共に見る夜空 (Page 5)
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だから無事にラムちゃんの墓についたら告白してやれ、好きだって・・・」
あたるの心に少しの迷いが出来た。だが、そんなことだからラムは成仏できていないだろうし、自分にも後悔していると気付くことが出来た。それが、告白の決意を
固めた。たとえ、死んでいてもそこには紛れもなくラムはいる。
「ああ・・・」
「そして帰ってこい。ラムちゃんのこと忘れんでも良い。いつもと同じように暮らしていけ・・・」
「ああ、約束する」
あたるはこの約束を胸の中にしまい込んだ。夜空の中にラムの眠る鬼星があるかもしれない。それを無駄とわかりながらも一晩中探し続けた。

epilogue
ハッチがゆっくりとせり上がっていった。その向こうには久しぶりに見る日光があった。しばらく目が慣れないため、あたるは手で目を覆い隠した。
ある程度光に慣れたところで外に足を踏み出した。やはり他の星というのは環境が微妙に異なっている。同じ酸素を吸い、二酸化炭素を吐く。しかし
どこか雰囲気が違った。あたるは本能的に環境の違いを感じ取った。
鬼星のエアポートのようである。地球の空港とは類似しているが、滑走路はUFOのためか、地球のと比べるとかなり短い。
「婿殿、よう来てくれなはった」
二年という時間は悲しみを消すには十分だったようである。ラムの父親から多少の元気が飛んできた。周りにはボディーガードらしき大男が二人並んでいた。
しかしラムの父親はそれを超える大男である。ボディーガードが普通に見えた。
「あ・・・、どうも・・・」
あたるは少し頭を下げた。着ているものはかなりぼろぼろになっていた。旅の途中で数回盗賊に襲われたのことだった。一人で戦うにはやはり苦戦を強いられた。
さらに食料を盗まれて空腹だったのを親切な老夫婦に助けられ、しばらくそこでお世話になった。そのためあたるの到着は半年ほど遅れていた。
あたるは長旅の疲れを癒すため、風呂を勧められた。
「いや、結構・・・。早くラムのところへ・・・」
「あたる!」
懐かしい声が聞こえた。コースケである。その後ろには面堂、しのぶ、メガネがいた。
「おまえら、どうしてここに・・・」
「いや、ちゃんと生きてつくかと思って・・・。それにラムちゃんの墓の前で自殺されたら困るしな・・・」
「心配するな、自殺はしない・・・」
あたるの口調は妙におとなしかった。それが逆にコースケの疑いを引いた。
「ホントか?」
コースケは声を低くしていった。行くら約束でも二年も立てば気が変わるかもしれない。コースケはそれを心配していた。しかし、その心がわかる前に
あたるは身を翻し、墓場に向かった。ラムのいる墓である。
「自殺はな・・・」
コースケには何を言っているかわからなかった。その他人間にもわからない。すると考える暇を与えないかのようにあたるは付け加えた。
「それから帰る準備しておけ・・・。ラムとちょっと話してくる・・・」
四人の内、コースケ以外は何も考えず、泊まっているホテルに向かった。しかし、コースケには翻したときの言葉が気になった。
「コースケ!」
メガネが向こうで大きく手を振っている。コースケは慌てて三人の元に向かった。一度あたるの方向を見たがもう既にいなくなっていた。
ラムの父親も見失ったらしく、あちこちを指さして指示を飛ばしていた。コースケはメガネ達の横に並んでホテルに向かった。コースケは
(墓場にいるに決まってるだろうが・・・)
と愚かさに呆れていた。

墓場
あたるはゆっくりと足を少し引きづりながらラムの墓を探した。右に左に目線を交互するがなかなか見つからない。墓場には地球で言う蝶がいた。
いつも見る墓場と違って草は生い茂っておらず、静かな高原である。所々の墓に見たことのない黄色い花が置いてあるが、地球人の美意識から見ても、墓に似合い、
そして綺麗であった。その花は墓の外にたくさん生えていて、風にあおられ、同じテンポで揺れていた。あたるは自分もこの花を置いた方がいいと思い、
墓を外に出て三本ほど切り取った。そしてまた墓に戻るとラムの墓があった。鬼星では苗字がないため、墓の持ち主の写真が貼ってある。あたるは
持ってきたカバンを横に置き、手を合わせた。風があたうにとって気持ちよかった。先ほどの蝶らしき生物がラムの墓に二匹泊まっていた。
時刻は既に午後十一時五十分を回っていた。
「こんな時間か・・・」
あたるは地球で買っていた酒を取り出した。
「ほらラム、俺は明日で二十歳だ・・・。お前も飲め・・・」
そういってラムの墓にてっぺんから半分ほどかけた。墓は酒にぬれて輝き始めた。星空が酒に反射しているのをみて、あたるは空を見た。二年前にコースケと
一緒に見た夜空に似ている。ここからは大きな星がたくさん見え、色鮮やかでオーロラを見る感じにも似ていた。あたるは息深くを吸い、しばらく息を止めた。
はぁと吐くとラムの墓を見つめた。
「ラム・・・。そ、その・・・」

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