オリジナル小説短編版 (Page 4)
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卒業し、ほぼ二十四時間ボディーガードが付いている生活を送っていたのだ。ストレスがたまらないはずがない。
「いや、一人で考え事をしたいし、長いこと考えることになるのでな。行かせてくれ」
「しかし・・・」
それでも反論しようとするサングラスに面堂はにらみつけた。こうなるとサングラスは命の危険を感じられ、反論できなくなる。刀を振り回し、釣鐘を割る怪力の持ち主など
相手にしていたら命がいくつあっても足りたモンじゃない。
唯一対抗できるのは脅威の生命力を持ち、いざというときにもの凄いパワーとスピードを生み出す、今は亡き諸星あたるだ。しかしもうこの世にはいない。あの世で
ラムと幸せに暮らしていることだろう。
「解りました」
サングラスは渋々門を開けた。ぎぎぎ・・・と大きな音を立て、正門は開いた。その目前にはいつもの友引町が見える。ただ、姿形は変わらずとも、中身は180度変わっていた。
平和すぎる友引町・・・。日本で一番戦時状態に近い町が、今やどこにでもある普通の町である。
面堂は正門を出ると迷わずまっすぐ歩き始めた。
(今日はあそこに行く前にいろいろと回ってみるか・・・)
司令官に任命されて早二年。忙しい毎日を過ごし、町に出るのは一年ぶりである。ふと、友引町を歩き回ってみたいと思った。
まず向かったのは母校・友引高校。在学中は腐りきった学校だと思っていたが、卒業してみると人生で一番楽しかった。
門に立つと校内から騒ぎ声が聞こえる。窓ガラスも割れ、壁もぼろぼろだ。
「こらぁぁぁ!!だまらんかぁぁぁぁ!!」
熱血教師・温泉マークの叫び声が聞こえた。これもまた懐かしい。噂によるとどうも教頭に昇格したとか・・・。
どうやら校内を回っていたところであの騒ぎが聞こえたのであろう。
そこでいつものあれである。全てが懐かしい。まずは昇降口からはいると靴を脱ぎ、上履きを持ってきていないので靴下のままで校舎に入った。
とんとん。まずノックしたのは校長室である。許可を貰うついでに校長に会いたかったためだ。
「どうぞ」
中からあの声が聞こえる。
「失礼します」
「あ、面堂君。しばらく」
相も変わらずのほほんとした顔立ちである。たいした変化はないようだ。
「まあ、座りたまえ」
「はい・・・」
コタツに座るとまずお茶を勧められ、どうもと言って一口すすった。
「相変わらず騒がしいですね」
「君たちと同じですよ。我々も苦労はしているが負けてはいない。断固生徒と戦いますよ!」
燃える校長へ変化した。この校長が燃えると本当に炎が見える気がする。現に幻が見えるのだから・・・。
「ところでどうしたんだい?君たちが来るなんて珍しいじゃないか」
「ええ、今日は久しぶりの暇を貰ったので町を歩き回ろうかと・・・。ところで君たちというのは?」
「さっき、三宅君や白井君達も来てたよ。まだ居るんじゃないか?会いに行ってはどうだね?」
「そうですね。そうします。ではここで失礼します」
短い会話は終わった。校長は三年前の四組の中心人物の一人である面堂をみてあたるのことも思い出した。あたるの葬儀の際、関係者は皆、鬼星へ行ったのだ。
あたるの顔はあれ以来見ていない。写真さえも・・・。アルバムを開けようとしたが、見る気がなかった。

「オオ、面堂じゃないか!」
メガネは最初の雄叫びをあげた。現在警視庁交通課のものである。その声に釣られるようにパーマ、カクガリ、チビ、しのぶ、竜之介が顔を面堂の方に写した。
「やあ,しのぶさんに竜之介さん」
「男には返事をせんのか!」
四人そろってつっこみを入れた。しかし後一人足りない。あたるの親友の白井コースケである。面堂は六人を見渡し、コースケがいないのを確かめた。
確か校長の話では白井君と聞こえたはずである。間違いはない。が、コースケの姿はなかった。
「コースケはどこ行った?」
すると皆くらい顔をした。いや、しんみりと言った方が良いのかもしれない。誰一人口を開かなかった。何か有るようである。
「実はコースケは今日リストラされたんだそうだ・・・」
メガネが重たい口を開いた。
「え・・・」
面堂にはこれが精一杯だった。コースケが働いていたのは、面堂家とは関係のない普通の会社だった。不景気の波に押し流され、普通に働いていたのだが、運悪く
リストラの対称に選ばれた。
「それで、何処へ行っても雇ってくれないから今日、田舎の祖母の所へ帰るそうだ。農業を手伝うらしい」
「一応誘ったんだけど、荷物の整理が忙しいって・・・」
今度は続いてパーマ、しのぶと順に重たい口を開いた。しかしまだ言わなければならない重たい言葉があった。六人とも誰かが言うのを待っていた。
「実はこれだけじゃないんだ」
チビが全身全霊の勇気を振り絞って、口を開いた。
「今日集まったのはあたるの命日ってだけじゃなくて、送別会もかねてるんだ・・」
「だれかどこかに行くのか?」

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