パラレルうる星小説PART1「高校野球編:第2話叶う夢・叶わぬ夢(前)」 (Page 2)
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後ろから竜之介が出てきた。どうやら喧嘩をしてきたらしく、顔中に傷跡と絆創膏が貼ってある。
「また喧嘩か?」(あたる)
「ああ、隣の赤口学園がおれにいちゃモンつけてきやがったから、少しな・・・」
「いちゃもんって?」(ラム)
「俺を男呼ばわり・・・」
あたるはあわてて竜之介の口をふさいだ。

で、再びグラウンド
あたるがユニホームに着替えてベンチに入ってきた。そこで靴のひもを結んだ。
「おいこら、あたる。なにしとったんや?練習はもうはじまっとんのやで!」
親父が羅刹のような形相であたるに言った。
「ニャハハハハ、ちょっと担任に呼び出されちゃって・・・」
「白井もか?」
コースケのにも睨み付ける。
「は、はい・・・」
「まあ、ええか。それよりお前、今年の新入部員でめぼしいやつおるか?」
あたるはランニングしている一年生を見てみた。
「そうですね・・・。真ん中を走ってるやつなんかどうでしょうか?図体もでかいし、スタミナがありそうに見えます。それから・・・、
先頭のやつなんかも足の速そうで、一番バッターに向いていると思います」
「白井は?」
「俺もあたるに同感ですね。ただ、即刻レギュラー入りという分けにもいかんでしょう」
「やっぱりそうか?」
親父はうなずく。
「そうかって・・・」
「ほかのみんなにも聞いたんやが、やっぱり同じ答えやった」
「監督は誰に期待しているんですか?」(あたる)
「ほれ、あいつじゃ。茶髪で気の弱そうなやつじゃ」
あたるもコースケも吃驚した。
「で、でも・・・、ランニング、だいぶ遅れてるじゃないですか!?半周も差があるし、酷く疲れてる顔してるし・・・」
確かにあたるの言うとおり、因幡はランニングの集団から半周も遅れ、酷くきつそうな顔をしている。
「ああ、あいつはもうランニングは終わってんで。暇やからいーよったさかい、二回目のランニングをしとんのじゃ」
あたるとコースケの頭の上に「!」マークが浮かんだ。
「驚いたやろ?まさかあんなひよっこにあんな体力があろうとは・・・」
「でも、素人なんでしょう?体力だけあってもレギュラーは取れませんよ」(あたる)
「なにゆーとんのや?あいつは小学校の時にやっとったで」
「え・・・、だってラムちゃんが素人だって・・・」(コースケ)
「ああ、それは中学校の時には、やっとらへんかったそうや。親の都合でな。じゃが、高校になったら甲子園目指すゆーて
 はりきっとったそうで親を説得して遠く福岡から来たんや」
「福岡?何でわざわざここまで?」
あたるとコースケは準備運動しながら親父に言った。今ちょうど腕の前後ろ回しをしている。
「ああ、あいつの親がわいの幼なじみでな。やるなら友高行けゆーて、送り出してくれたんや。今は遼生活してんねん」
「遼って言ったら、メガネも遼じゃなかったか?」(あたる)
「そう言えば・・・。あいつのことだから、一年に屁理屈を並び立てた説教をやるんじゃねーの?」(コースケ)
「にゃはは・・・。あり得るな」
「ほれ、しゃべっとらんで、はよ練習せんかい」
親父は冗談を言い合う2人に練習を催促した。
今年も友高に有力選手が入ってきた。その名は因幡裕太 十六歳。

PART2「マイバッド」
この日は練習は休みである。親父のたまの気まぐれではあるが、それでも選手、とりわけレギュラーにとって極楽の何ものでもない。
家で寝るも良し、遊びに行くも良し、デートするも良し。野球部は普段できない事を存分に楽しむには絶好の機会だ。
あたるもその一人である。
「おじょーさーん!!・・・と叫びたいのに何故にラムがついてくるのじゃ?」
町を歩くあたるの横をラムもまた平行して歩いていた。
「どうせ浮気する気だっちゃ」
「なーにが浮気じゃ。おれはただバッティングセンターに行くだけだ」
「だったら、ウチがついてきても問題ないっちゃ!」
「お前がいたら気が散るんだよ!」
この言葉にラムは歩くのをやめた。その場でうつむいている。
「どうした、ラム?」
二、三歩先に行ったところであたるは後ろに振り返った。
「ウチがいたら・・・、邪魔・・・」
少し涙声が入っている。これにはあたるもたまらない。
「わっ、わかった。ついてきて良い!良いから泣くな!」
「いいっちゃ?」
ラムは先ほどの涙声とうってかわって、無邪気な声を出した。あたるは負けたと思い、付いてくることを許可した。
(この女、いったいいつの間にこんな技覚えやがった?)
バッティングセンターの帰りにガールハントする予定を変えなければならなくなり、あたるは溜息をついた。

バッティングセンター 受付フロアー
午前中にもかかわらず、金属バットにボールが当たる音が響き渡っている。あたるは受付で何か手続きのようなものをしている。
その手続きを終えたのか、ラムのいるところに戻ってきた。
「なにしてたっちゃ?」
「ああ、ここは千円で一日中使い放題なんだよ。一回ごとに二百円払ってたら、すぐにカラになるからな。

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