パラレルうる星小説PART1「高校野球編:第2話叶う夢・叶わぬ夢(前)」 (Page 4)
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あたるはもう小さくしか答えることが出来なかった。
「す、すいません・・・」
 「すいませんですむことか?」
ルパはしばらく間をおいてから、落ち着いた口調で言った。
「もう良い。お前を見ていると治る腕も治らん。早く出ていけっ」
あたるは胸にズキッと来た。少し目に涙を光らせながら、無言でドアノブに手をかけた。
「おれは黒川さんと話すことがあるからお前達は先に返ってくれ・・・」
コースケが言った。
「失礼しました・・・」
ラムはルパの事を身ながらあたるを気遣った。ラムがドアを閉め、コースケとルパの2人だけになるとルパは外を見た。そしてコースケが口を開いた。
「どうしてあんなこと言ったんです?」
外にはもう蝉の声が聞こえている。もうすぐ夏という雰囲気にはばっちりだった。
「・・・あいつは今まで俺が付いていた。ガキの頃から俺がラムやお前の面倒を見ていたよな?とくにあたるは俺に近づこうとして俺の背中ばかり見ていた
 からな。面倒くさがり屋の性格が仇になっていつもやり遂げることは出来なかったがな・・・。だが、今回は本気で、しかも俺に近い状態まで上り詰め
 てきていたんだ。俺の交通事故がなければ、俺の全てを受け継ぎ、次の試合には俺の代わりをつとめてもいい結果が出せただろう・・・・。それが、手が
 届く寸前で足下から崩れ去っていった・・・。そしてあいつは俺のいない野球部での存在意義を無くし、今でもそう思っているはずだ。だから、俺から
 離れなければならん。俺を嫌わないとあいつはどんどん駄目になる・・・」
「でも、あいつは黒川さんを嫌いにはなれないはずだ。尊敬する人物であり、あいつの心の中ではライバルとも思っていたかもしれない。そう簡単には嫌いに
 なれませんよ。ただ、余計に悲しくなるだけだ」
「そうなればそれだけの男だったって事だ。あいつはいつまでも人の背中をみてちゃいけないタイプなんだ・・・」
ルパは窓下で賢明に涙を耐えているあたるの姿を見た。斜め後ろからラムが気遣っている。

PART4[やる気あんのか?]
またしても球場から歓声が上がった。今日のこの試合での大歓声は三回目だ。一回目は三者凡退しかも全て三球三振し、二回目は友高の相手チームが
犠牲フライで一点というところで竜之介が外野からホームまでをノーバウンドで走者を刺し、三回目はコースケが場外ホームランを放った。
一回戦、二回戦ならここまで歓声は上がらなかっただろう。だが、これは準々決勝のことである。スコアボードには5対1。相手は昨年、準々決勝で
互角の試合をした大垣学院である。
『さあ、大変なことになりました。今年の東東京地区準々決勝、昨年と同じく友高対大垣の組み合わせです!共に昨年に続き、一刻商の対抗馬!
 しかし、スコアボードをご覧下さい!5対1です!昨年はあれほど接戦を演じた両校が今度は友高が四点差でリードです!おっと、七回の裏、
 五番・鬼木を内野ゴロに討ち取りました。長い友高の攻撃はやっと終了します。八回の表、大垣の攻撃は・・・』
マウンドの上にはあたる、キャッチャーはコースケ。この2人はすでに東東京の有名人である。
あたるは帽子を取って汗を拭き、コースケのサインを見た。しかしあたるは驚いた。サインはど真ん中にストレート。しかも相手は四番である。
さらに驚くべき事は、この相手に三球連続、ど真ん中ストレートなのである。
あたるは目でコースケに話しかけた。
(いい加減にしろよ、四球連続でそううまくいくか!いい加減場所変えろ!)
先ほど、三球目ではホームランになりかねない大ファールを打たれたのだ。コースケも返す。
(いいから、投げろ!時間が勿体ない!)
(野球に時間制限なんかあるか!)
あたるはつっこみを入れながら、渋々投球モーションに入った。だが、あたるの予想に反して相手は空振り。どうやらカーブと読んでいたらしい。
味方スタンドから歓声が上がる。
あたるはコースケが投げたボールをわざわざ音を立てて取った。そして
ウゥゥゥゥゥ・・・
『試合終了!友高5対1で準決勝に駒を進めました!』
あたるは相手チームの何人かと握手するとベンチに戻るコースケに歩み寄り、後ろからばしっと頭を殴った。
「何すんだよ?」
「こっちの台詞だボケ!ど真ん中ばっかり投げさせやがって・・・」
「お前のストーレートはどんなもんかなってな」
「二、三球受ければわかるだろうが!」
「お前、今日全力投球したか?」
「えっ・・・」
「えっじゃねえよ。何年お前の球受けてるとおもってんだ?」
あたるは知らんぷりをするかのように目線をそらした。
「なんとも余裕ですな。うらやましい、うらやましい・・・」
しかし今度はあたるはコースケの胸ぐらをつかんだ。そして笑っているような、怒っているような顔で言う。
「お前も、今日何球見逃してんだよ。しかもど真ん中の所も見逃しやがって。やる気あんのか?」
「ええい、やかましい!お互い様だ!」

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