時は夢のように・・・。「第二話」 (Page 2)
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ラム「マジな顔してても、本音の方が口に出てるっちゃよ。」
あたる「あが・・・。」
 うっかり(?)本音を口に出してしまった・・・。
テン「ラムちゃんの前でそんなこと言うなんて・・、絶対アホや・・。」
 パタパタと宙を泳いで洗面所から出て行くテン。戸を閉める寸前に「ごゆっくり〜。」と言い残し、去っていった。
ラム「うふふふふ・・・。」
あたる「は・・ははははは・・・。」
 残された二人は軽く笑いあった。しかし、あたるの額からは妙な汗が一筋流れ落ちていた。

                           *
台所。
唯「さぁ、出来た。」
 湯気の立つなべから、おたまでほんの少しすくって小皿に注いだ。それをあたるの母に渡し味見をしてもらう。
母「あらっ、美味しいじゃない!」
唯「良かったぁーっ、お味噌汁って、その家によって味が違うから、私の家の味がお口に合うか心配だったんです。」
母「これならすぐにでもお嫁に行けるわ! 私が保証してあげる。」
唯「そ、そんなお嫁だなんて・・。でも、おば様は私なんかより上手で・・・その・・・。」
 真っ赤な顔になってうつむく唯、言葉の最後のほうはゴニョゴニョで聞き取れない。
 その時、どこからともなく、けたたましい音と、猛獣の雄たけびに似た咆哮が聞こえた。
 バババババババババババ・・・!!! どぉわああぁぁーーーーっっ!!!
唯「・・・・・?」
 不思議そうに辺りを見回す唯。
 母は唯の様子を見て、「いつもの事。いつもの事。だから気にしちゃダメよ。」と苦笑するばかりだった。
 間を空けず、のれんの間から父がひょっこり顔を出した。
父「おや、唯さん、手伝ってくれてるのかい。すまないねぇ。」
唯「いえいえ、これくらい手伝わせて下さい!」
 両手を広げて小刻みに振った。
母「さぁ、料理を茶の間に運んでちょうだい。ご飯にしましょ。」

                           *
茶の間。
 あたるとラムは洗顔を終え、茶の間に向かった。
 戸を開けると、ちょうど唯がテーブルに料理を並べているところだった。俺を見て、ちょこんと頭を下げる。心なしか、少し態度がぎこ
ちない。
唯「あ、あら? あたるさん、どうかなさったんですか?」
 俺を見た唯が驚いた声をあげた。それもそうだろう、俺はこんがりといい感じに焼きあがっているのだから。なんでかというと・・、言
わなくても分かんだろが! とりあえずその場は笑ってごまかしてみた。
テン「朝っぱらから、よぉやるわ!」
 テンが横から口をはさんできやがった。
あたる「なーんだジャリテン、いたのか・・。」
テン「いちゃ悪いんかぁ?」
あたる「べっつにぃ〜〜。」
 なんともない会話のやりとりだが、あたるはフライパンを持ち、テンは口からちょろちょろ火をちらつかせ、完全に臨戦体勢だ。しか
し、せっかく気持ちのいい朝だし、唯が料理を作ってくれてるし、ぶち壊すのは忍びない。そこで、
あたる「今日のところは・・。」
テン「やめといてやるわい・・。」
 双方武器を退いた。腕組みして「ふんっ」ってな具合にそっぽを向く。
 ふと気がつけば、唯が料理を並べ終えていた。
唯「簡単なお食事作ってみたんですけど、どうかな・・。お口に合うかしら?」
 テーブルの上には、ホカホカのご飯と目玉焼き、御新香、サラダ、みそ汁が並んでいた。
あたる「へぇーーっ! これ唯ちゃんが作ってくれたの?」
ラム「おいしそぉーだっちゃ〜!」
 見事な出来栄えに、二人は目を丸くした。
唯「作ったって言っても、おば様と二人で作ったから・・・。」
 唯は少々テレ気味に首を竦めた。
 目玉焼きは半熟よりちょっと固めで、隣にはタコの形をしたウインナーが三個ちんざしている。みそ汁はちょっと濃い目だ。
 味の方も申し分なさそうだが、それ以上に、慣れない他人の家に来て、すぐに朝ご飯を作ってくれた唯の気持ちが、すごく嬉しい。
唯「わたし、お料理はちょっと自信あるんです。特にサラダのドレッシングにはうるさいんだから。それとビーフシチューでしょ、カレ
  ーはちゃんとルーから作るし・・。」
ラム「へーっ、すごいっちゃ!」
 目をキラキラさせて話を聞くラム。
母「ホントよ、その若さでここまで出来るとは、ただ者じゃないわね。流石のわたしも、手際の良さにあっけにとられちゃったわ。」
 台所の後かたづけを終えた母さんが茶の間にやってきた。
 しかし、母さんにここまで言わせるとは・・、唯はかなりのテクニックの持ち主らしい。
母「さぁ、みんなそろったわね。食べましょうか!」
あたる「えっ? 父さんは?」
母「そこに居るじゃない。」
 周囲を見渡すと、父さんが居た。いつもの不動のかまえで新聞を読んでいる。
父「・・・ずーーーっとここに居たんですけど・・。」

                           *
 「いただきまーす!」
 腹が減っていたせいもあって、勢いよくご飯をかきこんだ。

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