友引町を奪還せよ-act6- (Page 2)
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あたるは見届けるまもなく振り返り、瞬時に発砲した。空気の塊は教頭の机に命中し、変形させた。
「さすが諸星あたる、戦い慣れはしているようだな」
二人の男が教頭の机に上に降りてきた。二人とも若く、一人は目つきが悪く、もう一人は細い目をしていた。目つきの悪い方はセイ、細目の方はファマと名乗った。
「だが我々の敵ではない!」
そう言うとセイはジャンプして、警棒のようなものを取り出した。シャキンと音がした。
「やかましい!」
あたるは銃を構え、二、三発ほど撃ったが、セイは空中で紙一重でかわした。
「無駄だ!」
かわされた空気の塊は、窓ガラスを割り虚空の彼方に消えた。地面に落ちたガラスの破片は聞こえなかった。聞く暇など無いからである。
「このやろ!」
あたるは木槌を取り出し、つっこんだ。セイの警棒と木槌は激しくぶつかり合った。
「貴様、その木槌どこから出した!?」
最初は誰でも思う質問である。二人の武器はかたかたと震える音がした。
「あたる!」
コースケは加勢に走ったが、
「私を忘れては困る!」
とファマが飛んできた。手には金槌が握られていて、黒くくすんだ光を出していた。
体はほっそりとしていて、それほど腕力があるようには見えないが、振り下ろされた金槌は予想以上の破壊力を見せた。飛んできた木の破片がコースケの
頬に傷を付けた。
「わわわ・・・。」
何とか避けたもののバランスを崩した。負けじとバランスを崩しながらも銃を撃ったが、ねらいの定まらない弾は避ける必要もなくどこかに飛んでいった。電灯や机に命中し
電灯は光を失いながら、ガラスをパラパラと落とし、机は書類らしき紙やらが舞い散った。
「何処を狙っている?」
ファマはもう一度金槌を持ち直し、飛ぼうとした、その瞬間、
「うわー!」
セイの叫び声だった。コースケの放った弾が偶然にもセイに命中したのだ。がたたと床に倒れ込んだ。床でもがきながら、椅子を蹴り飛ばしていった。
「セイ!!」
ファマの叫びからは悲痛が感じられた。
「とどめだ!」
あたるはこれを逃す必要はないと一気に何発も、何十発も撃った。銃声が絶え間なく校舎内に鳴り響いた。
床にはあたるの発砲によって出来た穴が点々と開いていた。その穴からは煙も出ている。
「やったか?」
煙が晴れるとそこにはセイの姿はなかった。いつの間にかファマも消えている。
「逃げられたか・・・」
あたるは銃を腰に引っかけると
「で、温泉マーク、何でお前が此処にいるんだ?」
「ん〜、ん〜」
だから温泉マークにはどうしようもない。コースケは温泉マークの口に貼り付けてあるガムテープをびりびりと取った。
「もう少し優しく取れんのか?ったく」
温泉マークのしなびた口元にはガムテープの後がくっきりと残っていた。あたるは木槌を振り上げ、
「なんだその態度は?それが助けて貰った人への言葉か?」
「すまん、すまん!ありがとう!本当にありがとう!」
誠意がこもっていないのは明らかだった。だがこれ以上時間を無駄には出来ない二人は、話を進めた。
「貴様は確か人質にはされてなかったはずだが・・・」
「この状況を見てわからんのか!明らかに人質だ!」
「うそをいうな!ニュースには『温泉マーク』の名前はなかったぞ!」
「馬鹿者!ワシの本名は温泉マークではない!ワシの本名は・・・」
温泉マークが本名を名乗る前にあたるは殴り捨てた。温泉マークの本名は結局卒業しても闇の中である。
「とにかく、温泉マークを外の三人に預けよう。追うのはその後だ」

友引高校二階
終太郎、メガネは理科室の前を通りかかった。メガネの持っている懐中電灯の光は進んでも何も代わり映えのない廊下を照らしていた。
「面堂、銃声が聞こえたが、あたる達はもう敵と遭遇したようだな」
「ああ、我々もそろそろ遭遇かもしれんな。気を抜くな」
「言われんでもわかっとる」
終太郎はどんな気配も逃さぬほど神経をとがらせていたが、有ることがふと頭をよぎった。
「奴らは、我々が勝ったとして、本当に彼らはこの友引町を放棄するのだろうか?」
「どういう事だ?」
メガネは前を向いたまま聞いた。
「わざわざこのように莫大なエネルギーを使ってまで占拠した友引町をたやすく手放すのもどうかと思ってな。この巨大な友引町をそれも長時間
浮かせるほどのエネルギーなどそう簡単に手に入れられるものじゃない。この作戦のために莫大な費用や時間、もしかしたら犠牲が出てもおかしくないはずだ。
それに奴らは鬼星では泣く子も黙るほど有名な犯罪組織だ。宇宙中に張り巡らされた検問を通り向けるのも何かと面倒な事であろう。
そんな苦労を無駄にさせないためにも、奴らはこの作戦を成功させなければならないはずだ。それをこんなまねまでさせて・・・。
いくら戦いのプロでも万が一という事も考えないはずはない。何か意味があるはずだ。なにか・・・」
「もしくは、この事件の首謀者が冷酷極まりないと言うことも考えられんか。ただの娯楽のためにこの事件を起こしたとすれば・・・。

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