友引町を奪還せよ-act5- (Page 1)
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友引町を奪還せよ-act5-


十二月三十一日午後六時十三分
面堂廷内 
全員は森の中を進んでいた。この先で三つに分かれる予定である。
「進みにくいな・・・」
チビが愚痴をこぼす。
「ええい、つべこべ言わずにさっさと進め。格納庫はまだ先だ」
メガネが一喝する。それでも小声だ。すると先頭を進んでいたコースケが立ち止まった。
「いてて・・・どうした、コースケ?」
コースケの背中にぶつかったあたるが鼻をさすりながら聞いた。
「し、黒メガネだ・・・」
黒メガネが二人、見回りをしていた。
「よし、あいつらを使おう・・・」
あたるの提案である。
「どうするんだ」
「黒メガネ武隊を六人ほど引っ捕らえて第一班に変装される。そうすれば、事を起こすまでバレない・・・」
「そうか・・・メガネ」
コースケはメガネに手招きをした。
「黒メガネの巡回時間分かるか?」
「ああ、警備室のパソコンからデータをかっぱらってきた」
メガネはパソコンから印刷した紙を出した。面堂廷内は広いだけあって、膨大な量だった。
「ここを六人通るには・・・三時間はかかるな・・・」
「三時間も待ってられんぞ。他の場所を当たるしかない・・・」
「そうだな。よし、第三班がする。他の者はここで待機」

あたるとコースケは先ほどの場所から三十メートル離れたところにいた。
「来たぞ」
二人は林に身を潜めた。向こうから二人ほどの黒メガネが歩いてくる。デブとのっぽだ。あたるは木槌を構え、通り過ぎるのを待った。
もうすぐ通り過ぎるというそのときコースケはよろけ、ガサと草のこすれる音がした。
「あ、馬鹿!」
思わず大声で叫んでしまった。あたるはコースケの口を塞いだ。コースケは塞ぐ口が間違っていることに気付かなかった。
「何者だ!!」
ライトが二人の方向をてらす。
「くっ!」
あたるは手で光を遮りながら、素早く出てきて木槌を振り当てた。
「ぐはっ!」
一人は木槌でぶっ倒れたが、もう一人は腰に手を回した。
(マズイ!)
ここで拳銃を撃たれたら、その銃声で黒メガネ武隊が殺到し、勝ち目はない。さらにその辺を捜査され、全員がお縄についてしまう可能性があった。
しかしその後ろからコースケが殴った。あたるは暗闇で何も見えず、何が起きたか分からなかった。
「大丈夫か?」
「なんだ、コースケか・・・」
あたるは額の汗をぬぐった。
「さて、早いとこ服を奪って戻ろうぜ」
コースケは上着を取った。
「ああ・・・」
あたるはサングラスを胸ポケットに入れて上着とズボンを肩に掛け、ネクタイを手に持っていた。
「さ、行こうぜ」
するとデブ黒メガネが意識を取り戻しあたるの足をつかんだ。
「な、何をする!」
あたるは手を振り払おうとしたがなかなか離さない。
「それはこっちの台詞だ」
デブ黒メガネは割れたサングラスをはずしあたるを見上げた。
コースケはそーっと後ろに回り込み木槌を振り上げた。
「止めろ・・・、殴れば警報をならすぞ」
もう一人ののっぽ黒メガネ後ろにたっていた。
(しまった、浅かったか!)
警報発信機を手に持っていた。コースケに見せびらかすかのようにし、スイッチをいつでも押せる状態だった。
「あまかったな。さあ、形勢逆転だ・・・」
あたるの足にしがみついていた黒メガネは立ち上がるとぽんぽんと泥を落とし、余裕に笑みを浮かべた。あたるとコースケは腕を頭で組まされ体中を検査された。
「貴様ら、仲間がいるな・・・」
ドキ!そこら中に響きそうな気がした。二人は落ち着け落ち着けと心で何度も繰り返した。しかし冷や汗はどんどん出てくる。
「吐いて貰おうか・・・」
デブが歩み寄ってくる。あたるの心臓の鼓動はさらに速さを増した。
「ウワッ」
デブが石につまずき体勢を崩した。
(今だ!)
あたるは体当たりを食らわせようと振り返った。
「あまい!」
デブの体勢は意外にもすぐに立ち直った。
「ふん、あまい」
「そんなにも甘い物が喰いたいのか!」
あたるはあまいあまいと繰り返すデブに言い返した。あくまで強気を張るつもりである。
「だから太るんだ、このデブ!!」
さらに追い打ちを与える。
「な、なんだとー!」
デブの目は怒りでめらめらしていた。
「三段腹をたっぷんたっぷん露出しながら目をめらめら燃やして何が面白い!?」
デブはようやくパンツ一丁でいたことに気がついた。おなかの肉は垂れ下がり、三段にくっきりと別れていた。
デブの胸には光速で飛んできた矢が三本刺さった様な気がした。もはや再起不能である。
「後で有給休暇貰って、カウンセリング受けてこい」
のっぽはデブの方をぽんと叩き、慰めを込めて言った。
「貴様ら良くもデブを!」
「やかましい!」
あたるとコースケは戦闘態勢に入った。二対一ではのっぽには勝ち目はなかった。
「手に縄を縛り付けなかったのが命取りだな。ふふふふふふふ」
もはや怖い。
「往生しろ!!」
二人は飛びかかった。そのとき
「待て!!」

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