オリジナル小説短編版 (Page 7)
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あたるは暗闇の中でメガネの声が響き渡るのを感じた。そして暗闇に光が差し込みはじめ、だんだんとそれは広がっていった。ぱっと目を開けるとそこは冷たい
牢獄のような部屋であった。三百六十度岩の壁で、窓がすこし高いところにある程度だ。ドアもあるが、丈夫な鍵で出来ているらしく、先ほどメガネ達が
体当たりを食らわせたところであった。
「いててて・・・」
あたるは頭をさすりながら、起きあがった。バスの中では誰かに堅いものでも殴られたらしく、たんこぶがあるのがすぐに解った。
「やっと、起きたか。この非常時によくもまぁそんなに眠れるものだ」
「面堂・・・」
「諸星、大変なことになったぞ。ラムとテンがおらん」
今度はサクラだ。腕を組みながら、冷静な言葉遣いであたるに言った。
「なに!?ラムとジャリテンが!?」
汗がすーっと出てきた。あたるは焦点の合わない目を床に向け、黙り込んだ。そんなあたるをサクラは鋭いまたもや冷静な目で見た。
「全員出ろ!」
先ほどのドアが開くとそこにいたのは緑色の兵士の格好をした若い男性が立っていた。あたる達は困ったような顔をして、どうしようもなくその部屋を出ていった。

連れて行かれたのはどうやら軍の最高責任者の部屋のようだ。豪華さはないが、他の部屋より自動ドアが大きく、二つであった。
あたる達を連れてきた若い兵士はドアをノックし、
「失礼します」
と、言ってドアが開いた。中にはいかにも整理整頓が苦手そうな、少し髪がぼさぼさした三十代前半の男がいた。あたる達の姿を見ると、若い兵士に
軽く右手を挙げた。その合図で兵士は部屋を出ていき、室内はその男とあたる達だけになった。
「私の名は、リーヤン・アンツ。同盟軍の元帥でこの要塞の司令長官だ。宜しく」
簡単なあいさつをした。どうやらあたる達は罪人として呼ばれたワケではなさそうだ。
「げ、元帥!?」
メガネが雄叫びをあげた。三十代前半で元帥など若すぎる。どうやら英雄と呼ばれる男であろう。
「君たちが我々の要塞を古めかしいバスで通っていたので、拘束させてもらった。一応身体検査と体内のエックス線検査をして、
君たちが帝国軍の関係者かどうか確かめさせて貰ったが、どうやら私の勘違いだったようだ。すまなかった」
あたる達は何がなんだか解らなかった。同盟軍、帝国軍などと聞いても、今現在そんな名の付く戦争はないはずである。
「あの〜、同盟軍とか帝国軍って何です?何のことだか良く解らないんですが・・・」
珍しく面堂が下手に出た言葉遣いで質問した。
「なに言ってるんだ?もう五十年間もこの戦争が続いてるじゃないか」
「せ、戦争!?」
驚きのあまり一同は開いた口がふさがらなかった。しかも五十年続いている戦争が起きてるなど少なくとも、記憶の上では存在しない。
「もしかしたら、君たちは百年前の者達じゃないか?だとすれば百何年もの昔の観光バスに乗っていたのも説明が付く」
「ということはここは未来?」
やっとしのぶが言葉を口にした。
「いや、違う。ここは異次元の世界だ」
サクラが腕を組んだまま鋭いまなざしであたる達を見た。
「なんでわかるんです?」
「お前達はバスで目覚めたときなぜ友引町だと解った?」
「そりゃあ、友引高校が見えたから・・・」
メガネは途中まで言って口を閉じた。どうやら何かに気付いたようである。
「友引高校は木造のはずだ」
「しかし百年も経てば改造もするでしょう」
面堂が説得するかのように少し焦った口調で横から反論した。
「その可能性もあるが、それにしては町が変わらなすぎる。友引高校だけ変わるのはおかしすぎだ」
「しかし何でコンクリート製の学校を見たときに気付かなかったんだ?」
「う〜ん・・・」
全員腕を組んで首を傾げた。(本作品はアニメ版に沿って作られたものです。漫画版ではコンクリート製ですが、ここでは木造の方にさせて頂いております)
そのときリーヤンの机の上に置いてある電話のようなものが、コールした。リーヤンはスイッチを押すと「どうした?」とその電話のようなものに向かって言った。
「第一艦隊から第十二艦隊の出撃完了しました」
「よし、解った。出撃は明日十四時とする。それまで各員自由行動とし、飲酒も許可する。今回は今までにない大きな会戦になると思われる。各員は
やり残したことを出撃までにすませろ。以上」
スイッチを切るとメガネが再び質問をした。
「あの〜、これから戦闘が始まるんですか?」
「ああ、ここ二、三年大きな戦闘がなかったんだ。敵は物資や動員を蓄えているはずだ。無論我々もだが・・・。そして数日前、敵陣偵察鑑が帝国側の不穏な
動きを発見したのでこちらも準備を進めていたんだ。案の定、敵はこちらに進撃を開始したので、出撃体勢を整えていたって分けさ。じゃあ、君たちは危ないから
この要塞の寝室にでも泊まると良い。客人用だから結構家具も充実しているから、帰るきっかけを見つけるまでゆっくりして行きなさい。もし敵が侵入してきたら、

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