友引町を奪還せよ-act6- (Page 5)
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「なにをいっとる、四人対一人ではお前に勝ち目は無かろうに・・・」
あたるはスピーカーめがけて喋った。するとその返事をするかのように続けた。
「ちなみに私は四人相手でも負ける気はない。いくら高校のとき、乱闘騒ぎを繰り返していたと言っても専門的な技術はない。
長年軍で戦闘訓練をしてきた私の相手じゃないよ。来ればその実力が解るはずだ。では時計塔で・・・」
放送が終わって即、ぷっつん!と言う音がした。その音の主はメガネであった。
「ぬわんだと〜!!我々が負けるだ〜!?」
三人の頭に血が上る前にメガネは教室を出ていった。三人は怒るに怒れず、一応メガネの後を追った。
「ぬわ〜にが戦いのプロだ!こっちは高校三年間絶えず戦ってきたんだ!!型どおりにはまった戦いなど男の汗と涙に水を差す様なものだ!
男の戦いとは本能と己が鍛え上げた勘で戦ってこそ本物といえるのだ!それがなんだ!?専門の技術だと!?その様なもの己の才能を縮め、
さらに個性のない戦いになるではないか!!!専門技術など人間の力を信用しない奴のすることだ!!だいたい・・・(以下省略)」
さんざん言い終わった後、ちょうど時計塔にたどり着いた。しかし気がついてみるとあたる達の姿はなかった。
(また次元をいじられたか・・・)

「ったく、あの馬鹿が!何も考えずに急いでどうする?」
あたる達は少しがに股の状態でメガネの愚かさを口々に言った。三人とも歩調を同じくして綺麗な三角形を作っていた。
「うぎゃああああ!!」
三人の歩きは止まった。この声は間違いなくメガネのものだったからである。
「メガネ!!」
あたるは思わず走り出した。しかし終太郎はあたるの眼前に飛び出し、両手を広げ走り去るのをくい止めた。
「どけ!面堂!」
手を終太郎の肩を掴み、どけようとした。終太郎はその手を振り払い、
「諸星!メガネの事は解るが、お前まで倒れてどうする!」
「メガネをほっとけるか!」
そう言って今度は体当たりを食らわせて、強引に進もうとした。それでも終太郎は苦しそうな顔をしながらもそれを阻止した。
「大丈夫だ!あいつもそう簡単には死なない!」
声には息苦しさが感じられた。それを見たあたるはカッとなった頭を落ち着け、その場の勢いを止めた。
「だが・・・」
「ラムさんとの約束はどうした!?生きて帰るんじゃなかったのか!?」
「・・・」
「いいか、諸星。お前は我々がどんな目にあっても生き残れ。目の前で危険な目に遭っていても見捨てろ!いいな!?」
痛みが少し和らいだのか、いつものはつらつとした言い方に戻っていた。
面堂財閥の次期頭首であることを忘れ、ただラムのために、悲しませないために言った。しかしその言葉を聞いたあたるは低い声で終太郎に言った。
「馬鹿か?自分が今置かれている状況を解ってるのか。貴様も面堂家の次期頭首として生き残る義務がある。ラムばっかりの為に
命を捨てるだと?うぬぼれるのもいい加減にしろ。あの三人がどんな気持ちで貴様を見送ったか解ってるのか」
終太郎はここでやっと自分が面堂財閥の次期頭首と言うことを思い出した。特に出撃時のガードマン二人と奥平の事がさらに強く思い出された。
「いいか、お前が死のうと勝手だが、周りのことも考えて行動しろ。それができんようでは頭首として失格だ」
終太郎が説得するはずだったが、いつの間にかあたるが説得する側に回っていた。
「良いだろう。だがお前も・・・、解っているな?」
「当たり前だ。行くぞコースケ」
しかしあたるが向いた方向には倒れた人影がぽつんと存在しただけであった。
「コースケ!!」
あたるはかけより様に倒れているコースケの両肩に手を掴み、揺すぶった。息はしていたが、苦しそうな顔をしながら目を閉じたままだ。
「あたる・・・」
コースケのわずかな声があたるの耳に聞こえた。
「すまねえがお前ら二人だけで言ってきてくれ。俺はもう戦える状態じゃない。自力で脱出するから」
そう言って傷ついた体を足で支えながら、きわめてゆっくりとしたスピードで歩き始めた。
「コースケ・・・」
二人が見送る中コースケは廊下の闇の中に消えていった。あたるの拳は強く握られていた。

時計塔
「何処だ!?出てこい!!正々堂々と戦おうとかいっときながら二人を不意打ちしやがって!!」
時計塔の小さな窓からわずかな光が漏れていた。夜が明けて日差しが中に入ってきたのである。しかしそんなことも忘れ、
抑えきれない怒りを声に変えてあらゆる方向に飛ばした。それでも怒りは収まろうはずもない。
「そう慌てなくても出てきますよ・・・」
どこから出てきたのか、あたる達の後ろに立っていた。そいつを見た終太郎はショックを受けた。
「お、奥平!?」
その男は奥平だった。しかしいつものきまじめな顔は変わらない。
「な、なぜ・・・、お前がここに・・・」
「解りませんか、若。私がこの事件の首謀者なんですよ。私は元々鬼星の人間だったんです。この事件のために面堂邸に入り込み、

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