時は夢のように・・・。「第6話〜心と心は・・・。」 (Page 4)
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  ラムにも沙織ちゃんとのやりとりを説明したんだけど、ちゃんと説明になってるか分からない始末だ。
 唯には、好きな人がいたのだ。
 片思いだとしても、唯が勇気を出して告白していれば、うまくいかないわけない。相手に決まった彼女がいれば別だろうけど。
ラム「唯、かわいそうだっちゃ・・。」
あたる「・・・うん・・。」
 なんでか、俺はすっかり落ち込んでしまった。
 だけど・・・・とにかくなにかするんだ。俺は馬鹿だから、いくら考えたところでネガティブになっちゃうだけだ。
 着替える間も惜しんで、街に飛び出した。もちろんラムも一緒だ。
 唯はこの街が好きだと言っていた。お気に入りのスポットを片っ端に当たるのだ。
 まず最初は、友引公園。
 唯が家に来たばかりの時は、ここには満開の桜が咲きそろっていた。
 「夜桜ってのもなかなかオツなもんじゃござんせんか。」って言って、唯を連れ出して桜を見たっけ。今では柔らかな若葉がぎっしりと
生い茂っている。
 公園の奥のイチョウ並木も、緑の葉に覆われている。そこにあるベンチに座って本を読むのも、結構好きっぽいからと思って行ってみた
けど、そこに唯はいない。
 遊歩道を行くと、友引町を見渡せるくらい景色のいい場所がある。そこは階段になってて、たまに学校帰りに三人で待ち合わせに使う所
だ。唯が指定してくるほどの場所だから、きっとそこだろうと思って期待するけど、やっぱり唯はいなかった。
 駅に向かう商店街を歩いてみる。
 いつも三人で軽く腹ごしらえするお好み焼き屋、なかなかお洒落な喫茶店。このあたりでぶらついて時間を潰すなら苦労はしないだろう
けど・・・。それとも、新宿とか渋谷に出たとか?
 可愛い娘は街にいっぱいいるだろうけど、唯なら目立つ。必ず、スカウトとかヤクザか変な輩のヤツに目ぇつけられる。唯はしっかりし
てそうだけど、ヘンなトコでうぶだったりするから、マジでやばいかも。
 こいつは危険だ!
 俺たちは家に取って返した。
 繁華街だとすると、あてもないのにむやみに出かけても、どうしようもない。
 どこにいるのか分かれば、すぐに飛んでいくのに。
 こんな事考えたくないけど、もし何かあったら、電話がかかってくるかもしれない・・・・俺たちはずっと電話の側から離れなかった。
 仕事にも行かないで、唯が時間を潰しに立ち寄りそうな場所なんて、見当もつかない。
 じりじりする時間が流れていく。
 俺とラムは無言のまま、電話とにらめっこしていた。そして、しびれをきらしていた時だ。
 ジリリリリリン・・・。
 電話が鳴った。あわてて、俺は受話器を取った。
 隣にいるラムが、すがる様な目で俺に目配せする。ホントに唯のことが心配みたいだ。
 ごくっと唾を飲んで、
あたる「はいっ、諸星です! もしもし・・・?」
 ・・・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・・。
あたる「・・・もしもし? あのぉ・・。」
 ハッ・・ハッ・・ハァ・・・。
 荒い息づかいだけが聞こえる。
 これってさー、もしかして・・・変態電話?
 唯だと思ってあわてて電話とったのにっ! ムカついて電話を叩き切ってやろうとしたとき、誰かが電話に出た。
「あっ、もしもし、すんません! うちの犬が電話機のオンフックのボタン押しちゃって! なんかこいつ遊んでたら、お宅につながっちゃ
ったみたいなんス。」
 受話器から、すっごく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
あたる「パーマじゃないか! さっきのは、おまえんちの犬か?」
パーマ「あらっ、なぁんだあたるか。そうか、うちのタロウ、おまえんちの電話登録しておいた短縮ボタン押したんだなぁ。たまには、
    そんなコトもあるって。悪かったな! じゃなっ。」
 勝手に言い立てて、パーマは電話を切った。
 なんでパーマなんだよ・・・しかも犬って・・。
 おれはがっくりした。
 じりじりして、もうじっとしてられなくなって、立ち上がって電話の前をウロウロする。同じところを数回往復して、また座る。
 イライラがつのって、我慢が限界に近づいたときだ。
母「あんたたち、夕飯できたわよ。お父さん残業で遅くなるみたいだから、先に食べちゃいなさい。」
 もう、夕飯の時間になっちまったじゃないか・・。
 茶の間に行こうとしたけど、ラムのすごく心配してる表情を見たら・・、やっぱり夕飯どころじゃないよなぁ。
あたる「いや、もう少しだけ、唯ちゃんを待ってみるよ。」
母「あ、そう・・。じゃあ、母さん、先に食べちゃうわよ。唯ちゃん、今日は遅いわねぇ・・。」
 そう言うと、母さんは茶の間に行ってしまった。
ラム「唯のバカ・・。いったい何時だと思ってるっちゃ・・。」
 実際はそれほど夜遅いってわけでもなかった。いつも唯が早いから、余計に待ってる時間が長く感じてしまうんだろう。
 いつまでたっても電話はなさそうだから、俺たちは茶の間に移動した。ふと時計に目をやると10時をまわったところ。

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