オリジナル小説短編版 (Page 3)
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二人が動こうとするはずもなかった。しかしあたるはふと頭にあることがうかんだ。途端に、あたるは木槌を後ろへ放り投げ、面堂の刀も木槌に食い込んだまま
飛んでいこうとしたが、面堂は思いっきり引っ張り、木槌から刀ははずれた。
「丸腰でどう戦うつもりだ?」
木槌はあたるの後ろ三メートルばかり先にある。下手にとりに言って背を向けたら、終わりだ。しかしあたるは余裕の笑みを浮かべ、
再び背中から木槌を取り出した。
「何!?」
「そうか!あたるの木槌出しはいつでも何処でも何個でも出せる!一つにこだわる必要などない!!」
メガネは観客席でまるで全員に説明するかのように大声で言った。
「ちっ、こしゃくな!」
面堂は攻撃を再開した。しかし精神的にあたるは有利の立場にある。決して身体的ハンデは両者ついていない。それでもあたるは何処なく自信があった。
「面堂!もはや貴様に勝機はない!降参しろ!」
「ほざけ!こちらにも案はある!」
そう言うと面堂もまた新しい刀を取り出した。つまり二刀流である。これで身体的にあたるは不利になった。
「くそ〜・・・」
こちらも二刀流なりなんなりするべきだが、重い木槌を片手で持つには無理がある。形勢逆転である。
「ちょこざいな!」
「覚悟しろ!諸星!!」
面堂は早速攻撃に転じた。少しずつスピードをあげ、最高速度になった時点で第一刀を振り下ろした。
「うわっ!」
あたるはかろうじて避けたが、後ろにこけた。ここぞとばかりに面堂はそこにもう一本の刀を突き刺した。それでもあたるは転がって
かわした。
「往生しろ!!」
「誰がするか!!」
面堂は休み無く刀を振り下ろし続け、あたるも複雑に転がってそれを避け続ける。それを続けるウチにだんだん息も上がりはじめ、
攻撃の手も避ける手も遅くなった。はぁはぁ息が上がり、攻防戦も終わりを告げた。あたるはゆっくりを立ち上がり、面堂の二メートル正面に立った。
「次の一撃で決まるな・・・」
メガネは眼鏡を光らせながらいった。誰から見ても二人はもう限界だという事は明らかだった。
「そうだな・・・」
パーマの頬から汗が垂れ落ちた。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
二人の武器がブゥンと音を立て、拮抗した。ズゴォォォンと爆発が起きた。
「二人の気合いが爆発を起こしたのか!!?」
メガネは勝手な想像で勝手な解釈をした。武器と武器の拮抗による爆発など、どこぞの戦闘漫画のすることである。従って・・・
「煙が晴れるぞ!」
「どっちだ!?どっちがかったんだ!?」
煙は次第に薄れ、リング内の破壊された部分がはっきりと解ってきた。人影も三人分見える。
「さ、三人!?」
煙が完全に晴れるとそこには人生の絞りかす、破戒坊主、災厄の妖怪、錯乱坊ことチェリーである。
「さっきの爆発は奴のせいか・・・」
メガネは盛り上がった気持ちが急降下していくのが解った。皆も気分を悪くし、退場するものまで出た。リングではあたると面堂が目をくるくる回している。
「両者ダウン!よって両者決勝戦進出の権利を破棄します」
校長は本部テントでマイクを手に持ちながら判決を下した。しかし決勝戦を楽しみにしていた観客も居たようでブーイングが上がった。
「おい!延長戦はないのかよ!?」
「ありません」
「じゃあ決勝戦はどうすんだよ!?」
「ありません、これにて生徒会長争奪戦を終了します。優勝者!○×!!」
あたるはなんとか意識を取り戻したが、体が動かず愚痴をこぼした。
「クーデターおこしちゃる!!」
〜完〜




part2[光の先に・・・]

あたるの葬儀を終え、地球に帰還して丸一年・・・。悲しみというのはそのうち無くなるものだが、忘れることは出来ない。
あの二人のことを思い出すだけでどこか、寂しくなる。この面堂終太郎(21)もまたそんな日々
を過ごしていた。あれから三年、あたるが旅に出ている間、
物足りない卒業式をすませ、水之小路飛鳥と結婚、面堂家私設軍隊司令官に任命などなど・・・。これから二年後に起こる「友引町浮遊占拠事件」までつまらない日々を過ごしていた。
面堂が居るのは寝室。司令官とはいえ、たまの休暇も必要である。今日は数少ない休暇のある一日であった。
(さて、屋敷の中にいてもつまらんしな・・・。あそこにでも・・・いくか)
そう言って早速身支度を始めた。外ではスズメが二、三匹ちゅんちゅん鳴いている。面堂は私服に着替えると窓を開けた。
朝の日差しは昼の日差しと違って気持ちいいものだ。面堂はう〜と背伸びをすると部屋を退室した。
「若、どちらへ?」
正門で警備をしていた一人のサングラスが面堂の姿に気付いた。
「いや、ちょっと行くところがある」
「一人では危険です。護衛の者を付けるか、何か乗り物でお行きに為されませ!」
サングラスは少し焦ったような声だ。当たり前である。面堂は常にボディーガードが付いている。付いていないのは、寝るときが学校の時ぐらいである。それでも学校は

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