高校野球編:第三話 最初の挑戦・最後の挑戦 (Page 4)
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あたるはコースケと共にトイレに行く。喧嘩しても直ぐに仲直りするのがこの2人の良いところでもある。
しかし、コースケは保健室に行くと行って、途中で別れた。どうやら、腹痛らしい。腹を押さえている。
あたるがトイレにはいると用を済ませ、洗面台に立った。そこで、水を出すとその水をじっと見つめた。その水にラムの笑顔が重なってくる。
一つ溜息をつくと手を洗い、蛇口を締めるとドアを開けた。すると隣の女子便所もドアが開いた。無意識にその女生徒見るとそれはラムだった。
「・・・」
2人とも動けなかった。ただ、じっと黙り込んでいた。
「あ、あの・・・」
沈黙の末、話しかけたのはラムだ。
「な、なんだ?」
「どうして野球部に戻ろうと思ったっちゃ?」
何を聞き出すかと思えば、こんなこととあたるは思った。
「しのぶがな・・・。野球やりたいんだろ?って言ってくれたんだ・・・」
「そう・・・、しのぶが・・・」
ラムは目線を下に向ける。
「じゃあ、あのとき喫茶店でしのぶと話していたのは・・・」
ラムは少し戸惑いながら言葉を口にする。
「みていたのか・・・」
ラムはあたるがしのぶと話しているのを見ていた。
「やっぱり・・・。ウチじゃ無理だったっちゃね・・・」
ラムが静かにいうとあたるはエッと小さく反応した。
「無理ってなにが?」
あたるもラムの雰囲気に合わせて静かに質問した。
「ウチが・・・、ダーリンの心を動かせなかったっちゃ・・・」
あたるは激しい罪悪感を感じた。それと同時に後悔もした。もっと早く、ラムと話すべきだった、野球部をやめるなんて言わなければ良かった。
そう感じていた。
「だから・・・、ウチ・・・」
しかしあたるは罪悪感と後悔の念を感じながらも決して後ろ向きな考えを持っていなかった。
「だったら・・・、礼をしなきゃいかんな・・・」
「・・・」
あたるは黙り込むラムの両肩に手を置いて顔をラム顔の目の前までに持ってきた。さすがにラムもドキッとする。
「な・・・、こんなとこでなにするっちゃ!」
するとあたるはほっぺたをふくらませ、床に笑いこけた。
「ニャハハハハ!お前、今キスすると思ったか!?ニャハハハハ!」
ラムの頭に血管が浮かんだ。そして、がぶりとかみつき、笑いこけたあたるは痛恨の悲鳴を上げた。
「かみつくやつがあるか!」
「弁解の余地無しだっちゃ!」
ラムは立ち上がると羅刹のような顔であたるを見下ろした。そして冷たくその場を離れようとした。
「いつかきっと・・・」
後ろからのあたるの声は真面目そのものだ。ラムのその声に怒りが無くなり、そしてあたるの方へ顔を向けた。あたるは
お尻をぱんぱんとはたいて、背中を見せたまま、ラムに言った。
「いつかきっと?」
ラムはあたるに聞き返したが、あたるはそれ以上続きを言うことはなかった。




PART3「上れぬ階段」
夏から秋へ・・・。ついに夏休みがあけた。そして秋季大会へ友高はその階段を上り始めた。
しかし、その階段も再び上り詰めることはできなかった。
その日は、秋季大会の三回戦。対一刻商戦
いったん学校で練習した後、バスで全員球場へ行く。試合の旅にそう言う手順で試合臨んでいた。
しかし、友引高校が球場に到着することはなかった。
友引町 黒川家 
『今日、友引町三丁目の交差点でバスの横転事故が起きました。バスには友引高校の野球部員が乗っており、
死者は出なかったモノの、全員重軽傷を負い、都内の病院で手当を受けています』
ルパは車いすから立ち上がる勢いで、前に乗り出した。さすがにたてるわけでもなく、少しバランスを崩した。
体勢を立て直すと少し考え込んで、すぐに部屋を出て電話のある廊下に向かった。
「もしもし、友引高校ですか?」
電話の電話を掛けた場所は友引高校職員室だ。電話の向こうからはざわめく声が聞こえる。
誰かが出たのは解ったが、すぐに電話から離れたようで、返事が返ってくることはなかった。
「ええい、くそ!」

松山総合病院
「あたる!」
ドアから入ってきたのは、あたるの母だった。治療を終え、ベッドの上であたるは驚いた。保護者の中で一番乗りだったのが
あたるの母だったからだ。
「か、かあさん?」
しかし、あたるはベッドの上でコースケとトランプをしている真っ最中だった。あたるの母は心配する顔から一変、
鬼へと変わった。
「あんた!交通事故でけがしたから心配して来てやったのに、トランプなんかしてる場合じゃないでしょ!!」
室内に大きな声が響き渡る。室内にはあたるの他、コースケ、メガネ、パーマだ。あたるの母の説教声の犠牲になったのはこの四人だ。
「病院では静かにしてください!!」
人のことが言えない程、大声で看護婦があたるの母に注意した。
「でも試合はどうするの?」(あたるの母)
「負けだよ。こっちから試合放棄ってことで!」
あたるはコースケと共にトランプの続きを始めた。
「負けって・・・。あんた悔しいとかそういう感情無いのッ!?」

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