共に見る夜空 (Page 6)
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そのとき墓の入り口でコースケが身を潜めていた。あたるの最後の言葉が気になり、様子を見に来たのだ。話しかけようとしたが、約束の告白をしようとしている
二人に水を差す事が出来なかった。コースケはつまっているあたるを見て、少し笑みを浮かべた。
「す・・・」
そのとき強風が吹き、ゴォーと大きな音がなった。草花が少し飛び散りコースケの目や耳にくっついた。意外とべたべたしていて取り終えるのに大分時間がかかった。
取ってもまだべたべたした感じが残っている。苛々しながらも気付かれてはマズイと思って、物陰に隠れた。そして続きを聞こうとしたが、何も聞こえてこない。そーっと
顔を出すとあたるは立ったままラムの墓を見つめていた。
「今日は俺の誕生日か・・・」
時計は十二時を回っていた。あたるは十七の誕生日を思い出した。今あたるはラムが毎日夜遅くまで探し続けていたシャツを着ている。
「ラム、すまない。ぼろぼろになったちゃった・・・」
コースケは今度こそ二人切りにしてやろうと墓場に背中を向け歩み出した。足を動かすたびに草にすれてがさがさと音を立てた。
そのとき人が倒れる音がした。コースケは自殺かと思い、墓場に向かって走り出した。あたるはラムの目の前で倒れていた。
「おい、あたる!!あたる!!」
コースケはあたるの体を揺さぶった。しかし指一本動かない。コースケは急いであたるの首に手を当て、心臓が動いているか確かめた。
かすかにぴくぴくと手に感じられた。
「待ってろ!今医者呼んでくる!」
コースケが去ったとあたるは目を開けた。右手は腹に当てられている。実は星につく前、あたるは盗賊に襲われ銃で腹を撃たれたのだ。弾は貫通していたが、
重傷であった。血が少しずつ体から抜け出し、あたるの手は血で赤く染められたいく。
(今になって傷口が・・・)
あたるは意識が遠のいていくのがわかったが、視界が暗くはならなかった。夜空は変わらず輝き続けている。そしてラムの幻が見えた。いや、幻ではなく、現実でもなかった。
すると、今まで襲い続けた激痛が急に消え、意識がはっきりとしてきた。あたるはラムの迎えだと悟った。ゆっくりとラムは腕を差し出し、あたるはしっかりとその手を握った。
「二十歳になったばっかりなのにもう逝っていいの?おかあさまやおとうさまがかなしむっちゃよ・・・」
二年ぶりに聞いたラムの声は全く変わっていなかったが、新鮮な気分になった。姿はかわらない。
「気にするな・・・。もう遅い・・・。それに、またいつもの毎日が暮らせるし、奴らには悪いが先に逝く・・・」
あたるは自分の死体に近づいてくる四人を見た。頬を叩いたり、肩を揺さぶっている。しのぶはその場に泣き崩れ、コースケは諦めず揺さぶり続け、メガネは心臓マッサージ
をしていた。面堂はもうどこかに去っていった。あたるとラムは空にせり上がりながら辛くも我慢して見ていた。
「いいの?」
「仕方ないさ・・・」
その日、4月13日は諸星あたるの誕生日であり、命日となった。

〜終〜


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