友引町を奪還せよ-act6- (Page 3)
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そうだとすれば、部下の苦労をどぶに捨てるような行為をとってもおかしくはない」
「いや、この友引町に張り巡らされた警備隊は何の迷いもなく戦っていた。司令官の無茶苦茶な命令の動揺を無理に隠そうとしても
何らかの迷いや不安が微妙に見えてくる。それがないと言うことはぼくたちが此処で戦うことを、敵は皆知っていることになる。
言い換えれば友引高校での戦闘はあらかじめ仕組まれていたと言うことだ」
「だが、我々をここで戦わせたところで奴らに何の利益がある?」
メガネのレンズに終太郎の顔が写った。
「それはわからん。問題は我々が勝った方が彼らに都合がいいのか、それとも負けた方が都合がいいのか・・・。
これがわからん事には我々も勝つべきか負けるべきか選択できない」
「なるほど・・・」
メガネはおよそ考えもつかない終太郎の意見に考え込んだ。メガネ達は首謀者と名乗る男のしゃべり方から嘘を付いているような感じはしなかった。
つまり本当に正々堂々と戦おうとする意志が伺えたのである。
たたたたた・・・。
階段を駆け足で上る音と廊下を走る音がした。長年通っていた友引高校内での足音が何処のものか識別できるようになっていた。
「この足音は・・・あたる達か?敵にでも追われているのか?」
そう言って懐中電灯を切り、床においた。
「敵かもしれん。油断するな」
終太郎の手には例の愛刀が握られていた。意識しないと自然と刀を取ってしまうようである。
「でや〜!」
敵の姿を確認するまでもなく、終太郎は抜刀し、シャキンと振り切った。無駄のない音が校舎に響き渡った。
「避けられたか・・・。メガネ!後ろ気を付けろ!」
「まだ敵味方わからん状況でむやみに攻撃を加えるな!」
メガネは終太郎の愚かさをついた。さっきは予想もしないことをそれらしく喋った終太郎を少し感心していた事を恥じた。
「敵だ!諸星なら、これくらい、真剣白刃取りで防いでしまう男だ!」
「コースケだったらどうするつもりだ、大馬鹿者!」
「そんなことより気を付けろ!気配が消えた!」
何かをごまかすように言った。しかし確かに気配が消えていた。このことで敵だと言うことが解った。
(さすが、戦いのプロだ。全く気配がない!)
メガネの額や頬にはわずかながら汗が出ていた。二人はせわしなく辺りを見渡した。
「無駄だ・・・。我々から気配を読みとることなど不可能だ!」
声はどことなく老けているように感じられた。
(この声はかなり老けているな・・・。四十代後半から五十代前半と言ったところか・・・)
格闘のプロで老人と言えば、常に自分から攻撃は仕掛けず、相手の攻撃を無駄のない動きでをうち負かすと相場は決まっていた。
「この老いぼれがー!!」
メガネは早速乱発した。四方八方へ空気の塊が飛んでいく。
「ば、馬鹿!味方のことも考えろ!!」
終太郎は頭の上に手を乗せて、床に伏せた。乱発によって砕けた天井や窓ガラスの破片が絶え間なく割れていった。その破片が終太郎を襲った。
「ええい、やめんか!!」
と終太郎はメガネに対して刀を振り下ろした。
メガネはさっとかわした。避けても引き金は話さず、上を向いている銃は天井の同じ場所に集中していた。そのうち天井を貫いて、二階の天井を砕き始めた。
「危ないではないか!」
メガネは開き直ったかのように罵声を飛ばした。
「こっちの台詞だ!!」
今だ発射し続けるメガネの腕を抑えると返した。
「常に刀を持っている貴様ほどではないわ〜!!」
「なんだと、ぐたぐたと何でもかんでも力説する貴様程ではない!!」
「#&%$+*?’&!!」
「・・・・・・・・・!!」
そのうち口げんかの速度は速さを増し、周りはおろか、自分たちでさえ何を言っているのかも解らない状況だった。ただこういう事を言っているつもりだと言う程度である。
しびれを切らした例の老いぼれはすたっと嵐の横に降り立った。
「君たち、私のことを忘れてはいないかね?」
「#$%&*+%#!=!!」
罵声の嵐に他人の声など聞こえるはずはない。老いぼれの頭に血管が見え始めた。
「貴様達の負けと言うことで良いな。後はあの二人を片付ければラム様は我々のものだ」
怒りを無理矢理押し殺して余裕を見せようとする声である。その言葉を口にした瞬間、罵声の嵐は台風の目にでも入ったかのようにぴたりとやんだ。
「な、何ですと〜!?貴様らごときにラムさんを〜!?」
メガネは息切れしたかのような声を出し、ゆっくりと手を腰に回した。
その手を見た老いぼれはやっと構えてもらえる子どものようなうれしさに満ちあふれた。
とたん、メガネは何の躊躇もなく老いぼれの腹に連続発射した。一瞬の出来事であった。その場に倒れ込んだ老いぼれの腹から煙が出ていた。
肋骨は全部折れていて当然の状態である。
「いくぞ、面堂・・・」
先ほどの嵐が嘘のような仲直り様だった。ふと有ることにメガネは気付いた。歩きを止め、再び銃を手に取った。
「どうした、メガネ?」
振り向き様にメガネに訪ねた。

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