Welcome To Another World(Chapter 1&2) (Page 5)
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まして地球のように、「地球国家」のごとき星単位での政治的共同体が存在しない星というのは極めて珍しいのだ。
そのような地球人と宇宙人との認識のずれについての会話で、居間は盛り上がった。
その頃台所では、しのぶ、ラン、お雪の3人によって鍋作りが着々と進んでいた。
「きゃあっ!な、何よ、これえっ!!」
しのぶはお雪の持ってきた食材を手にするや否や、そう叫んだ。地球では見かけない動物だった。
「お、お雪!お前、こんなもんホンマに食えるんか!?」
その動物はランも見たことはあったが、食べたことはなかった。
「ええ、それは海王モモンガですわ、しのぶさん。ランは知っているでしょう?
地球のものでいえば・・・そうねえ・・・マトンみたいな味がするの。とってもおいしいですわよ」
お雪はそう言うと慣れた手つきで海王モモンガをさばき始めた。
「お雪さん・・・あなたの星ではこんなかわいい動物を食べちゃうの?」
しのぶがモモンガをさばいているお雪のほうを見て尋ねると、
「はい。私の住んでいる海王星は植物はほとんど生えませんし、動物の数も少ないですから、
私の星では足のついたものなら机と椅子以外ほとんど、何でも食べるんですの。
モモンガも貴重な食料ですわよ。特に取れたてのモモンガは生で食べますの。
彼らの生き血は、野菜が少ない私たちの星では貴重なビタミン源なんですのよ」
とお雪は説明した。
「あ・・・あはは、まるでアラスカのイヌイットみたい・・・」
しのぶは苦笑いを浮かべ、仕込みを続けた。
居間では会話が終わりかけたその時、弁天が口を開いた。
「・・・地球って星は、昔からずっと内戦の連続だったんだな。だから宇宙分野の開発が遅れちまったんだな」
これを聞いた面堂は、
「まあ、それだけが理由ではないですけどね」
と言った。弁天が再び、
「だってよお、内戦の数がもっと少なければ、こんなに戦争のための技術ばかり発達することはなかったと思うぜ。
このせいで地球は発展途上惑星になっちまったんだよ。なあ、どうして地球はこんなに内戦が多いんだ?」
と周りに尋ねると、あたるが口を開いた。
「地球人っていうのは、自分とどこか違う奴っていうのを、異常なほど嫌う傾向があるからね。
例えば、肌の色が違うからとか・・・白人とインディオの混血だからだとか・・・」
それを聞くと、今度はメガネが話し始めた。
「そういう身体的差異だけではないだろう。弁天様、今イラクで行われている戦争は、政治的な問題が絡んでいるんです。
この戦争のアメリカ側の大義は、イラクを独裁者から解放し、この国に民主主義を根付かせるというものなんですよ。
地球には無数の国家があり、それぞれの国家で採用されている政治体制もいろいろあるんです」
これを聞いて弁天は、
「そのことはよく分かった。でもその『違い』がどうして戦争に結びつくんだ?」
とメガネに向かって言った。メガネは、
「少し前、アメリカで大きなテロがあったんですよ。それで多くの人が犠牲になりました。
アメリカは、イラクの独裁者がそのテロの実行犯をサポートしていると主張しているんです。
このまま独裁政権が続けば、アメリカだけでなく世界中にテロの災いをもたらしてしまう。そこで今回の戦争、というわけです。
自分たち流の政治システムを押し付けることによって、テロを根絶しようとしているんですよ」
と雄弁に語った。パーマも負けじと、
「それともう1つ。この戦争は経済的な利害も絡んでいるんだ。イラクは地球の中でも特に石油が取れるからねえ。
石油を押さえれば、世界の経済産業界を大きくリードできる。この戦争の真の理由とも言われているんだ」
と語った。
「それだけじゃないぜ!アメリカはプロテスタント、イラクはイスラム教。宗教の違いも絡んでるよ、絶対」
セリフを稼ごうとカクガリも必死だ。
「あ、あと、大量破壊兵器を廃棄させるためだとか言ってなかったっけ?話す言葉が違うとか生活習慣が違うとか・・・」
チビも取り残されるまいと一生懸命である。
「まあ、このように、地球のいろいろな地方で様々な原因により小さな内紛から大きな戦争まであるわけです。
かつて地球上すべてが戦場になったこともあります。
今回の場合も、この戦争自体はじきに終結するでしょう。
でも、根本的な解決、つまり両国の関係改善は、今彼らが述べたとおり、いろいろな事情があって難しいんですよ、弁天様」
面堂はこのようにして締めた。
「・・・悲しいねぇ。どうして縁あって同じ星の上に生まれたもん同士、仲良くできねぇのかねぇ・・・
・・・地球人って、何なんだろうな」
弁天がそう言って、居間が暗く静まり返ろうとした瞬間、扉が開き、
「お待たせー。今晩の料理ができたわよー!さあ、みんなで食べましょう!」
というしのぶの声が聞こえた瞬間、一同、
「うひょー!待ってました!」
と声を上げ、居間は再びにぎわった。すると突然、
「オー、これはこれは。うまそーな鍋じゃのー」
という声と同時に爆発が起こった。
ちゅどーん!

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