃と共に止まってしまった。エレベーター内の照明が落ちていないから、多分モーターの故障だろう。その時、気のせいかと思ったけど、やっぱりエレベーターの中の温度が上がってきてるみたいだ。私はなんとかエレベーターの扉を開こうとしたが、10cm程開いただけでそれ以上開く事は出来なかったエレベーターは、3階と4階の間で止まったらしい。3階側からは熱気と煙が入ってくる。私は開けた扉を元に戻そうとしたが、扉は全く動かない。このままでは熱気と煙にやられてしまう。私は扉の隙間から
 「誰かー!助けてー!」と叫んだが、返事をしてくれる人は居ない。それでも私は諦めず叫び続けた。しかし叫び続けた事と、煙で声が掠れてきた。私は出来るだけ煙を吸わない様にエレベーターの奥へ移動した。エレベーターの中の温度はどんどん上がってきて、呼吸も辛くなって来た。私は力無い声で
 「誰かー、助けてー」と叫んだが、やはり誰からも返答は無い。その時私はエレベーターのインターホンが目に入った。私はハンカチで鼻と口を覆いながらエレベーターの操作盤の所まで這って行き、インターホンのボタンに手を伸ばした。さいわいにも、このエレベーターはインターホンが下の方に付いていたので私でも手が届いた。私はインターホンのボタンを押したが、何の反応も無い。まるで繋がっていない様だった。何度やってもダメだったので、私は再びエレベーターの奥に移動した。ハンカチで鼻と口を覆いながら
 「まさか、私……こんな所で……」と言った時、頭の中に高校時代の楽しかった思いでが過った。目からは自然と涙が溢れてきた。私は
 「こんな体になった私でも恋が出来ると思ったのに……やっと幸せになれると思ったのに……嫌だ、死にたくない……死にたくないよ」と言った。すると、その時扉の隙間から何かがエレベーターの中に入ってきた。それは子狐だった。それを見て私は
 「キツネさん!何でここに……ダメ!早く逃げて!あなたまで死んでしまう」と言ったが子狐は私の所に寄って来た。良く見れば身体中の毛が火で焼かれ、あちこちを火傷している。私の為に炎の中、私の事を探したのだろう。私は、そんな子狐を抱きしめると
 「キツネさん……私を探してくれたんだね。ありがとう」と言った。子狐は悲しそうな目で私を見つめていた。

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