オリジナル小説短編版 (Page 5)
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面堂はその重たい空気に少ししか気付いていない。誰が町を出ていくのか、何故出ていくのか。それが面堂の心で何度も繰り返された。
「全員だ・・・」
ここに集まった六人は、全員都合で町を出なくてはならない。メガネは神奈川県警へ転属。パーマは北海道へ単身赴任し、チビとカクガリは九州の大学しか受からなかっため、
九州へ。しのぶは運命製造管理局の存在を知られないため、異次元空間で暮らすことになり、竜之介は浜茶屋組合が沖縄に本部を置き、そこへ行かなければならない。
皆それぞれの事情のため思い出の町をさらねばならない。
「そうか・・・、寂しくなるな・・・」
この後、面堂を含めた七人は居酒屋で宴会を行い、それぞれに別れを告げた。面堂は高貴な生まれのため、居酒屋に行ったことが無く、特に楽しかった。
すっかり夜である。面堂は本来の目的地である在る場所へ向かった。

在る場所とは友引墓地であった。あたるとラムが眠る墓地である。ラムは本来、鬼星に埋められるはずだったが、あたるのそばの方が良いだろうと言う発案があり、
ここに移された。墓石には「諸星家之墓」とある。面堂は花束をおき、線香を供えると、そっと手を合わせた。
「この町に残るのは僕とお前、そしてラムさんだけになってしまったな」
その一言を言うと、何処か胸がスッキリした。何故スッキリしたのかは、解らないが頭に引っかかっていた何かが取れた気がする。面堂は空を見上げた。
夜空に星がちらちらと輝いている。
面堂はその夜空にあたるとラムの顔を映し合わせた。すると次々に高校時代の事を思い出した。ラムがいなくなったと勘違いして落ち込むあたる、
面堂家での鉄橋で砲火を浴びながら走り抜けてくるあたるの姿、鬼ごっこでのラムに言った忘れるもんかの言葉、思い出してみると案外良い奴だった。
いつもはうっとうしく感じていたのが今になって楽しみの源であったと言っても過言ではないだろう。
面堂は墓地を後にしようとした。しかし急に風が吹いた。面堂は顔を手で覆い、風がやむまでその場でこらえた。
落ち葉や枝が面堂の足下を転がり、草木がこする音が鳴っている。その音がやみ、風がやむとそこは全く別の場所にいた。
「ここは・・・」
「よぉ、面堂!」
そこ声の持ち主は紛れもなく、諸星あたるである。
「も、もろ・・・、ぼしぃぃぃ!!」
最初の二文字は驚きと感動の声だったが、最後の二文字は怒りの声である。いつものパターン通り、真剣白刃取りの攻防である。

「で、でもどうしたんだ。お前は確かに死んだはずじゃ・・・」
「まあ、そうなんだが、どうも俺が死ぬのは予定外だったらしい」
「はぁ?」
すると今度はラムである。髪を後ろで束ねて、服もラムの母親が来ていたのと同じものを着ている。あたるの横に正座して続きを話した。
「ホントはウチだけ死ぬ予定だったんだけど、ダーリンまで勝手に死んじゃったから『黄泉の国政府・死者管理局』が困ってるっちゃ」
「何です?その『黄泉の国政府・死者管理局』って・・・」
「死者の魂を天国に行かせるか、地獄に行かせるか決める局だっちゃ。他にも何処にすませるかとか、何年後に転生させるとか・・・」
「それで、その何とかが何で困るんですか?」
「誰がいつ、何処で、どんな風に死ぬかをその局が決めてるんだよ。俺は世界ギネスブックに載るまで長生きする予定だったんだが、百年近く早く死んだから、
コンピューターがぶっ壊れたんだと。それで、あの世に居続けると混乱が治らないから、蘇生させてやるって・・・。ったく、死んだり生き返ったり、どっちかにして欲しいもんだね〜」
あたるの口調は以前と何か雰囲気が違った。これほどの歳月は口調も変えてしまうのかもしれない。容姿も何処か大人っぽい。
「で、でも生き返ったら、みんなにどう説明するんだ!?みんなこんな話を信じるはずがない!」
「ああ、その点に関しては大丈夫だ」
「?」
「時間を元に戻すんだよ。高校時代に・・・。ラムが死んだら俺も、もう一回死んでやるって脅してな・・・」
ラムは少し赤めいた顔をした。恐らく、あたるは黄泉の国政府にこう脅した際、ラムはあたるに感動したことであろう。面堂も無論そんなこと解る年頃だ。
本格的にラムを諦めることを決心し、話を続けた。
「と、言うことは隕石が町に堕ちることも無くなるのか?」
「ま、そういうことだな。お、そろそろ時間が戻り始めるぞ。ここでの会話は俺もお前もラムも忘れる。今なら好き放題言って良いぞ」
あたるは時計を見てにやっと笑った後、面堂を上目使いで見た。
「そうだな、じゃあ・・・」
一言そう言って、面堂は黙り込んだ。決して何を言うか考えているわけではない。言って良いのか迷っているのだ。あたるはきょとんとした顔をした。
「今後一切死ぬな」
「え?」
その言葉と共に三人は光に包まれた。面堂はふっと笑いながら、目を閉じた。
〜完〜




part3[BD2  同盟軍と帝国軍] 


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